第3話

人でごった返しているショッピングモール内。  

中央にある吹き抜けには幾重にも吊り下げられたリボンで構成されている、風のモニュメントがある。


その下に、白のワンピースを着た真琴が立っていた。表情は暗い。

頻繁に腕時計を確認している。


「真琴・・・お待たせ」

声をかけられた真琴が振り向いた先には、白を基調としたコーデに身を包んだ

祐介の姿があった。

頭には、真っ赤な帽子。

固く編み込まれた、ニットの帽子をかぶった祐介。

真琴、一瞬驚くが段々と俯き、肩を振るわせる。


「えっ?なんだ?真琴、どうした?」

祐介、狼狽えて真琴をなだめようと近づく。


「おいっ、ちょ!・・真琴」

真琴、ガバッと秋作の首に抱きつき。

「うわぁぁぁん!ゆうぅぅぅぅすけぇぇ!」

「うわっ!おい!ちょっと真琴!強い、そんな強く抱きつくなよ」

照れくさそうに笑いながら、真琴の頭を優しく抱きしめる祐介だった。




1Fを見下ろせるフロアから、階下の2人を微笑ましそうに見ている、慎一郎。

後ろから近づいてくる瑞希に気づいていない。


「よう、お疲れさん」

振り向いた先の相手に気づき、手を挙げる慎一郎。

「瑞希サンも、お疲れさま」

「まったくだよ。毎度の事とはいえ、あの二人ときたら」

瑞希、慎一郎の横に並んで二人を見下ろす。


「ところで、なんでココだったんだ?」

瑞希、慎一郎の方を見る。

「あぁ、それはね」

慎一郎、バックから雑誌を取り出しパラパラ捲って瑞希に見せる。

「『特集この夏イチオシのモテコーデ』?しかも、ルパーシモンって、あんたの所のブランドじゃんか」

「俺のじゃなくて、母親の。ね」


慎一郎、苦笑いしながらモールの奥を指す。

その先にはルパーシモンの格調高そうな店頭が見えた。

瑞希、店を見て、祐介を見。

「馬子にも衣装だな」

ニシシと笑う


「使えるものはコネでも何でも使わないとね、スタッフ割で15%オフです」

「にしても、高く付いたな祐介は」

「まぁ、アイツも痛い出費だったろうけど、真琴ちゃんの機嫌が治るなら、それ位の代償は払わないとね」

慎一郎、瑞希にウインクしてみせる。


「ところで瑞希サン、この後ご予定は?あの二人はもう大丈夫だろうし、どっかで 食事でもして行かない?」

「そうだな、あんたの奢りなら良いよ」

「マジ?言ってみるもんだなぁ」

楽しそうに二人はその場を離れて行った。



和やかだった1Fフロア。

若いカップルの様子を微笑ましく見ていた、通りすがりの小畑義明おばたよしあき(58)の顔が、段々と険しくなっていき。


「おい!帽子のにいちゃんが姉ちゃんにはっ倒されたぞ!余計なこと言うからだ!」


--------------------------------------------------------------------------------------おわり。

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お騒がせな二人。 ろくろだ まさはる @rokuroda

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