第7話 終戦〜帰国後

 日本に帰ってからすべきことはわかっていた。


 自分の家族の無事を確認し、顔を見せること。赤橋の最期と形見を届けるために赤橋の家族に会うこと。


 これらをなるべく早くやることだった。


 帰還兵が受ける諸々のことが済んだ後、自分の家族の元へすぐに行った。幸いにも空襲の影響も受けずにいたので、親兄弟にすぐ会えた。入隊する前とほとんど変わっていなかった。一安心したところで、実家で過ごす時間を取らずに、すぐに次のやるべきことのために東京へ向かった。


 戦地へ行く前に赤橋とお互いの家の住所を交換していた。お互いの戦後の交友と万が一のことがあったときのために。


 東京は空襲で焼け野原になっていたことを知っていた。その住所へ行っても会えない可能性が高い。それに万が一のこともある。

私は覚悟してその場所へ向かった。


 何もない更地になっている場所をひたすら歩き続け、目安になる場所を探し続けた。戦地での経験に比べれば歩き続けることなど苦でもなかった。


 焼けずに残った社を見かけては、赤橋の冥福と赤橋の家族に会えるように祈った。今までそんなことはしなかったのに、戦地から帰ったら神仏にすがりたくなっていた。


 でも同時にご家族になんて言おうかと迷っていた。戦死したのは事実だ。銃撃されたのも事実だ。でも最後に命を奪ったのは私だ。正直に伝えなければいけないことはわかっている。だけど正直に伝えてショックを与え、私を恨むかもしれない。お互いに交わした約束だとしても一家の長男を失ったことには変わりない。伝えた後に殺されても文句はない。もともと戦地の銃撃で死ぬはずだった運命だ。ありのままに話し、赤橋の髪が入った袋の形見を渡そう。


 そう決めながらも、いろいろなことが頭の中をよぎっていた。歩きながら伝える順序、訓練所での様子や戦地の様子など話す内容も幾度となく頭の中で反復させた。道を数え切れないほど間違えながら住所付近にたどり着いた。


 そこで私は見慣れた後ろ姿を見つけた。

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