ー私が子供のころまで
母の輪郭。#18
うちの母は、北海道の田舎生まれ。
地域の漁協を仕切るような仕事をしていた父(私の祖父)と、働き者で何でも自分で作ってしまうような母との間に、長女として生まれた。
子供のころは、いつも畳の上にうつ伏せに寝転がって本を読んでいたと言う。背筋が強いのはそのせいらしい。
私の知ってる母もよく本を読んでいたし、私が大学生くらいのころだったか、詩を書いて ”●●●大賞” に応募したりしていたので、文学は好きだったのだろう。
それから、数字に強い。学校の成績は具体的に聞いたことがないけれど、理系文系併せて、まあまあだったらしい話しぶりだった。
私には遺伝してないが、軽く霊感がある。
母が子供のころ、夜、外に出たら、白いものがフワフワと物置きの近くから空に昇っていくのを見たという話を時々していた。それはさておき、誰かが亡くなって、それを母が直感でわかったということが、確かに何度かあった。
一度は、私の父の父が亡くなった時。ソファで昼寝をしていた母はちょうどその祖父の夢を見ていて、夢の中で母の髪を梳かしてくれていたと言う。そのクシがびしょびしょに塗れていて、首筋に冷たい水が垂れて来て背中がゾクゾクと寒いので、「冷たい冷たい」と祖父に言っていた。すると電話が鳴って、祖父の死を知らされた。そういう話。
私の父、すなわち自分の夫が亡くなった時は、父が家で深夜に仕事をしており、いつもは夜中に起き出すことのない母が、なぜか目が覚めてどうしても仕事部屋を覗きたい気持ちになって、覗いてみたら父が机に突っ伏していた。おかしいと思って揺り起こすべく触ったら、とても暖かくて、居眠りしてるのかと思ったと言う。
お通夜の時は、夜中に2階の部屋で寝ていたら、ギシギシと階段を上がって来る音がして、「お願い、私たちを怖がらせないで」と心の中で何度も祈ったら音が止んだ、あれはパパが様子を見に来たんだと思うと言っていた。
そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。身内の死も、いつでもそうとわかったかというと、そうではないし。
あと、すごい晴れ女。そして、クジ運が、私から見るとメチャクチャいい。これこそ遺伝してほしかった。
ふと立ち寄った駅の売店で、「見かけたから」という理由で買った宝くじで10万当てた。
サッカーワールドカップのチケット抽選で、母の名前で出した応募分だけ、しかもファン垂涎の対戦カードの試合が当たった。同行の友だちみんなであの手この手で応募していて、ほかは誰も当たらなかったのに。
若いころは、当時の妃殿下美智子様に似ていると言われていて、これも遺伝してほしかったが、私は父似と言われている。
おしゃれが大好きで、選んだ職業は美容師。それで父と出会った。
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