第47話
「ここに家を建てて住もう……」
「えっ?」
「足元を見られて、かなり吹っかけられて手に入れた」
「克樹が買ったの?」
「お前と住む事に決めた時に、平林に打診した……彼奴らは強欲だからな、かなり高値で買わされた……それでも、お前と此処に住みたかった……」
「克樹も僕に相談してくれないじゃん?おばさんに言った時だって……」
「解った。俺は我儘だからこれで通ってきたが、確かにそうだね……これからは気をつける……だから、ここで一緒に暮らして欲しい」
「うん、いいね。昔の様だ……」
水樹はそれは嬉しそうに、懐かしむ様に言った。
「……じゃ、ねぇだろ?」
克樹は物凄く不機嫌を、露わにして言った。
「えっ?一緒に住むんじゃないの?」
「そうだけど……」
「克樹が勿論建てるんだろ?」
「そうだけど……」
「じゃぁ、ちょっと僕の我儘も通るよね?」
「そうだけど……」
夕陽に染まる空は、真っ赤に太陽を歪めて輝かせた。
あの17歳の時の、あの夕焼けの様に……。
克樹は夕焼けに染まる様に、太陽を背にして水樹の傍に寄った。
「これ、プロポーズのつもりなんだが?」
「はぁ?」
「一緒に住む……そのなんだ、従兄弟としてではなくてだなぁ、つまり一生を共にする伴侶……パートナーとしてだなぁ……」
「克樹。お前考える事が〝変〟」
「は、はぁ?」
水樹は笑いながら、大真面目な克樹を見つめている。
「一生を共にするし、パートナーでも伴侶でもいいけどさぁ……プロポーズは無いだろ?」
「なんでだ?俺たち恋人になれないのか?」
「恋人でもいいし夫婦でもいいよ」
「だったら……」
「だけど、僕らは従兄弟だろ?それが始まりだろ?」
「俺はお前と一生の伴侶になりたい」
「うん、なろう」
「だけど結婚はできないから、土地と家を二人の名義にして……」
「うん、いいよ。克樹がしたかったら、結婚だってする……だけど、僕は克樹と従兄弟がいい……そんな形に
「水樹?」
「僕はね。ずっとずっと克樹といたいんだ。いろいろ考えたって、従兄弟が一番側にいられる……。夫婦だって恋人だって、別れる時は別れて他人だ。だけど従兄弟だったら、仮令別れても繋がっていられるだろ?」
「馬鹿か……プロポーズしてんのに、別れる話しすんなよ」
「……とか言って、なんか嬉しそうじゃん?」
「お前が言えば、なんだって嬉しいんだよ」
「さっきは違ってたけどね……」
「お前が俺の事、惚れ抜いてる台詞言うと嬉しいんだよ」
「はっ?これのどこが?」
「何でもかんでも、俺と繋がっていたがるからさ……」
「克樹が形式的な事に、拘り過ぎるんだよ」
「はっ?恋人なら泣いて喜ぶところだろ?」
「……だから、形式的な繋がりを求めてないって……」
「うん解った。形式的な繋がりは置いておいて、実質的な繋がりを大事にしよう」
「実質的な繋がり?」
「家に帰って、じっくり繋がり合おう。それならお互いの考えは一緒だと思う」
克樹はそう言うと、水樹を車に乗せて自分も乗車した。
「克樹、飯を食って帰りたい」
「はぁ?」
「今の時点でお互いの考えには、ちょっとのズレがあるようだね」
水樹は笑って言ったが、克樹は不満顔を隠さない。
「これからは、全て話し合いを持とうな……」
克樹はムッとした表情のまま、車を走らせた。
躰を重ね合えば合う程水樹は愛しい。
こんな事は従兄弟とはしない。
する時はもはや恋人だ愛人だ伴侶だ。
なのに他に従兄弟のいない水樹は、従兄弟でいいと言う。
「あっ……ああ……」
と臆面も無く喘ぎ声をあげて、シーツを乱れさせて悶えるのは、従兄弟じゃないんだ水樹……。
克樹は激しく水樹を揺さぶって、そして二人で高みに辿り着いて静かに下っていく……。
それは従兄弟では無いんだ……。
克樹は水樹に訴えでもするように、激しく組みしいてそして静かに力を抜いた。
「なあ……水樹……」
克樹は離れがたそうにキスをすると、水樹を覗き込んで言った。
「克樹は従兄弟なんだから……」
「そうだけど……」
「克樹が従兄弟じゃなかったら、恋人って事だけど……」
克樹は表情を明るくして、水樹を見つめる。
「だけど、従兄弟なんだから……」
「俺は判然とさせたい……せめて俺が信頼している人には、ちゃんと言いたい」
「誰に?」
「木本達とか……親父にお袋に……松長さんに、葵さんに……」
「…………」
水樹は呆れる様に克樹を見た。
「勝手にしたらお前怒るだろ?……マジでお前に拗ねられるのはキツイ」
「……水穂にも?」
「水穂ちゃんは悪いが、俺との関わりじゃない。お前あっての関わりだから、お前と高城さんに任せる……。俺は俺の方を片をつけたいだけだ……無論、機会があれば香里にも……」
水樹は呆れる様に、だけど仕方なさそうに克樹を見つめた。
「解った。克樹の好きにしていいよ」
「マジ?マジ?」
克樹がこんなに喜ぶとは思わなかった。
だって水樹は高城に、二人の関係は不毛な関係だと教えられた。
だからこんなに喜ばれる事とは、本当に思っていなかったのだ。
……克樹の考える事は、マジで〝変〟だ……
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