第21話 蛇

金田一

「さーて、どんどん行きますよ。お次は誰かな?」


司会

「次はヘビですね。ヘビさんのことわざは沢山ありますね。それではどうぞお入りください」


ヘビ

「こんにちは、よろしくお願いします」


司会

「はい、ヘビさん提訴内容を教えてください」


ヘビ

「今日は『蛇の道は蛇』の見直しをよろしくお願いします」


司会

「一般には『悪事のことは悪い人がよく知っている』ということわざですね」


ヘビ

「そうなんですが、やはりこのことわざに我々ヘビイコール悪人というイメージがどうも払拭できません」


司会

「やはり我々にはヘビさんは毒を持っているイコール危険というイメージがあります」


ヘビ

「しかしあんまり知られていないようですが、実際は毒を持っているヘビはわずがの種類なんです」


司会

「そうですね、日本ではハブとマムシだけですね。しかし一方でヘビさんは各地では神様として崇められるということがありますよね」


ヘビ

「はい、ヘビ信仰は日本各地に存在するのは知っています。だからこのことわざで悪人扱いされても正直なところは『相殺』の気持ちなんです」


司会

「ではなぜ今日の提訴に踏み切ったんですか?」


ヘビ

「それなんですが、まずはこれを見てください」


司会

「何ですかこの紙は?」


ヘビ

「昨年の警視庁発表の『青少年犯罪白書』です。特にここの数字です」


司会

「青少年の凶悪犯罪の増加率ですね。酷い数字ですね。捕まっても刑務所にいかないから最近では本当に未成年の凶悪犯罪が増えています」


ヘビ

「それともう一枚見てください。これは暴力団の凶悪犯罪のグラフです」


司会

「あ、金田一先生見てください。こちらのグラフは逆に減っていますよ」


金田一

「本当ですね。たしかに暴対法が、施行されてから暴力団の凶悪犯罪が減っていますね」


ヘビ

「お判りになりましたか?犯罪のプロである暴力団よりも、むしろ素人の犯罪が増えていますね」


司会

「確かに・・・」


ヘビ

「捕まえてみたらパンツを盗撮していたのは教師だったとか、飲酒運転していたのは警察官だったとか。また立件はされていませんが集団によるイジメで自殺まで追い込む生徒も素人だし、女子高生の援助交際などもどんどん増えていますね」


金田一

「なるほど100年間経過すると犯罪の主犯の実態が確かに様変わりしたということですね」


ヘビ

「はい、おっしゃる通りです。これでは『蛇の道の蛇』の出番はありません」


金田一

「では簡単ですね。過去形にして『蛇の道は蛇だった』にしましょう。意味は『素人ほど犯罪を犯す』例えです」


ヘビ

「なるほど、『昔はヘビが悪かったけど今は出番がない』意味に聞けますからいいですね」


司会

「ヘビさん、納得されましたか?」


ヘビ

「はい、スッキリしました。ありがとうございます」

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