第16話
だんだんと二人の関係が変わっていくー。
躰を重ねる毎に変化に慣れていくー。
こうなる事が当たり前であるようにー。
ずっと以前から決められていたようにー。
翌日家具を調達に出かけた。
克樹は当たり前の様に、キングサイズのベットを選んで、当然の事だが夜の営みの場所となった。今まで触れられなかった分を、取り戻すかの様に水樹を求め、お互いに確かめ合う様に躰を重ねた。
求め合い睦み合う意味すら知らぬ間に、水樹は長い年月を高城と交わした。
幼い水樹が、深い繋がりの意味も解る筈も無く続いた行為が、今は違う意味を持つ物と変わっていくー。その意味を理解していく。
混じり合う汗と絡み合う肢体が、溶け合う様に一つになる時の喜びと歓喜を、水樹は初めて克樹と睦み合う事で覚えていく。
克樹は毎晩の様に離れ難そうに、水樹をきつく抱きしめてから躰を離した。
水樹の白い肌は吸い付く様で、克樹を離そうとはしてくれない。
吸い付く様な肌……話しには聞いた事があったが、実在するとは思っていなかった。
躰を重ねた瞬間に、絡め取られた様に肌が吸い付く感覚、それは離れ難くそして直ぐに合わせたくなる、その感覚に溺れていく。
ずっと恋い焦がれていた為だろうか?
唯一克樹を満足させるのは、水樹だけだと知っているから、だからだろうか?
よもや寝ても覚めても、あの細くて透ける様に白い肌だが、決して膨らみの無いふくよかさに欠けるあの躰に、こんなに腑抜けにされる程ハマるとは考えてもいない事だった。
「明日は水穂の所に行って来る」
シャワーを浴びて、届いたばかりのソファに腰を落として、テレビの電源を入れて水樹は言った。
「なんで?」
まだ濡れた髪から滴り落ちる水滴を、克樹は無意識にタオルで拭きやりながら聞いた。
「何でって、水穂の結婚式の準備もあるし……父親が居ないから、僕ができるだけしてやりたい……人に恥じない位の事を、してやれる様になったんだから……」
水樹は当然の様に髪の毛を拭かせながら、テレビから克樹に視線を移して言った。
「じゃ、俺も行く」
「えっ?」
「水穂はお前の妹だからな……俺の従妹になる訳だから、三国一の花嫁支度してやる」
「克樹……言い方が古いよ」
「ばあちゃんっ子だからな、古風だと言ってくれ」
「だったら僕もだ……」
「そうだな。俺達はばあちゃんっ子だ。ばあちゃんがお前を俺にくれた……」
「だったら、僕もおばあちゃんから、克樹を貰ったのか……」
水樹は笑って言ったが、じきに克樹によってその白い肌を、桃色に変化させられていく。
水樹の甘い声は、とろけそうに鼓膜を刺激する。
堪らず自然に洩れるそれは、まるで溜め息の様な吐息の様な、それでいて可愛げで囁やく様で、押し殺す様で……。
煽られ唆られ、重ね合う毎に溺れさせられる、息もできない程に、吸い付く肌が、甘い声が、白い肌が……。克樹を夢中にさせて、浮かび上がる事ができない程に溺れさせていく……。
克樹は羽交い締めにして、水樹を攻め立てた。
水樹はシーツを鷲掴みにして、それでも声を殺す様にしながら甘く発する。
溺れれば溺れる程に、克樹は高城の存在を意識する。
水樹が愛を語るのに、克樹は執拗までに高城に嫉妬する。
高城が水穂を選んで、出て行ったから持てた関係だ。
水樹が高城を捨てて、克樹を選んで得た結果ではない。
だから克樹は、高城の存在に
何と狭量で女々しいのだろう、情け無く愚かなのだろう。
解っているのに、気持ちはどうにもならない。
幾度となく唇を貪り、克樹の下で喘ぎ声を立て縋り付く水樹に、一体自分はまだ何を求めているのだろう。
もはや全てが皆無な程に溺れている。溺れ過ぎて克樹は、狂っているのかもしれない。
水樹の全てが欲しい……。
全ては全てだ。心も躰も……つけ入る隙が無い程に、ただ克樹だけで埋め尽くしたい。そんな衝動が克樹を支配する。
今の自分の様に、水樹も身動きができない様に、自分に縛り付けたい。
克樹は水樹の中で果てる。全てを水樹に捧げて……。
水樹は荒い息を肩で吐き、額に汗を浮かべながら克樹に顔を近づけた。
先程まで甘く克樹を酔わせる声を発した唇が、潤んだ瞳を閉じながら、克樹の唇に触れた。
もはや水樹無しの生活など、考えられない。
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