入院してから(1)〜病状は回復#24

ついに、入院という手段を取った母の思い込みの便秘と下剤による慢性下痢状態。


先生は診察の時、便に対する強いこだわりをなくするための薬を処方すると言っていた。ノイローゼのような過敏な神経を鈍らせるようなことかと、私は想像した。


入院直後は、妹に一両日中に病院に見に行ってもらうように頼んだ。

妹によると、母は便通のことばかり言ったり、過剰にトイレに通ったりするかわりに、ベッドでウトウトしていたと言う。そこへ先生がやってきて、あまりにウトウトしてばかりでもいけないから、薬の量は様子を見て調節するような話をしていたらしい。

そんなことからも、薬は安定剤的なものだろうと思った。結局、私は週末しか病院に行けなかったので、その後は先生とは会うことができず、詳しいことはわからない(聞いておけばよかった)。


看護師さんに入院後の母の様子を訊くと、最初は「看護師が様子を訊くたびに便が出ないことをまだ気にしていて、必ず下剤がほしいと言ってくるので、毎回ではなくて適当に間隔をあけて渡している」とのことだった。

その後は、下剤を過剰に飲まなくなったので、本人は「3日も出ていない」(なぜか事実と関係なくこのフレーズを言うクセ? があったように思う)と相変わらず言い続けていたようだが、徐々に「3日くらいなら出なくても大丈夫ね」と言うようになり、下剤も3日に1錠程度だったのが、1カ月くらい経つと「たまに出ないと言うので、看護師が心配して下剤がほしいか訊くと、じゃあ飲んでみようかなと言う」程度になってきた。そして、2カ月くらい経ったころだろうか、「便のことはほとんど言わなくなった」というところまでこぎ着けた。


最終的には、私たちがお見舞いに行っても、いる間にトイレに行くこともなく、傍目にもまったく気にしてないように見えるところまで回復した。


ただ、退院して自宅に戻ったら、元に戻る可能性が高いと言われた。

ソーシャルワーカーは、自宅に戻さない方がいい、あるいは、一人暮らしさせない方がいいという意見だった。つまり、自宅じゃないところ、一人にならないところということは、誰かと同居できる環境か、高齢者施設に入るかということになる。


ある日、母を見舞うために遠方から行き、主不在の母の自宅に一人で泊まっている時に、同じマンションの民生委員の方と偶然会った。

入院前にお世話になったことのお礼を言い、その後の経過を話すと「もうここには戻って来ないんでしょう?」と言われた。一瞬言葉に詰まっていると、「そういう例は多いから」と言う。

そういうものなのか、とあらためて思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る