第20話 ハマグリ

金田一

「さて、お次は誰かな?」


司会

「はい、またもや魚介類です。ハマグリですね。ではハマグリさんどうぞお入りください」


ハマグリ

「はい今日はよろしくお願いします」


司会

「あれ?人間もご一緒に登場ですか?」


人間

「はい、私は桑名市観光課の者ですが応援に来ました」


司会

「そうですか、桑名市の広報担当ですね。よろしくお願いします。さてハマグリさん、今日の提訴されることわざを教えてください」


ハマグリ

「はい、ズバリ『その手は桑名の焼きハマグリ』なんです」


司会

「一般には『その手は喰わない』に桑名を引っ掛けたダジャレに近いことわざですね」


ハマグリ

「はい、おかげさまでこのことわざのお陰で江戸時代以降、全国的に桑名とハマグリが有名になりました。この場を借りて御礼申し上げます。本当にありがとうございました」


司会

「え、お礼を言われると言う事は別に提訴される意味は無いんではないでしょうか?つまり現状に満足されているわけですよね」


ハマグリ

「はい基本的にはそうなんですがこの100年間で桑名市の名産品がハマグリ以外に増えてきてしまったんです」


司会

「はい、どういう風に増えたかを具体的に教えてください」


人間

「ここは我々観光課の方から説明したほうが早いと思いますがいかがですか」


司会

「それは非常に助かりますね。できるだけわかりやすくお願いいたします」


人間

「はい、実は江戸時代はこのことわざの通りに桑名と言えばハマグリだけだったんです。しかし最近にはいろいろな土産物が増えてきています。ちょっとこの紙を見てください」


司会が受け取った紙に目を通す。

紙には桑名市特産品上位十傑が書いてあった。


1 桑名シティホテルの桑名カレー

2 丁子屋のはまぐりわさび漬け

3 安永餅本舗 柏屋の安永餅

4 美鹿山荘のカレーのおせんべい

5 細川酒造の三重路 上馬ビール

6 ナガシマスパーランド スチールドラゴンスナック

7 なばなの里 長嶋ビール園の地ビール

8 ホテル花水木・伊勢路 桑名海苔

9 総本家・貝新 時雨蛤(しぐれはまぐり)

10 丸茂 八壷豆(多度豆)


司会

「なるほど・・・金田一先生もご覧下さい。十傑にハマグリさんが二つしかありませんね」


金田一

「カレーと地ビールが二つづつありますね。これは数だけで見ればハマグリさんと同格になりますね」


人間

「はい我々市の観光課としてはハマグリさんがここにいるので気が引けますけれども、桑名市は何もハマグリだけが名産品と言うわけでは無いのです。もちろんハマグリさんの今までの先導役としての功績は非常に評価しております」


ハマグリ

「お気遣いありがとうございます」


人間

「しかしわが桑名市は日本のポークカレーとビーフカレーの境界線と呼ばれており、桑名カレーは境界線らしく両方の肉を入れており非常に有名になりました」


金田一

「ということは、今回の提訴はハマグリさんからカレーかないしは地ビールへの変更と言うことですか?しかしそれではハマグリさん的には面白くないでしょう?」


ハマグリ

「はい。私たち的には今まで頑張ってきたのに心情的には面白くないのが正直なところですが、実際は『桑名カレー』と言うのが私たち以上に有名になっているので正直肩身が狭いと言うのが今の私たちの気持ちです」


金田一

「わかりました。では少し長くなりますが明日からはこうしましょう。『その手は桑名のハマグリとカレーとビール』これでいかがでしょうか。おそらく市としても観光のPRとしては充分だとは思いますが」


人間

「あ、ベストです!先生。市としましても全く文句はありません」


ハマグリ

「なんか、世代交代感はありますがまだ一番最初に持って来ていただいていますから『やられた感』はありません」


司会

「よかったですね。では明日からこのことわざが施行されます」


人間

「助かりました。また名産品が変化があれば100年後に来ます」

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