である少女 夢台 礼子 は真実に辿り着けない

第1話 目覚め 

 気が付くと、私はいた。座っていた。もしかしたら、目覚めたのかもしれない。

 きっとそうだ。私は今、目覚めたんだ。

 なぜ目が覚めたのか、そう考えると同時に、その元凶と思われるモノが目に入ってきた。

 私と同年代くらいの青年である。その青年には見覚えがある気もするし、無いような気もする。

 寝ぼけているのか思い出せない。


 ・・・よし! 一旦、今の自分が置かれた立場を考え直そうと思う。

 私は今、食事用のテーブルを前にイスに座っている。ここは、なじみのある自分の家だと思われる。

 なぜ確定でないかというと、私の記憶が正しければ、知ってるような知らないような同年代くらいの男性が、家に入ってくるという状況はまず考えられないのである。よってここは私の家では・・・。

 ハッ!現実味がなさすぎて、ここは自分の家ではないかと思ってしまった。


 他人が入ってきた家にいる人間として、私がすべき行いとして最も正しいと思われるものをしようと思う。

 大きく息を吸い込んで、大声で叫・・・。

 アレ? ちょっと待てよ、私がいるにもかかわらず、こんなにも堂々とした不法侵入があるだろうか?

 いや、私の経験上そんなことはないはずだ!

 ・・・くぅ~、実はこの反語による自問自答を一度やってみたかったんだよね。

 

 なんてことはさておき、男は私を一瞥いちべつもせずに階段を上がっていこうとする。

 この男はいったい何なのだろうか? 少しでも多くの情報を知るために、私は後ろについていくことにした。

 階段を上り終え、その男は2階の部屋に入っていこうとする。


 流石に私は男の腕を。いや、これでは表現が正しくない。この場合が正しいと思われる。

 見事に私の腕が彼の腕をすり抜けたのである。

 思い切って背中を押してみたが、暖簾に腕押しとはまさにこのこと。見事に私の腕が彼の体をすり抜けたのである。

 ッ私としたことが、驚きすぎて同じようなことを・・・。コホン、大事なことだから2回言ったことにしよう。うん、そうしよう。


 一応のため言っておくが、私は霊感が強いわけではなく、幽霊を見たことなど

 ・・・訂正しよう。見たことなど。現に見えてしまっているのだから念のため、過去形にしておく。


 男が部屋の中で着替えをし始めたので、慌てて部屋を飛び出す。

 これはさすがに、私の危機回避センサーが黙っちゃいない。

 廊下に飛び出した私は、流れるような動作で部屋に戻り鍵をかけた。

 

 ああ、急に動いたからか、めまいと頭痛がする。動いたことよりも、さっきの男のほうが原因か。あんな不可解な現象に会って、この程度で済んだ私を誉めよう。よくその場で気絶したり、叫んだり、腰が抜けたりしなかった。グッジョブだ私。

 あぁ、本当に頭がクラクラする。こんな時は寝てしまうに限る。

 等と、一度腹をくくってさえしまえば、さっき目が覚めたはずだったのにも関わらず、眠気を感じられるようになってきた。

 そんな感覚に身を任せ、私は自分の部屋のベッドにもぐりこんだ。

 布団にさえ入ってしまえば、この状況に対する疲れが津波のように押し寄せてきて、すぐに私の意識は途絶えた。

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