八月の悪夢(10)#98

警察騒ぎの興奮を鎮め、周囲への敵意、不審感を和らげ、妄想と幻聴に振り回される言動を抑えるための服薬内容は以下の通りだった。


◆最初に行ったいつものクリニック

抗うつ剤を朝晩から朝昼晩に増やす

(効果が感じられなかったので)

◆入院していた病院

抗うつ剤は朝晩のみに戻す

その代わり、興奮を抑える安定剤のようなものを朝晩追加する


そのほかに、認知症の進行を遅らせる薬は、これまでどおり毎日朝一回を続ける。


これで2週間様子を見ることに。


そして、なんとか警察どーのこーのの方は、完全におさまったのだ。

それに伴って、施設の職員への接し方も、入居者さんたちとのつきあいも(つまり、引きこもりも解消)、だんだん元に戻っていったようだ。ごはんも三度食べるようになった(ハンスト終了)。


ただ、作文がどーのこーのと、それについてまわりの人が母を妬むようなうわさ話をしているという妄想や幻聴はどんどんひどくなった。

警察を気にすることから、気にする対象が変わっただけという感じもした。


私たちが様子を見にいくと、ほら、今ドアの向こうを誰かが私のこと噂しながら通っていったでしょう? とか、さっき談話コーナーの人たちが、私が立ち去ったらすぐに私のことを言っていたのが聞こえたでしょう? という具合。

私たちには、何も聞こえない。

心配なのは、それを入居者さんたちに直接言ってないかということだった。まわりの人とうまく行かなくなったら、本人はいざ知らず、私たちが見ていてつらくなるだろうと思うのだ。やはり、仲良く楽しくやってもらいたいから。


そんな状態で、2週間後、また病院に行った。


入院先だった病院へ行った経緯と服薬状況を伝えて、母に好きなように妄想の話をさせると、先生はカルテにそれらを書き取っていた。

あまり安定剤を続けるのもよくないので、落ち着いてきたのなら、夜の1回だけに減らそうということになった。

それで、今の状態が悪化せずにキープできるかどうか経過を見て、また2週間後にということになった。やれやれ。


2週間の間、状態はそのまま続いたけれど、悪化はしなかった。2週間後の通院でそう伝えると、妄想や幻聴が相変わらずあるのなら、その内容がどういうきっかけでどういう方向へ変化するかわからないので、激高の予防ということで、夜1回の安定剤だけは続けようということになった(これは今、12月現在も続けている)。


母は診察室で、相変わらず天皇陛下や作文が世界中の図書館に〜という話をした。カルテを見ると、「誇大妄想」と書いてあった。


ともあれ、八月の悪夢は、こうしてひとまず幕(?)を下ろしたのでした。

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