ノイローゼvsストレス。#8

下剤の過剰摂取をやめさせたくて、必死に言い聞かせる私たち。


高齢者はみんな便秘がちで、2、3日くらい出なくても気にすることはない、母の現状くらい出ていればいい方だ、それなのに今は薬を飲み過ぎていてむしろ下痢状態だ、このままでは腸に悪い、体に悪い、頭に悪いなど、いろんな言い方で何度も根気よく繰り返した。


時には母もわかったと言うのだけど、5分経つと忘れてしまって、また一から同じことを言う。こちらもまた、一から同じ説明。

何百回続けても、何も変わらない日々。


夜中でも、トイレに行くたびに長時間居座るのでろくに睡眠も取れてなくて、明らかに昼間ウトウトすることが多くなり、下手すると布団に入ってガッツリ昼寝をしてしまったりする。

睡眠不足は健康に良くないし、かと言って昼間にも横になるようだと、ただでさえ重度と言われている骨粗しょう症も進むし、なにより、ストレスとの合わせ技で認知症にも良くないだろうと想像できた。


事実、母は常に便のことしか頭にないノイローゼ状態、ほかのことがますますないがしろになり、便のことを意識する以外はぼうっとしていたり、変なことを突然思いついたように言ったり、明らかに全体的な健康状態、脳の状態が悪くなっているように見えた。


私の方も、行く時は泊まりがけで、自分も母の夜中のトイレのたびに目を覚まして様子をうかがっていたので、ちゃんとした睡眠がほとんど取れず、私の体調も悪くなっていつもどこかが不調、遠方から通うのも、もう行くだけで疲れてしまってつらかった。


ダメだと何度も言ってるのに、次々と新しい複数の下剤を買って来てるのを行くたびに見つけて、とうとうキレて下剤のビンを床に叩き付け、大声で激しく叱責してしまったこともあった。

母は神妙な顔をして、「もう買って来ないから…」と言って、ビンを拾ってゴミ箱に捨てる。その子供みたいなシュンとした様子を見て、私はひどい自己嫌悪に陥って自分を責める。


でも、次に行くと、また3種類くらいの下剤がテーブルに並んでいるのだ。


もはや母は、その時その時のお腹の状況だけにとらわれ、外から何を言っても頭に定着しない。一時的な現象なのか、認知症も進んでいるのか、判断がつきかねた。


母の体と精神はもちろん、私たちのストレスも限界だった。

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