書けないから書く 〜小説がダメでも一日二千字〜
ひろ。
第1話 書けません(一日目)
数日前。
以前から書いていた小説に、どこか満足のいかなくなっていた俺は、途方にくれていた。
先週の土曜に「キャラとストーリーが面白くなる本」(正式名称ではない)を図書館で見つけた俺は歓喜した。
「これで俺の作品はもっと面白くなる」
そう、この時の俺はそう思っていたのだ。
それが新たな袋小路の入り口だとも知らずに。
土曜、日曜とその本を読み切った俺は満足感に包まれていた。
「もっとたくさんこういう本を読めば面白い作品が書ける」
そして本を読むのも疲れてきた頃、俺はおもむろに自身の作品を読み始めた。
「やだこの作品……クッソつまんない……」
本を読んだ俺からすると、これまでの作品はあまりにも法則から外れており、その拙さが見るに耐えなかった。
「なら本の法則を元に書けばいいじゃないか!」
俺は新作を書くことにした。
まず本に書いてあった名作の法則である「十三フェイズ構造」を元に作品を書くことをコンセプトとした。
主人公は「どこか物足りなさを感じつつも、満ち足りた毎日を送る高校生」を主人公とし、ストーリーの一貫した目標は「異世界から現世へ帰ること」にした。
まず主人公の日常を描きそこから異世界へ転移する描写を書いた。
続いて「狂言回し」という役割のキャラを書くことにした。
ここら辺から本の情報を文書に映しこむことに苦しみを感じ始めていた。
狂言回しが主人公を盗賊から魔法を使って守ることで、この世界が自分の知っている世界ではないことを、主人公に自覚させる描写を加えた。
さらに通過する馬車、貴族というワード、テレビでも見たことのないような城壁が彼の予想を確信へと変えていく。
そのように描いたつもりだったが、書きながらこう感じていた。
「上手く書けていないんじゃないか。読者に伝わらないんじゃないか」
そう思い始めるとだんだん筆の速度は遅くなり、最終的に小説の更新が出来なくなってしまった。
今日に至っては一切文書に触れていなかった。
気分も落ち込み体調も悪くなってしまったようで、ズル休みまでしてしまうほどだった。
しかし何もしないというのはそれはそれで苦痛である事を俺は思い知らされた。
最近は暇があれば小説を書いていたのが急に書かなくなったのだ。
さらにズル休みをしてしまった事で今日は地獄のような一日となってしまった。
「暇だ、頭がおかしくなりそうだ!そこら辺の物に当り散らしたい!」
とさえ思うほどだった。
しかし夜になり、ミラティブの配信を見ていると「ひどい作品の評価をしなくてはいけなくなった」と嘆く配信者が居た。
初めはそのような状況に陥った彼女を笑うだけだったが、少しその作品が気になった俺は彼女にその作品を紹介してもらった。
確かに酷い文書をしていた。
しかしその作品は多数のPV、評価をされていた。
厨二的な世界観と魅力的なキャラクター設定のお陰だろう。
まあそれを作者は生かしきれてなかった訳だが。
ともかくそんな作品がそれほど人気があって、何故自分が苦しんで、悩んで書いた作品には全く評価がつかないのかと悔しくなった。
配信が終わった後、俺は「何かを書きたい」衝動に駆られていた。
しかし旧作も新作の続きも書こうとすると筆が止まってしまった。
その時、俺はあることを思いついた。
「書けないなら、この書けない苦しみをそのまま書いてしまえばいい!」
そう思いつき一心不乱に文書を書いて現在千四百字。
今度こそ本当に書くことがなくなってしまった。
仕方がないので「もし新作を書くならどんな作品が良いか」を脳内考察したものをそのまま文書にしてしまおう。
まずカクヨムの上位作品からどんな作品を書いたら良いかを考えた。
検索したところ「異世界で俺TUEEEEする話」だった。
ってこれなろうと一緒じゃないか……と俺は感じた。
しかし俺の作品は能力が地味だったり使い方が地味だったりと、どこか小さくまとまっている。
ならば今回は本格的に俺TUEEEEしてやろうと思う。
俺TUEEEEを求めているのは男性だろう。
異世界の学校なんてクラス分けで強さがはっきりするから良いかもしれない。
主人公は転生時に神との契約を結んだことを忘れ、普通の家庭で育てられる。
この世界は契約を結んだ対象が強ければ強いほど魔法が強力になる世界。(より上位の存在に上書き契約出来ても下位の存在とは契約出来ない)
ただし神と契約している主人公はどのくらい精霊とも契約できず初めは落ちこぼれのクラスに配属される。
しかし担任は魔法が全く使えない自分にも特別な才能があると慰めてくれる。
ある時、授業中に大型モンスターがやってきて教員達でも止められずクラスが混乱。
担任が最後までモンスターに立ち向かうが、モンスターの攻撃にやられそうになったその時、主人公がモンスターに立ち向かう。
主人公は習ったばかりの呪文を詠唱する。
しかし最下級精霊を対象とした詠唱では魔法が発動しない。
その時、主人公は脳裏に浮かんだ呪文を詠唱した。
すると凄まじい威力の魔法が校庭を包み、モンスターは消滅。
主人公は学校のヒーローになる。
最後に担任が「より良い場所で学びなさい」と国立魔法学校への推薦状を主人公に渡す。
それを胸に涙とともに感謝し、旅立つ主人公。
てな感じで書いてみるかぁ!
書けないから書く 〜小説がダメでも一日二千字〜 ひろ。 @964319
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