僕は君の犬になる

@lily7

第1話

朝の住宅街をぬけて更に歩くと小さな交差点の横断歩道にさしかかる。犬の散歩をしている女の子とすれ違った。

はぁ、犬とか毎日可愛がられるだけでいいよなぁ……。


犬へとよそ見をした一瞬、車がこっちに突っ込んできた。

女の子が一瞬遅れて気がついたけど突っ込まれる!!

俺は横断歩道から歩道へと思い切り女の子をつき飛ばし、そこで意識がプツリと途絶えた。




****



朝陽が部屋に差し込む。

うーん、、良く寝た。身体も軽い。

パチっと目を開くと女の子に抱きしめられていた。


ファーーーーーッ?!


驚いて飛び起きる。

ぴょこん。


(ぴょこん?)

会社員の男の飛び起きる音がぴょこん? 無いわー。

可愛らしい女の子がスヤスヤ寝ている。高校生くらいだろうか。

俺、捕まるんじゃね? でも記憶にない。 どうなってんだ?



「ワンッ」(ッたく!)


「わふ?」(え?)


薄暗い窓に映った自分を覗きこむ。


え、俺犬じゃん。

トイプードルじゃん。


「ワオオオオオオオオオン!!!」

(マジかあアアアアアア!!!)



バフッ!と枕が飛んできた。


「チェリーったらご近所迷惑でしょ!」


更に追い討ちかかった。

俺チェリーなの? すっげー可愛い飾りが揺れてる首輪しちゃってるし。マジかー。もうショックで今日何もやる気出ないわ、明日から本気出す。よし寝よう。って、あれ?犬だから寝ても問題なくね?!

可愛いは正義だった。



気を取り直して半ばヤケクソに惰眠を貪りまくろうと思ったら俺を抱えて女の子が起き上がった。


「おはよう、チェリー」


「ワン、ワン!」(改名キボンヌ!)


もっと、こう男らしい名前にしてくれ。と思ったら俺おもくそ雌犬だった。。

ドウシテコウナッタ!

めっちゃ可愛い洋服着せられてフリッフリですがな。

飼い主のお嬢ちゃんに連れられて朝から散歩に出かけた。


「ワン!ワンワンッ!」(寒い、嫌でござる行きたく無いでござる!)


「もー、チェリーったら張り切っちゃってー。ふふっ」


通じねぇ・・・

仕方なく諦めてお嬢ちゃんに付き合ってやる事にした。


「あら、今日はとってもお利口ね! 偉いわチェリー」


撫でくり撫でくり撫でくり撫でくり。

俺は嬢ちゃんの隣をプラプラ歩いてたら撫で回された。リードが突っ張ってグエってなりたくなかっただけなんだけど、この犬そんなに頭悪かったんだろうか。



帰宅すると脚を洗って朝ごはんタイムになった。


「チェリー、待て!」


いや、逆に待て。ドッグフードなんか食えねぇ。

米!日本人なら米でしょう。


「よし」


全く良くないのでお皿を前足でずいっと押しかえしてそっぽを向いた。

シュバッと椅子にのって米とだし巻き卵を見つめる。


「クゥーンクゥーン」

(あのー、こっちにして貰えますかねー。)


女の子がだし巻き玉子を1つ摘んで差し出してくれた。

ヒャッハー!

しかし女の子は自分の食事を食べ始めてしまった。ガッテム!!!


俺は新聞を読んでるオッサンにもおねだりを決行することにした。


「ワン、ワン、ワン!」(おい、オッサン飯くれ!)


前足を膝にくっつけて二本脚で必死に見上げる。それからピョンと膝にのって更にアピール。


「どうしたんでちゅかー? チェリーたんはパパに構って欲しいんでちゅかー?」

オッサンに抱っこされ、ブチュ!っと鼻先にキスされた。

衝撃に石化すると第二波がきた。 何が悲しくてオッサンとイチャつかにゃならんのだ。


止めルォおおおお!キモい!ブッ○ぞオッサン!

パンチをお見舞いしてやった。ぷにゅり。


「チェリーたんの肉球はプニプニだなあ、ハハハ」

俺のパンチはオッサンにはご褒美だった。クッ、俺の可愛い肉球が憎い!


ジタバタして、机に着地すると腹いせにオッサンの納豆御飯をガツガツと食ってやった。納豆ご飯美味い。ゲフッ。

しかし口の周りに納豆がついた。トイプードルのもふもふの毛にこれは辛いと思ってたら女の子が洗面台に連れてって口の周りを洗ってくれた。ありがたや。しかしちべたい。

ママさんがドライヤーをかけてくれてもふもふ艶々になった。


さて、あとはトイレに入ってもう一寝入り・・・

トイレのドアノブどうやって開けたらいいんだ?!


この日から俺の戦いは始まった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕は君の犬になる @lily7

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ