タイトルとあらすじに惹かれて読みはじめ、冒頭の一話目から、「これは絶対に面白いやつだな」と確信。中盤くらいまではぽちぽちと楽しみに読んでいましたが、後半は止まりませんでした。
面白い本を読み終わったあとの、あの完全に抜けきっていないような幸福な感覚とさみしさを、久々に味わいました。
守護者たる竜を失った王国の滅亡までのお話。それと、竜から託された盟約を果たすために旅をする、最後の竜騎士のお話。とにかく物語自体の引きこむ力がすごくて、登場人物たちにふりかかる出来事にハラハラし、家族愛や友情、妄執に似た関係性にもつい感情移入してしまう。そしてしだいに、お気に入りのキャラたちは物語の最後にどうなっちゃうんだろうと心配になってきます……もっと旅が続けばいいのに……。
ハイファンタジーはもう読み飽きたという人や、このジャンルをあまり読まない人にもぜひ読んでほしい。
それにしても、なんで星は三つまでしかつけられないんだ!
まずはこの作品に対する評価(★、PV、フォロワー数)は、一切気にしないでいただきたい。
そしてお手軽で気楽な読み物を期待しているなら、最初からこの作品に近づかないことだ。悪いことは言わない、火傷では済まないだろうから。
断言するが、この作品は圧倒的な高みにある。
揺るぎない文章力、大胆にして緻密な構成力、考え抜かれた細かな考証。
どれをとっても一級品だ。
作者の剛腕ぶりに、読者はただ打ちのめされ、引きずり回される。谷底に突き落とされる。組み伏せられ、泣き叫んで許しを乞うても、作者は容赦しない。
ボロボロになって、涙と鼻水を垂らしながら、それでもこの物語から逃れることができずに読者はひたすら付いていくことしかできない。
そしていつか気づくのだ。本当に血と涙を流し、体力と精神を削って消耗していたのは、誰よりもまず作者であることに……。
物語は「最後の竜騎士」ランスベルが、エルフとドワーフとともに盟約を果たす旅と、竜の加護を失ったファランティア王国の崩壊が二つの軸となって織りなされていく。
多数の登場人物、それぞれの視点で物語は進められていく。
構造としては少し『指輪物語』に似通ったところもあるが、読んでいるうちに全く本質が違うことに気がつく。
決して読んでいて「楽しい」話ではない。むしろ読み込むことで疲労困憊し、こっちの体力をがしがし削っていく――そんな恐ろしい作品だ。
だが、保証しよう。この作品は圧倒的に面白い!
少なくともあなたが「本読み」であると自負するならば、この物語を読んで絶対に後悔することはないだろう。もし、読み始めて途中で逃げ出すことができた人がいたなら、私は素直に称賛を贈ろう。
自分にはそんなことは不可能だった。
この奇跡のような作品に立ち向かう同志が、一人でも増えることを願う。