第12話 人助け


窓にかけてあるカーテンの隙間から挿す光と馬の足音に気付き俺は目を覚ました。

あとついでに言えば時々俺が乗っている物が小石のせいでガタガタして寝心地が悪くなり目を覚ましたとも言える。


どうやら俺が寝ているうちに馬車に乗せられ、そのまま王都に連れてこられたみたいだな。

俺が普段寝るときに使っている布団が掛けてあるため、部屋から直接運んだみたいだな。


……ん?ちょっと待て。状況的によくよく考えて欲しい。五歳児を大人が担いで馬車に運ぶ…その時に布団でくるめていたのかそれとも別々に運んで後で俺の掛けたのか。

もし前者だったら完全に絵面が誘拐っぽいですけど?

そう思うのは俺だけか?俺だけなのか?



目を覚ましてから数十分のところで馬車が完全に停止いてことに俺は気付いた。

何やら外が騒がしいし多分だがもう王都についたのかな?そうじゃなければよく物語だと盗賊や魔物なんかに襲われているっぽくなるんだけど…まぁ最悪そうなっても別にいいか。


そんなことを考えているとコンコンと馬車の扉をノックする音が聞こえ扉が開いた。

やはり馬車の中は暗かったのかいきなり日光を浴びると眩しすぎて顔を手で覆ってしまう。

だが、次第に明るさに目が慣れていき徐々にその手をどかす。

するとそこにあったのは正しく異世界の都市といったた頃である。

中世ヨーロッパ風の町並みに奥に見えるのは王城か?かなりでかいな。それに他の建物も独特な雰囲気があり趣がある。

この街の空気を肌で感じられるなんてマニアにはたまらないだろうな。

だが…俺はそんなマニアではないのでそこまで興奮はしないがな。


「どうだ?ネクロ。すごいだろう、ここは」


親父が急に話しかけてきた。


「ええ!!お父様!」


まぁここは感激した振りでもしとくか。



その後、親父が王国建国の歴史を語り始めたのだが長いしめんどいし興味もないので只々道行く通行人の姿を見ながらボケーッとしていた。

その時に気になるやつを見たが今は特に何もしなさそうなので放置することにした。



その後俺達は王城へ連れて行かれ、俺の眼の事や近況の報告等が行われかなり疲れた。

結局、開放されたのは日が沈み人々が家に明かりをつけ始めたところだった。


ここで説明するが、この世界の照明器具は大まかに言って三つある。

一つ目は原始的な火である。これは誰でも覚えれば火を起こせるようになるが火は環境に左右されやすく火事の原因になったり、料理にはうまく使えなくなったりする。

二つ目は魔法。これは一瞬で明るくなるが魔法の適性がないと使えない。

三つ目が魔石。魔石は魔物の体の核で、魔物を倒すと石が手に入る。これに魔力を流せば魔石が光明かりとして扱えるようになる。この世界の人間は少なからず魔力を持っているので魔石を使えないということはない。




俺は親父とおふくろに今日はもう疲れたので部屋で休みたいと言い、貴族専用の宿の一部屋を親父達が借りて使わせてもらうことになった。


さぁ〜って…もう寝ますか……




なんてな。

せっかく面白いところに来たんだ。遊びに行かないとな!!気になることもあるしな。


そう思い、近くにかけてあった茶色いフード付きのマントを着て深くフードを被った。

そして部屋の窓からゆっくりと外に出る。一回だから骨折の心配がないが念のためだ。


この都市の作りは王城を中心とし、円状に広がっている。王城の周りを囲んでおり、今俺がいる宿があるのが貴族街。貴族街を取り囲んでいるのが平民街。平民街を取り囲んでいるのが貧民街。貧民街を囲んでいるのが外壁となるウォールマa…守護壁だ。


よし、じゃあ平民街に行ってみよう。

そうして俺は五歳のくせに夜の街を駆けていった。



◇◆◇◆



親父からくすねてきた金で買い食いをし、美味しものを食べる。

あれ?これ最高じゃね?

だがいくら異世界といえど身長110cmの奴が夜一人で歩いてたら不審がられるよな…衛兵呼ばれる前に裏路地逃げよ。



裏路地に入り少し考える。

大通りの喧騒から抜け出し静かで暗くとても落ち着けられる。

ああ…懐かしいな。確か前世でもこういうふうにしていたんだよな。

俺がとあるをし終わったときはだいたいこんな感じだったな。

働いて美味いものを食い幸せのままベッドに入る。

まぁこっちの世界でもやってることは大して変わらないが。



俺が買ったものを食い終わった直後、目の前に大きな荷物を抱えた二人組の男が通り過ぎていった。

しかし、二人組の男は昼間に見た怪しい男達である。


「…何か引っかかるな………効果範囲半径30m【空間把握】」



俺は不審に思い咄嗟に【空間把握】を使用する。

すると、先の男たちが抱えていたのは…



「この形……まさか人か!?」


そう。気付いてしまった。男達が抱えて走っているのが自分と同じくらいの子供だということに。



「はぁ〜…見捨てたら寝入りが悪くなるしな。助けるか。」


俺は両脚に力を入れ真上に跳躍する。見たところ横の建物は2階建てで5,6mはあったのだが軽く越してしまった。建物の上に着地した俺はすぐさま男達が走り去っていった方向へと向かう。【空間把握】で居場所はしっかりマークしている。

どうやら男達は貧民街の方へ向かっているようだった。



走って数秒で男達のがしっかり見える範囲までに追いつく。

ん〜〜?そういやこれからどうしよ?物理や魔法で攻撃してしまうと男達はもちろんのこと、子供、果ては周りの建物まで無事には済まない気がする……


まぁでもどうにかなるだろ。



「【空間固定】」


後方にいる男を狙い、ちょうど足が上がるタイミングで【空間固定】を使い足を引っかる。

日が落ちてるから障壁も見えないしな。

そして後方の男は派手に転んだ。


前方にいた男はそいつに愚痴を言い、あろうことか後方の男を置いて行こうしている。

仲間を大事にできない奴はこうだな。



「【空間圧縮】」


男の前方で作り出した立方体が地面に落ちる…

瞬間、男の体は吹っ飛び壁に叩きつけられる。

抱えられていた子供は男が手を離した瞬間、【空間固定】で保護してある。

今圧縮したのはこないだ俺が吹っ飛んだ圧縮量の約10分の1だ。

子供がいなくなった今、手加減する必要はない。一応魔力を流して子供を守る【空間固定】の耐久率を上げる。



「さぁ〜って…5分の1【空間圧縮】くらってみろよ」



その数約50個。さっきの反応を見ると10分の1でも一発一発はプロボクサーのパンチ以上の衝撃なのに……

まぁ頑張れ。


【空間圧縮】を放ってしばらくした後、俺は下に降りて子供の安否を確認する。

男達の安否?知らん。特に興味もないし。

空間固定を解除しゆっくりと地面に下ろす。

暗くてよく見えなかったのだが子供は麻袋の中に入れられ目と口を布で覆われたり塞がれたりしていた。

当然手足も縄で縛られていた。


とりあえず布と縄を取り、子供の体を起こす。

ふーん。どうやらこの子は女の子のようだな。

顔はある程度整っていて髪は甘茶色でロングだ。

服装は若干地味だが良い素材を使っている。


「うぅ……」


女の子が目を覚まそうとしている。


「大丈夫か?」

「え?え、え?」


流石に慌てるか。


「多分君は誘拐されたんだろうね。」

「あ、…」


彼女にも誘拐される心当たりがあるのだろうか困った顔で固まっている。


「君、名前は?」

「あ、えっとチロル=グレイス!」

「そっか。じゃあチロルちゃん。一回大通りに出よう。」

「うん!」


しばらく歩き大通りに出る。するとやはりどこかのお偉いさんの娘なのか執事っぽい人が近づいてくる。

チロルちゃんに聞いたら家で雇っている使用人だというので後はその人に任せることにした。

流石にもう眠いし。


立ち去る時チロルちゃんが何か言っていたような気がするが眠気のせいで何も覚えていない。


窓から侵入し宿の自室に帰る。そしてそのままベッドイン!!

今夜もいい睡眠ができそうだ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あの〜すいませんがもう寝かせてください!? 黒焦げししゃも @96koge

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ