施設入居当初の母。#80
8月で更新が止まってました。
あのことを書いて気が抜けたというわけじゃないけれど、第一段階の達成感みたいなものはちょっと感じつつひと休み……だったらよかったのですが、実はこの8月は上旬からまた母のことでテンヤワンヤが起き、地獄を見ながらこちらを更新してました。
見たというより、覗いてしまったと言った方がいいかもしれません。
そして、むしろ、書いてひと休みというよりも、そのテンヤワンヤが9月の上旬くらいでやっとおさまって、ひと休みしていた感じです。
落ち着いてきたので、再開します。
*
母が施設に移り、自宅にしていた賃貸マンションを引き払うまでの間、私が母の世話をしに遠方から行く時は、そのマンションに一人で泊まっていた。
隣にはドラッグストアがあり、生鮮以外の食料品も買える。
おやつが大好きで、特にアイスクリームに目がなくて、認知症になってからはほとんど毎日のように母はそこに通って、アイス、お菓子、菓子パン、カップ麺、時にはお弁当なども買っていたようだ(最後のころは下剤も)。
母が入院から施設入居となって、もうそこには行かなくなった直後のタイミングで、私が買い物しに行った時、レジのすぐそばにあったはずのアイスクリームの冷凍庫がなくなっていることに気づいた。もうアイス類を売るのをやめたのだろうか?
私はとっさに、もし母がまだここに住んでいたらどうなっただろうと考えた。もうここにはアイスはないのだと勝手に諦めるか、店員に訊くか。あるいは、もっと遠いコンビニまで買いに行くようになるのだろうか。
私はレジ精算の時に、「アイスクリームのコーナーはもうなくなったんですか?」と訊いた。すると、先ごろ店内の配置換えがあって、アイスは奥の方の冷凍食品のそばに移ったと言う。
もし母が店員に訊いたとして、この説明を受けて、覚えられるだろうか。普通なら覚えられないだろうけど、大好きなアイスのためなら、乏しくなった短期記憶力を総動員して覚えるのだろうか。
そんなことを考えながら、まるで母がいなくなるタイミングをはかったように、このドラッグストアが商品の配置換えをしたことが、何か象徴的なことのように思った。それくらい母は、そこの常連客で上客だった。
唯一の外出動機であった「おやつを買う」ということも施設ではできなくなり、今の母は、個室でぼぅっとテレビを見るか(これは今まで通りだが)、すぐそばにあるベッドに好きな時にすぐに横になるか(マンションでは布団は別部屋だったので、骨粗しょう症的には今の方がよくない環境になった)、という、ますます非活動的な生活になったように思えた。
そして、一人で自由に買い物などの外出をさせてもらえない環境では、おやつへの飢えが顕著に現れた。
引っ越しで、以前の冷蔵庫に入っていたもののうち、未開封のジャム2瓶とまだ新しいケチャップ、マヨネーズ、カレールーと中華の顆粒だしを、あとで私たちが持ち帰ってもいいかと思って、とりあえず施設のミニ冷蔵庫に持ってきていたのだけど、1週間ごとに私たちが行くたびに一つずつなくなっていて、母に訊くと「おやつ代わりに食べた」と言う。ジャムまではしかたないと思っていたけど、中華だしを残して調味料類も消えていた時には、心底驚いた。ケチャップはしょっぱくて口当たりがよい、マヨネーズはコクがあっておいしかった、とのことだ。カレールーは、以前のマンションでもポリポリ食べることがあったので、想定内と言えばそうなのだけど。。。
私たちは行くたびに、おやつ類をいっぱい買い足してくるのだけど、すぐに食べてしまうので1週間もたない。
施設のごはんはちゃんと適量を与えられていて、ほとんど食べているようなので、「口さびしい」だけなのだろうけど、おやつという唯一の楽しみが自由には得られなくなったことがかわいそうではある。
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