第2.3話 山で起きたこと Dの証言

「……あ、あの……

 

あの、俺、気が付いたことがあって


俺、Eのこと見たんです。山で


あ、はい……順番に話します

俺、ロッジに着いたあとに、ロッジを探検したんです

それで、ロッジの中はBとCが見て回ってたんで

俺は、外を見てみようと思って……


外を歩いたんです

そしたら、木の影に誰か居て

人影でした


でも、それがスッと消えたんですよ

それで、近づいて確認しようとしたんです

でも、Bがすぐに来てロッジに戻ったんです


あの、それでその人影が、Eだったんです


俺、Eのこと知らなかったんで、その時は人影としか思わなかったんですけど

刑事さんに写真見せて貰いましたよね?

それで、何か引っかかってて


ほんと、ついさっき、気が付いたんです

あれ、Eです

髪の長い女性のシルエットだったんです


あ、はい、何でも聞いてください

協力、します


ロッジに着いてから、探検して

その後は怪談話して……

それで、夜中に『スクエア』をやりました


ええ、皆で笑いながら部屋を回ってました

楽しかったですね、その時は


ああ、そうだ。その時……

夢を見たんです

怖い夢でした


え?夢の内容?そんなことまで聞くんですか……

まぁ、良いですよ。話します


部屋の角に誰かが立ってたんです

女性の影に見えました


両腕をだらんと垂らしていて

首がおかしな方向に向いてました


俺は、そいつが居る角の、次の角に居ました

だから、誰かがそいつの肩を叩いたら

首の折れた女がこっちに来るんだ……って思って


でも、声も出ないし、身体も動かないんです

それで、誰かが女に近づいていくのが見えた

多分、Aだと思います


それで、Aが女の横に立って

手を伸ばそうとした所で、目が覚めました


きっと、ロッジの外で見た影のせいですね

ほら、夢って昼間の記憶から作られるって言うでしょ?


何故、近づいたのがAだと思ったか、ですか?

変なこと聞きますね

これってEの話に関係あるんですか?


はぁ、真剣に聞かれちゃうと、こっちとしても困ります

なんせ、夢なんで


えーっと、そうですね

影の形でも、体格とか性別は分かるでしょ?

だからまず、Bではないって、すぐ分かりました。


近づいてきたのは男の影だったんです

Bは女だから、まず除外できました


で、Cは、ほら。デブでしょ?

そんな感じじゃなかったんで

だから、Aが女に近づいたんだと思いました


Aが立ち止まってくれて良かったですよ

だってAが女の肩を叩いてたら

首の折れた女がこっちに来てた訳でしょ?

『スクエア』だから


まぁ、夢の話ですけどね


へー、Aも夢見てたんですか?

“『腕だけの幽霊』が、部屋の角に立っていた夢”ですか

さすがに、ちょっと怖いですね


二人が偶然、同じ夢を見たって話が怖いんじゃないんです

複数人が見たことなら、現実かもしれない、って気がしませんか?

刑事さんの捜査でも、一人の証言よりも

同じ場所に居た二人が同じ証言をした時の方が信用できませんか?


だからね、今の話を聞いてAも俺も

寝てなかったんじゃないかと思ったんです

夢じゃなかった、って

俺が見ていた角に立つ女と、Aが見ていた腕だけの幽霊は

同じ物だったんじゃないか、って


『腕だけの幽霊』は男だって言うんでしょ?

でも、俺は女の影も見ている


実は、Cから話を聞いたんです

Eは、もう死んでるんでしょ?


怪談話だとよくあるんですよ

近くで死んだ人の霊が集まって、一つになったり

犠牲者が取り込まれたり、って話


俺が昼間に見た影がEの幽霊で

Aが見た、腕だけの幽霊と混ざり合ったのかなって

それなら、俺もAも、夢じゃなくて

本物の幽霊を見てたってことになりますよね


まぁ、Aの霊感は自称なんで、何の確信も無いですけどね

Aは、いっつも適当言ってるだけなんで、ただの偶然ですよ


え?俺、ですか

……皆には内緒ですよ?


俺、見える人なんです

見える人が皆、行儀よく“そういう場所に近づかない”なんて

オカルト話の聞きすぎですよ


俺は、関わりたいんです。幽霊と

死ぬとどうなるか、知りたくないですか?


俺は知りたいですよ

だから、そう言うのが出そうな所、よく行くんです


まぁ、本気の時は一人で行くんですけどね

今回は、掘り出し物でした

あの影がEだって気が付いて


嬉しくて、興奮しちゃいましたよ

取り乱して、すみませんでした」



終わり

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る