施設生活のあるある?#72

施設に入った母。

もちろん、すべてが完璧に思い通りで大満足、とはいかない。これは、施設を否定するつもりではなくて、事実としてメモしておきたいという意味で記す。


まず、髪を切られてしまった。

最初は、髪が伸びたから、定期的に来てくれるカットのサービスを受けますかと訊かれた。母は何十年もトレードマークとも言えるような髪型を維持していて、指先がままならなくなってからも一生懸命自分でカーラーを巻き、私たちも「指先を細かく使う作業は脳にもいい」と思って、大変そうでも続けさせてきた。本当に身体機能的にできなくなるまで、やめるつもりはなかった。そして、母の髪を切るのも長年私がやっていたので、「私が切りますから、カットはいいです」と答えた。その次に訪問した時に、実際、ちゃんと髪も切ってあげてきた。


それなのに、さらにその次に訪問したら、パツンパツンのつんつるてんな髪型をした母が歩いてきて、私はギョッとした。まるで誰かがはさみでジャキジャキと適当に刈ってしまったような頭に見えたから。「昔の囚人みたい」という印象。

母がカールすることで隠していた髪の薄いところもスケスケで、母のおしゃれ心が踏みにじられたように感じた。しかも、私、前回切ったんですけど? って思った。


スタッフさんの「カッコいい髪型でしょう?」と言った時の笑顔にも、ゾッとしてしまった。囚人みたいなのに、カッコいい??

本当にそう思っているのだろうか。

だとしたら、あまりに老人をバカにしてないか? とまで思ってしまった。


あとから妹もそれを見て、伸びたら元の髪型に戻そうと言ってきた。トレードマークの髪型なんて、愛着を持っているのは家族の間だけのことであって、他人から見たら手入れがラクな方がいいだろうという、「よかれと思って」の結果だと頭ではわかっている。だから、こちらからはこのことについて何も言ってはいない。ただ、意思疎通の難しさを痛感した。


それから、#44でも書いたいくつかの点。

実は、うちの夫のM夫くんに指摘されたことだったのだけど、17時のスタッフのシフト交代の都合に合わせて、ごはんの時間が7時、11時、16時になっていること。福祉関係についても仕事がら多少明るいM夫くんによれば、夕ごはんと朝ごはんの間が空き過ぎだと言う。言われてみれば確かにそうなのだけど、母はもともと夕方早くにごはんを食べていたので、私はあまり気にしていなかった。

が、M夫くんは、入居者のお腹の加減よりも、運営の都合を優先するのはどうかと思っているらしい。そういう考え方も確かにわかるので、一応記しておきます。


これも再掲になるけど、自由な外出が許されず、大好きなおやつを好きな時に自分で買いに行って食べたりできないこと。

その他、生活のほとんどがお任せできるのは助かる反面、たとえばそれまで自分で公共料金を払いに行っていたのもしなくなるなど、頭を使う機会が減ってしまう。


そして、私が一番「いくらよかれと思ってしてくれたことでも、そこまで?」と面食らい、しばらくの間、軽く立腹していたことがあった。次回はそのことを。

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