第84話 決戦 タイラント

3人は頂上に到着した。


依頼通りそこにはタイラントがいた。


タイラント--人型で伸びる腕が4本あり、かじられたりして直接タイラントの血液や唾液等が身体の中に侵入するとゾンビになってしまう。


ゾンビ化すると治すことが出来ないため好き好んでタイラントを討伐しにいく冒険者はいない。かなりリスクのある戦いになる。


「ゲームじゃゾンビ化しても治せるけど今は絶対ゾンビ化しちゃだめだな」


葉留はゴクリと唾を飲み込んだ。


「葉留!タイラント相手に必死でガードしてちゃダメだからね!けっこう攻撃重いと思うし、噛まれたら終わり!スキル使って回避しながら引き付けお願いね!」


何度もゲームで戦っているからか珍しく桜がまともな助言した。


「私も邪魔しないように後衛から攻撃するね!」


真矢はやる気を出した。


いざタイラント戦開始。


葉留はクイックスタンスでタイラントの攻撃を回避しながら引きつける。


「うわ!こわ!ただの攻撃で地面めり込んでるし!」


葉留が引き付けている間に桜はスキル、迅速を使い見えない速さでタイラントを切りつけていく。


「葉留!喋ってないで集中して!」


真矢は2人の動きを見ながら邪魔にならない時を狙い炎魔法ファイアを放つ。


これを続けていればいずれ勝てると思っていたがタイラントも上級レベルの魔物、攻撃が当たらないと分かるとパターンを変えてきた。


伸びる腕の4本中半分をノールックで桜を攻撃し、もう半分で葉留を捕らえようとしてきた。


「やば!絶対捕まんねーよ!」


クイックスタンスは動きが俊敏になるため敵は中々捕らえる事が出来ない。


桜の迅速はクイックスタンスよりも遥かに早いため当然捕らえられない。


だが隙をつかれた葉留は1本の手に捕まってしまう。


「げっ!これはやばい!」


桜が助けようとした時真矢が避けてと叫んだ。


「雷魔法サンダーストライト!」


雷の槍をタイラント目掛け撃ち放った。


直撃のタイラントは感電し手の力が一瞬抜けたため葉留はなんとか脱出する。


「ありがとう真矢ー!」


後衛の真矢にお礼を言う葉留。


「感電してる今がチャンスだよ真矢!合体技で決めよ!」


桜が真矢に叫ぶ。


真矢は桜から何も聞かされていなかったが桜の動きを見て何かを悟った。


葉留はタイラントが逃げないようスキル、パラライズエッジで麻痺をさせ2人の射程から離れた。


桜はオリジナルスキル、インビジブルキリングを、真矢は炎魔法ファイアディザスターを放つ。


「オールレンジディレクション!!」


真矢と桜はまるで話し合ったかのように同じ技名を叫んだ。


するとタイラントの周りに無数の炎の刃と無数の飛ぶ斬撃がタイラントに放たれた。動けないタイラントは全て直撃する。


これが決め手となりタイラントは倒れた。


3人は勝利である。


そしてアリスの言っていた通り3人のルーンが光、文字がUウルからThソーンに変わった。


はれて3人はレベルが3に上がった。


「やったー!レベルが上がったこの感覚めっちゃ好き!」


葉留はタイラントを倒しレベルが上がった事に喜んだ。もちろん桜と真矢も喜んでいる。


「でも倒した魔物の魂がルーンに宿ったって事だよね、なんか複雑……」


真矢はなんとも言えない感情が浮かんできた。


「でもこれであの異世界人と互角に勝負出来るかもしれないよ!絶対リベンジするんだから!」


桜は復讐に燃えた。


だがこのまま帰るわけには行かない。


タイラントを倒したからといって消える訳ではなく死体がそのまま残り続けるため地面に埋める必要がある。


葉留はアタックスタンスを使い剣で穴を掘り始めた。


「はあー、疲れた、なんか戦闘より疲れた」


タイラントが入るほどの穴を掘ったためそこにタイラントを入れ、埋めた。


埋め終わってから3人は手を合わせ、目をつむり拝んだ。


魔物といえど生きてる者を殺したからである。


そしてもう1つ仕事が残っている。道中のゾンビ化した魔物を倒す事だ。


1匹でもゾンビ化した魔物がいるとまたそこから感染が広まりあっという間にレッドクリフにいる普通の魔物達がゾンビ化してしまうからである。


3人は残っているゾンビ化の魔物を倒しながら下山した。


休むことなくカタルシア城内のギルドに向い依頼の達成を報告した。


「ほんとにあのタイラントを倒したのですか!?この依頼を受け帰ってきた冒険者はいなかったので心配してましたが、ほんとにありがとうございます!しっかり報酬は支払わせていただきます!」


3人はギルドの職員達に感謝された。


ギルドの建物から出た3人はすぐさま宿に向かった。


外は既に夜。3人は宿を借り一人一つずつのベッドに飛び乗った。


「もう今日は疲れたーこのまま寝る」


「私も今日は無理。疲れて何もしたくない」


「2人はひ弱だねー、と言いつ私も疲労困憊だからもう寝るー」


3人はあっという間に眠りについた。


無理もない、魔物をたおしながら山を登り日帰りで帰ってきた3人は今まで味わった事がないくらい疲労していた。


3人はぐっすり眠りについた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ルーンオブアリス 神野ナツメ @mu-ton

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ