第29話 鷹
金田一
「はい、お次は誰かな?」
司会
「鷹ですね、あれ?鷹さんはたしか先程鵜さんの応援に来てましたね。どうやら一緒に帰らなかったようですね。それでは鷹さんどうぞ」
鷹
「先程はありがとうございます。鵜さんも喜んで帰りましたよ」
司会
「それはよかったですね。そう言われるとこの委員会をやる甲斐があるというものです」
鷹
「本当は私も鵜さんと一緒に帰りたかったのですが、金田一先生の見事な『大岡裁き』を見て長年思っていたことを急に提訴したい気持ちに駆られた次第です。今回は私自身のことですがよろしくお願いします」
司会
「わかりました。しかし鷹さん、鷹の登場することわざは『トンビが鷹を産む』や『脳ある鷹は爪を隠す』など全てリスペクトされたものばかりですが何が御不満なんですか?」
鷹
「ああ、やはり『一富士、二鷹、三茄子』です」
司会
「一般には『お正月に見る夢の中でこの3つをセットで見たら縁起が良い』とされている例えですね」
鷹
「はいその通りです」
司会
「でも鷹さんはこの中で2番目に入っていますよね。ちゃんとリスペクトされてるような気がするんですがご不満ですか?」
鷹
「はい、人間界の縁起物として使われていること自体は全然ありがたいし、誇りでもあります」
司会
「じゃあいいじゃないですか。何がご不満なのか提訴内容をはっきりおっしゃってください」
鷹
「1番最初に富士山が来てるのはよくわかります。何より日本を象徴する美しい霊山ですからね。その周りを優雅に舞う我々鷹もわかります。富士山と鷹は絵になりますからね。問題は3番目なんです」
司会
「3番目と言うと茄子ですか?」
鷹
「はい、なんでいきなりしょぼい茄子が縁起物の3番目に入ってくるのかが理解に苦しみますしセットにされて正直ガックり来ます」
司会
「はあ・・・言われてみればそうですよね」
鷹
「2番目の私でさえ不満があるのだから、もし富士山に口があるのであればここに来て私以上に不満を言うと思いますよ」
司会
「なんかイメージとしては、メジャーリーグの有名選手2人の横に少年野球の選手が1人いるような感じですものね」
鷹
「でしょう?司会さんもそう思うでしょう?そもそも人間たちの中でこの夢を器用にワンセットで見れる人っていますか?」
司会
「いや、多分いないと思います。私なんかも正月には寝る前に富士山に鷹さんが舞ってる風景を頑張ってイメージをしますが、最後の茄子がやはりどうも・・・」
鷹
「でしょう?無理がありますよね。これって相当難しいと思うんです技術的に・・・」
司会
「よくわかりました。では鷹さんの提訴内容はズバリ3番目を変えて欲しいということでよろしいですか?」
鷹
「はい全くその通りです、私の後はもっとおめでたい物にしてください」
司会
「よくわりました、それでは金田一先生よろしくお願いします」
金田一
「鷹さん、やっぱり茄子は嫌ですか?」
鷹
「はい、もう長年嫌で嫌で仕方がなかったんです。そもそもなんで人間は茄子を選んだんですか」
金田一
「まず二つの由来があります。一つ目はゴロ合わせで富士山は「不死」、鷹は「高い」、茄子は「成す」という意味をさします」
司会
「なるほど、言葉として縁起がいいですね。二つ目の由来は何ですか?」
金田一
「二つ目は江戸幕府を開いた徳川家康が好んだ物が富士山と鷹狩り、初物の茄子であったという説です」
鷹
「すると時の権力者が好きなものであれば何でもよかったわけですよね」
金田一
「そうなりますね。江戸っ子は家康を大事に考えたのですね。これが400年続いたわけですね」
鷹
「先生、もうそろそろ変えませんか?」
金田一
「わかりました。時代もちょうど令和になったことだし、是非そうしましょう。それでは明日からは今上天皇のお好きな食べ物に変えます」
司会
「今、ウェブ検索したら陛下は学習院時代はよくお寿司屋さんに行かれたそうです。お好きなネタは中トロ、イカ、穴子と書いてありますね」
金田一
「では決まりましたね。明日からは『一富士、二鷹、三お寿司』でいきましょう。この方が子供たちの夢にも出て来やすいと思います」
司会
「いいですね。私も3つセットで簡単に夢が見れそうな気がしてきました。そう考えると今までの茄子はやはり難易度が高いですね」
鷹
「私も陛下の好きな食べ物と並べられて光栄です。今日は来て良かった、本当にありがとう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます