12.ランスベル ―盟約暦1006年、冬、第10週―
上空から見る王都はおもちゃのようで、そこにいる人々は人形のようだったが、ブラウスクニースの目を借りたランスベルにはニクラスと手を繋いで横たわるマイラの姿がはっきりと見えた。
彼女はこちらに手を伸ばしている。おそらく別れの挨拶だろう。
ランスベルも手を振り返す。
『望みは叶ったようだな』
ブラウスクニースが言い、ランスベルは亜麻色の髪を掻きつつ答える。
「うん。出発の時、どうしても本当の事が言えなくて……またここで会う、って約束しちゃったんだよね」
ブラウスクニースは笑った。他の人間には咆哮に聞こえただろう。
『お前らしい奇跡だったぞ、ランスベル。他の誰にも願えぬものだ』
その言葉にはランスベルへの理解と慈しみが溢れている。
ランスベルはブラウスクニースの首に優しく触れて感謝した。
「それに、もう一つの願いも叶ってしまったね。一緒に飛べた」
『うむ、そうだな……。では行くか、我が騎士よ』
ランスベルは名残惜しいと思った。
ブラウスクニースとの時間が終わってしまう事や、この世界を離れる事に。
それは言葉にしなくとも、ブラウスクニースには伝わっている。その証拠にドラゴンは言った。
『……しかし、別れを惜しむくらいの時間はあるだろう』
ランスベルはにっこりと微笑む。
「それならもう少しだけ……飛ぼう、ブラウスクニース」
光のドラゴンは咆哮を上げて力強くはばたき、空の彼方へと飛んで行った。
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