チトセネズミは春の月に腹を空かせる

 チトセネズミは春の月に腹を空かせる。夏月の光を頼りに夜空に登り、熟れた秋月をかじり、冬には土中で眠る習性を持つ。故に冬には月はないが、齧って落ちた月の欠片は長く灯りに使われる。

 ある村人もまた欠片を集めていたが、家に帰り確認すると、その内煤色の何かが混ざっている。それを摘むなり、何かは急に動き回って謝って机から落ちてしまった。

 村人が床を確認すると、黒い何かと欠片が散らばっていた。籠にはいつの間にか、欠片が少しなくなっていたらしい。

 ところで、毛皮の中に詰め込まれていた欠片は、籠の物よりも一層青白く、冷たく光り輝いていたという。その欠片はさながら「冬の月」と言うらしい。

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