退廃都市デタンス3番地区の工場長

 退廃都市デタンス3番地区の工場長、彼が休んでいる姿を誰も知らない。

 3番地区の大火災の中でも、工場長は休まずに働いていた。炎で床板が燃えても、床が抜け落ちて地下に叩きつけられても、工場長は使命である歯車磨きを止めることはなかった。

 炎で地下の氷も溶け出して、いくつか眠った人間の内、一人の女の長い髪の端が燃えた。その時の数秒、彼は手を止めたが、結界工場が全焼しても作業は続けていた。

 今日も彼は休まずに働いている。理由は、まだ誰にも分からない。

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