第14話

何故、彼女の味方をすることに決めたのか。

正直、彼女を助けたいからとかかっこいいものではなく、ただ、今、痛い思いをしたく無いからと言うのが一番当てはまっているような感じである。

「君は本当に可哀想だ。そこまで中身が子供だとはね」

彼の言っている言葉は間違ってはいないが、僕の心にグサリと刺さるものであり、少しよろめいた。

「何も相手の言葉なんぞに言葉を傾けることはない。お前の行動は、どちらにしても私には利があるから味方をする」

僕の頭の中に、そんな声が直接的に聞こえてきた。僕の体の中にいる彼女の声だ。

「……。僕の答えは正しいのか?」

そんな感じもする。

「そんなわけ無いだろ。いずれ、二重人格が暴走して、自分の手では負えなくなるかもしれないんだ。強盗、殺人。君は彼女を信用しきっているわけではない。もし、そのようなことが起きたらどう責任を取るんだ?」

確かにその通りだ。僕は、彼女のことなんか何一つ分かっちゃいない。全くの初対面だ。だけど、だからと言って、自分が逃げて済む話ではない。僕はまだ、高校の入学式を二日前に終えたばかりの、ピカピカの高校生だし、世界は広いと言うけれど、実際に日本から出たことはないし、況しては、地元から出ることもあまり無いほど、僕の視野は狭い。しかし、彼女の応援があり、僕の導き出した答えは、二人でこれから共に生きていく。この答えは少なくとも、楽じゃ無い道だと思うが、僕と彼女にとっての正しい道なのだと思う。

「責任はその時考える。僕は彼女の味方をする」

僕ははっきりと言った。

「へぇ。残念だ。なら、こちらも正しい道を進むために、君と彼女には痛い目を見てもらう」

そう言って彼は、少し俯いて息を吐いた。

「僕はこう見えても専門家だ。幽霊の専門家だ。専門家と言っても、ただの趣味だ。いや、違うな。宿命と言ったところだな。まぁ、何でもない。人の話を聞いても、君にとってはどうでもいいだろう」

正直、僕もどうでもいいと思っていた。それは、彼女の記憶が自分の記憶と混ざり合っているから、何となく分かっているからでもある。同じ話を二度聞いても面白くないものだ。

「さて、木刀じゃ敵う相手じゃないからね。日本刀でいかせてもらうよ。本物だ。本物の妖刀だ。ちなみに何で妖刀かと言うと、幽霊を切るためだよ。つまり、さっきの木刀と違って、切り離すだけではなく、二人とも殺すと言うことだ」

「なにっ……‼︎」

「済まないが、俺はそれほど本気なんだ。君たちはそれほど侮れない存在なんだ。十点満点では、八点か九点くらいかな」

僕はそれほどの強さなんだ。自分では分からない。そう思うと、彼女との関係に気を使わないといけないな。

「大丈夫よ。私の力と、あなたが油断をしなければ勝てる。あなたには期待してる」

頭の中で聞こえる声に期待されてしまった。

「やるしかないか」

僕は、そう言って構えた。

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愚業者物語 高柳の神 @warudody

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