第2.4話 山で起きたこと
「……はい……そうです
俺は、Eと二人だけで
四人でロッジに行く前に、二人だけでロッジに行きました
入山とかの手続きは全部、Eの名前でやりました
でも、人数は誤魔化せないから
そこからバレたんだろ?
俺は何もしてないんだ
Eに、どうしてもロッジに行きたいってせがまれて
自分でも何故か分からないけど、二人で行くことにしたんだ
他の奴らを誘わなかったのは何故か?
そりゃぁ、いつものグループで行くんだからEが居たらダメだろ?
だから、二人で行ったんだよ
でもEの奴が、ロッジに入った後、様子がおかしくなって
俺の首を絞めようとしてきたんだよ!
だから、振りほどいて……
ロッジの外に出たんだ
Eが女で助かったよ。男の力だったら振りほどけなかったかも知れない
それで、外で息を整えてたら
少しして、Eが出てきた
そのときには、もう首が変な方向に折れ曲がってた
どう見ても死んでるのに、ふらふら歩いてきたんだ
ゾンビみたいに両腕を上げてな
ああ、やっぱり、そうなんだ?
Eの首からは“E本人の指紋しか検出されなかった”んだろ?
疑われると思って逃げ出したけど、通報しても良かったかもな
ところで、刑事さんたちが、妙なやり方で捜査してたのもそのせいだろ?
だって“自分の首をへし折った死体”が山で見つかって
一緒に入山した名前の分からない誰かが居る
そんな状況だから殺人事件の捜査にはできない
だけど、何が起きたかは調べないといけない
だから、行方不明だってことにして、俺らから色々聞いてた訳だ
それにしても、あの話、本当だったんだな
あ?どの話かって?
『腕だけの幽霊』に憑りつかれるって話だよ
Eの奴、親父の幽霊に憑りつかれたんだよ
それで俺を襲ったんだ
そのあと、自分の腕で自分の首を絞めて死んだ
いや、殺されたんだ
そして、Eが死んでからも腕は首を絞め続けた
首がへし折れるまでな
皮肉な話だと思わないか?
わざわざ会いに来た自分の父親に殺されたんだからな
そう思わないか?刑事さん
俺はその後、すぐに山を下りた
死体がどうなったかなんて知らないよ
勝手に歩き回って、どっかで力尽きたんだろ?
え?なんでその後、またロッジに行ったのか?
そうだよ。当たり前だろ、いつものメンバーとの約束なんだから
俺だって楽しみにしてたんだ
そのために企画立ててさ
予約だってしたんだ
それが“女同士なら安心だから”なんて理由でEに付き合わされて
そのせいで、中止なんて馬鹿げてるだろ
そんなことがあったせいで、Aが幽霊を見たって話をした時は驚いたよ
詳しく話してないのに『腕だけの幽霊』を見たんだから
どうして見えたんだろうな?
あのまま触ってくれたらアイツも絞め殺してやれたんだけど
は?俺が絞め殺す?Aを?どうして友達を殺すんだよ?
刑事さん、何言ってるの?
て言うかさ、なんで俺だってバレたの?
ああ、まずはCか……
Eの方から断った、って言っちゃったからね
刑事さんには、俺から断ったって言ってたっけ
個別に話を聞くのって、こういう意味があったんだね
納得した
へー、それだけじゃないの?
え?口調?
女が“俺”って言っちゃいけないの?
違う?
あー、Aが言ってたのか“Bの一人称はアタシ”って
じゃあ、Dは?あいつだけ貢献無し?
え?『探検』の時に何かしてたの?
あー、そうだそうだ。ロッジの外に出たんだよね、アイツ
それで、慌てて呼びに行ったんだ
ほら、Eがまだ動いてたら大変でしょ?
襲われるかも知れないから
でもそれって、違和感、ってほどの物かな?
まぁ、理由の無い行動ではあったか
そのまま死ねば良かったのにな
俺は、あのロッジでバカ騒ぎする連中が気に入らなくてね
Cが外に出た時も、ほっとけば良かったんだ
そうすりゃEがまだ動いてて、殺してくれたかも知れないんだからな
まったく、なんで俺はCを助けようとしたんだろうな?
絞め殺してやれば良いんだ。俺の腕の上ではしゃぎやがって
なぁ、そう思うよな?あんたも
他人の家に勝手に上がり込んだら、殴られたって文句言えねぇだろ?
あそこは俺の場所なんだよ
俺の腕が埋まってるんだよ
俺が埋まってるんだよ
だから、俺の場所なんだよ
なぁ、刑事さん。何が悪いんだ?
なぁ、刑事さん。俺は何か捕まるようなことしたかな?
目の前で娘に死なれてさ
俺のせいで
俺のせい
俺が
俺の腕がいけないんだよ
なぁ、俺、そんなに悪いことしたのか?
捕まらないといけないのか?
なぁ……
俺は、どうなったんだ……?
俺の腕は、どうなったんだ……?
助けてくれ……
助けてよ……」
終わり
第二話 山で起きたこと 終わり
創作息抜き怪談 文字版 Bar:バー @BAcaRdi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。創作息抜き怪談 文字版の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます