第11話 魔族のような眼

今しがた俺の目の前に現れたのは____________俺だ。




ただ、俺と言っても今の俺ではない。


昔…というか前世の俺だ。しかも四、五歳くらいのガキの頃のだ。


しかもさっきまで真っ暗だったはずの空間は今では俺が前、家族と住んでいた家の中と同じ内装になっている。




壁に掛っているカレンダーを見ると7月15日だった。




「この日は……」




無くしていたはずの記憶がフツフツと蘇ってくる。


この日は……










◇◆◇◆








気がつくとそこは見覚えのある所だった。


真っ白で何もない所…そう、あのクロムクソメッキのいる世界だ。




「やぁ〜〜♪」




また奴はお気楽そうにのほほんとしていた。




「おい」


「ん〜〜〜?何かな〜〜〜〜?」




俺の呼びかけに一回転しながら反応するクロム


やっぱり何か一つ一つの動作がムカつくなこいつ……




「お前だろ。あんな事思い出させやがって」




俺はさっき忘れたままでありたかった記憶を無理に思いだされて苛ついていた。




「んふふふふ〜〜♪正解〜〜〜♪」


「というかなんでお前があ・の・事・を知ってるんだ」




そうだ…あの事は…あの事だけは…




「そりゃ〜仮にでも神様だからねえ〜♪全知全能ってかんじ?」


「ふざけるなっ!!お前の目的は一体何なんだ!!」




俺は奴に掴みかかり思いっきり怒鳴り散らす。


しかし奴はそれでも余裕の表情を崩さない。




「まぁまぁ〜♪ネクロ君〜〜♪君ってそんなタイプじゃないでしょ〜〜♪」


「なっ!!このやろ…」




そして俺が一人でヒートアップしている間にまた周囲が光り始めた。




「ま、待て!!まだ俺は何も話していないんだぞ!!」


「あ〜♪今回はここまでだねえ〜〜♪向こうに戻ったら少し変わってるかもしれないけど頑張ってねえ〜〜♪」


「は!?それってどういうことだよ!?」




次第に周囲の光は強くなっていき、眩しくて瞼を閉じ、再び開いたときにはもうそこは門の中の洞窟の中だった。


先程いたときとは違い、真っ暗闇ではなく多少ではあるが月明かりが入ってきて洞窟内がそこそこ見えるようになっていた。


じっと目を凝らしてみると洞窟内の壁一面にびっしりと彫刻のような物が掘ってあった。


これは……三つの髑髏が阿修羅のようにそれぞれ別々の方を向いている感じだな……何だこれ?






つーかどっと疲れたからそろそろ帰るか…




「ん?」




帰ろうとした時、ふとそれが目に止まった。


さっきまで俺の右手には黒い石を持っていたはずなのに、今は手の中には何もない。


その代わりに俺の右手首に見慣れないものが付いていた。


これは…真っ黒の腕輪?


そこには金属質でなんの彫刻もされていない質素な黒い腕輪があった。




あぁ…だめだ…やっぱり今は疑問より眠気のほうが強い…


この腕輪のことは明日考えるか。






その後、俺はジョーとプルルを適当な安全な場所に置いてきた後ベッドにダイブしそのまま意識を放り捨てた。










◇◆◇◆




ネクロが自室で爆睡する約二時間前、二人の少女が話をしていた。






「もう…何度言ったら分かるの?弟には優しくしないとだめじゃない。」


「うぅ…ごめんなさい……」




「ネクロの前でもそれくらい素直ならねえ…」


「うぅ…」




二人の少女というのはセリア、リリスのことである。




「そもそもにリリスはネクロの事嫌いじゃないんでしょ?」


「そうだけど…」




セリアの問いにリリスは恥ずかしながらも答える




「なら何であんなにきつく当たるのよ」


「だ、だってぇ〜‥‥そ、その…私の周りには自分より小さい子がいなかったから…お父様とお母様が私に弟か妹ができるって言われたときは本当に嬉しかったけど…いざ本人を目の前にすると緊張してなんて言って接したらいいかわからなくて……」




俯いて今にも泣き出しそうなくらい必死なリリスを見るとさすがのセリアもこれ異常起こる気は起きなくなったようだ。




「まぁわからなくはないけど…」


「うぅ…」


「明日、ちゃんと謝るのよ?」


「はい…」




セリアは軽くため息を付き、話を終わらす。




「はい、じゃあこの話は終わり!!もう夜も遅いから寝ましょ。」




パンっと手を叩き、リリスに寝るように促す




「それじゃあ、おやすみ〜」




かくして少女二人は眠りについた。








◇◆◇◆






翌日目を覚ます。


…またお昼時まで寝てしまった…


まぁいっか別に。


ところで流石にお腹すいたな…飯食いに行くか


そう思い自室から出る。


少し歩いたくらいでキッチンに着く。近くから誰かの話し声が聞こえる。




「では、アリア様はご帰宅されたのですね?」


「ええ。先程連絡がありました」




おふくろが帰ってきたのか?


とりあえず何か食べるものがないか聞いてみるか。




「あの〜すいません…おなかが減ったので何か食べるものを……」


「あ、はい…ネク…ロさ…ま……」




何故か俺がメイドさんに尋ねるとメイドさんは仕事用の愛想笑いの顔からなんにか恐ろしいものでも見たかのような顔に見る見る変化した。


何?俺の顔になんか付いてる?アブラゼミとか芋けんぴとか。




「あなた!!至急アリア様を呼んで来て下さい!!」


「は、はい!!」




え?なに?どゆこと?誰か説明求む!










メイドがおふくろを呼びに行って二分くらい経ったところでおふくろがセリア姉、ケイル兄、リリス姉と一緒にこっちに来た。


みんな、小走りでこっちに来た。そして俺の顔を見たたび、全員が驚愕した顔になった。




「ネクロ……あなた…目が……」




目?目がどうにかしたのか?


俺はメイドから渡された手鏡を覗き込む。すると以前とは各自に変わっている部分があることに気付く。


昨日までの俺の目は眼球が白く、瞳孔が赤いものだったのだが今は眼球の色は変わらず瞳孔の色が黒へと変色していた。


一体なぜ?もしかしてこの腕輪のおかげか?




「あの〜それで…目の色が変わったからの何なんです?」




今、率直に疑問に思ったことを聞いてみた。




「そ、それは…」




おふくろは何かを言うのを躊躇っていた。




「お願いします、お母様。知りたいのです。」


「……わかったわ。今夜、ユリウスも帰ってくるしそのときにちゃんと話すわ」






◇◆◇◆




親父が帰ってきてのでみんなリビングに集まり席に着く。


最初に話したのはおふくろだった。




「まず…ちゃんと最初に言うけど私たちは一切信じていないから。その上でこの話を聞いてちょうだい。ネクロ、あなたは今、魔族の転生体なんじゃないかと言われているわ」


「え……」




もちろん事実無根である。たしかに俺は転生体ではあるが前世は魔族でなない。


お前は何者だと聞かれたら確実に、人間です!!、と答えるだろう。




「魔族の特徴は白髪、褐色、瞳孔が赤く、眼球が白い、そして筋力や魔力値が高く属性の複数所持なのよ」




ああ、だから疑われていたのか。……え、でもそんなんで五歳児疑うのひどくね?




「そのことが私たちが力を貸しているレオン王国の問題としてあがってしまったんだよ。」


「しかも問題として取り上げたのが魔族嫌いとして有名な侯爵ときたもんだからな…」


「まぁ…色々あって結局、経過観察でネクロに変化があれば報告することになるんだけど、その間ネクロは私達の領地外へでうこと禁止と、言われたわ」




お、おう…そういや、俺なにげに領地外に出たことなかったな




「そうですか……因みにもしが僕が魔族だった場合はどうなるんですか」


「……即刻処分しろと…言われたわ」


「……」




部屋全体に重い空気がただよりはじめる。






はぁ〜…まぁ別にそこらへんはどんな回答でも対して興味ないんだけどな。




「では、聞きますが本当に僕が魔族だった場合、お父様とお母様は僕を殺すのですか」




俺は真剣な顔で問いかけた。




「っ!!そんなことできるわけ無いだろう!!」


「そうよ!!その場合私たちはレオン王国の庇護下から抜け出るわ」




俺の問に全力で否定する両親。


…どうやら俺の今世は少なくても一人ぼっちにはなりにくいようだ。




「その答えが聞けただけでもいいです。本当に…二人がお父様と母様で良かった」


「ネクロ…」




するとおふくろが一つ提案してきた




「あ、そうだ!つまりこれからは領地外に出てもいいんだもの。せっかくだから明日、王都に行ってみない?」


「王都ですか?いいですね。」


「よし、そうなったら明日に備えて色々と準備しなきゃね!!」




おお…珍しくおふくろが張り切っている。






◇◆◇◆






さてと……明日、王都に行くのか……








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