最後の砦は行政サービス?#13

認知症の母の思い込み便秘と下剤の過剰摂取による慢性下痢状態。

万策尽きて、医療的にも救われる道がなく、いよいよ本当に八方ふさがりとなった。


誰か、同じような状況を解決した人はいないか。時々ネットの記事をあさってみたりもしたけど、なかなかドンピシャの事例がない。実際はあっても、載ってないのだろう。


そんな時ふと、今まで一度も利用したことのない行政のサービス、たとえば相談にのってくれるところはないか探してみた。


実は、母は介護認定で「要支援2」はついていた。

友だちが、自分のお母さんが突然そういうサービスが必要になった時に、手続きに時間がかかってすぐに利用できずに困った、何はなくともイザの時のために介護認定は取っておいて損はないと言っていたので、うちも一応手続きだけはしていた。


なので、その気になれば、ヘルパーさんに家事をお願いしたり、デイサービスに行ってレクリエーションを楽しんだりすることができる。

私と妹は、お互いにスケジュールをやりくりして必ずどちらかが週1回行って、掃除洗濯、入浴介助、1週間分の食事の作り置きなどをしていたけど、日程の調整が難しい場合もあった。そんな時に、頼めたらラクだなぁとは思っていた。


ふだんの一番の悩みは食事だった。最終的には宅配弁当サービスを1日1食だけは頼むようにしていたので、主菜はそれでよいとしても、もっと野菜を多く食べさせたい。というわけで、私たちは副菜的なものを数種類作っていた。

ところが、週に数回同じものを食べるというのが飽きてしまうらしく、また、翌日以降は出来立てでないものを温めて食べなくてはならない。これが母は面倒なのだ。なので、残して腐らせたりしてることも多く、それを見ると、わかっていてもこちらのやる気が削がれた。

かと言って、7種類のものを少しずつ作るには、それなりの知恵がいる。人並みの料理技術しかない私たちにはけっこう大変だ。

週に一度でもヘルパーさんが来て、別のものを作ってくれて、出来立てのものが食べられれば、少しは違うのではないか。


などなどの目論みもあって申請したわけだけど、そこでも一筋縄に行かないのがうちの母だった。


介護認定を申請すると面談があるのだけど、まずはこれをなんとかパスしなければならない。すべてはそれからだ。

認知症になってますます頑固になり、ヘンなプライドを振りかざすこともある母を下手に刺激しないように、面談の名目は「市の人が一人暮らしの高齢者が困ってないか、市内を回っている」ということにした。


母はもちろん「困ってない」アピール全開だ。あとで母のいないところで、私が実情を説明する。メンタルクリニックの診断書も奏効して、なんとか要支援2を得た。


次は、実際にサービスをしてくれる地域包括支援センターなるところに顔を通して、担当者をつけてもらい、具体的に何をどう支援してもらうか話し合う。これがダメだった。

ヘルパー? 何それ? から始まって、自分は認知症だと思ってないし、何でもできる。家事をやらないのは、必要がないからやらないだけだ。頼んでもいないのに、娘たちが勝手に心配してあれこれやってくれるので、受け入れているだけだ、と言い張る。


ケアマネの人は、「娘さんたちもそれぞれ大変な時があって、そういう時に私たちがお手伝いできれば、娘さんたちの心配も負担も減る」ということを言うんだけど、まったく聞く耳持たず、という感じ。

本当はやってくれなくていいのに勝手にやってることだから、娘たちが大変ならやめてくれても私は困らない。他人の世話にはならない! 必要もないのに他人を家に入れたくない!

ものすごい強い口調で突っぱねた。


ケアマネさんは「私との相性もあるので、よかったら別の者をよこすこともできる。諦めないで、機会を見てまた連絡ください」と言って帰っていった。


結局、それから電話することもないまま来ていたのだが、ついにその時かもしれないと思った。


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