復讐屋シリーズでは一番気に入りました。
ターゲットが下衆なのが良かったです。
それと表面からは分からない心の奥底に抱えているものが出てきたときの黒さがいいですね。普段は一応きちんと騎士として勤めているのに、庶民を虫けらと考えているなんて、怖い怖い。
作者からの返信
新巻へもん様、コメントありがとうございます。
まさか、シリーズ全作品(現時点での)を読破してくださるお方が現れるとは! 言葉で表現できないくらいに、深く深く感謝しています。
三つ全てを読んだ上での感想という貴重なご意見。『復讐屋シリーズでは一番気に入りました』というのは、純粋に嬉しいと感じるだけでなく、「最後に一番美味しいものを食べてもらえた」というような、ホッとした気持ちにもなりました。一読者の個人的感性として済ませるのではなく、どうして『一番』と思っていただけたのか、作者目線でも再考してみたいと思います。
もちろん、理由の一つは『ターゲットが下衆なのが良かったです』というお言葉の通り、きちんと悪役が悪役であったこと、なのでしょう。このシリーズで大事なのは「しっかりとした悪役を描くこと」だと、改めて感じました。
また『表面からは分からない心の奥底に抱えているものが出てきたときの黒さ』というのも、嬉しいコメントです。なるべく人間の二面性を描きたい、と思っているシリーズですから。
裏稼業(1)を先に読破させていただき、引き続き(笑)
こちらも拝読させていただきました。
こちらは、チャート企画ではないのですが、折角なので感想を…(^^;)
(1)を読まなくても楽しめる内容ではあると思うのですが、
やはり(1)を先に読んでいたので、メインとなる裏稼業の皆さんのキャラが
掴みやすく、読みやすかったです。
多分、こっちを先に読んでいたらキョウの存在は「唐突」な上に、
何でこの子、ここに居るんだろう??と感じたかもしれません。
しかし、(1)を知っているので、
「あの4人」をもう「パーティ」と認識している為、違和感なく
楽しめました。
やっぱり、こっちが(2)で良いと思います。
個人的には、依頼人が生きているパターンも見てみたい気がします。
敵さんとしては(1)の方が素人でもわかりやすく「悪人」だった…と言うか、
フォローのしようが無いくらいの悪事だったのに対し、
(2)の悪人たちは小物臭がしました。(笑)
「命を弄ぶ」感が薄いと言うか(苦笑)保身に走る感じとか、
それはそれでいい味が出ていたと思います。
逆にちょっと驚いたのがあの新聞記者の女性が…
もっと性格悪い、えげつない感じにストーリーを引っ掻き回したり
下手したら裏稼業まで嗅ぎ付ける系のキャラかと思いきや、
想定外にイイ人でビックリしました。(苦笑)
個人的な感覚ですが、この裏稼業シリーズは基本的に
「ダウナー」傾向の作品だと思います。
(最近の「なろう」系はある意味アッパー系だと思っています。
ダメな主人公が成り上がって行く方向性です。それの真逆だと思います。)
理由は、依頼人が恨みを抱くまでの過程がとても丁寧に
そして、ほぼ時間系列順に描かれているからです。
そうしますと、人によっては「そこまで恨みを募らせる前段階で
主人公たちが何とか手助けしてあげられなかったのかな…?」と
感じる可能性も少しあります。
※これは、一読者として自分がそう言う性格だからかもしれません。
結局「恨みを晴らす」のが主人公たちの行動理由なので、
「恨みを募らせている」段階では動けないのかもしれないのですが、
その段階でもっと動いていれば、ここまでの悲劇は防げたのでは…?
と感じるため、読後感の後味は「すっきり」とまでは行きません。
一応、恨みは晴らされたんだけど、結局救われないなぁ…と言う
印象が拭い去れない感じです。
この辺りの感覚は好みの問題だと思います。
技巧レベルですと、普段自分が読まない方向性(ダウナー系は特に苦手)にも
かかわらず、結局するする読めちゃった(笑)ので、とても高いと思います。
主人公が何でもかんでも解決してみんな幸せ、はいスッキリ~!みたいな
「頭の悪い感じに一辺倒」なストーリーが苦手なタイプの方でも楽しめると思います!
ありがとうございました!
作者からの返信
伊坂 枕様、コメントありがとうございます。
最初だけでも読んでもらえたらいいなあ、と思っていたら、何と最後まで! しかも、こんなに細かい感想まで! 本当に感謝しています。
>個人的な感覚ですが、この裏稼業シリーズは基本的に
>「ダウナー」傾向の作品だと思います。
私は元々「副業では前世の経験を活かして評価されていたけれど、本業の冒険者としては大したことないと思われていた主人公が、仲間を増やしたり冒険の旅に出たりして、ついには魔王討伐を成し遂げる」という作品(『「ウイルスって何ですか?」――ウイルス研究者の異世界冒険記――』)を書いており、特に当時は、それをライフワークにするくらいの心算でいました(現在は第三章の途中で一時停止しており、カクヨム版では、一人目の魔王を倒した第二章までで完結としましたが)。
でも、その『ウイ何』では「敵モンスターは死ぬけれど、人間は死なない」という作風を作り上げてしまい「これはこれでヌルい世界観だなあ」と思っていたところで、裏稼業シリーズを思いついて、書き始めました。『ウイ何』で設定した魔法や地理などをそのまま利用して(あわよくば『ウイ何』へも読者を引っ張り込もうと考えて)、時代設定だけを変えて「ちょっと暗めの異世界ファンタジー」という意識で書き始めたのです。ただし自分では「コミカルな描写もあるから、ダークファンタジーとも違うような……?」と少し腑に落ちない感もあったのですが……。
今回いただいたコメントを見て「なるほど」と思えました。ダウナー系。この言葉で、うまく言い表わせるのですね。アッパー系の『ダメな主人公が成り上がって行く方向性』という説明は、自分では対照的と思っていた『ウイ何』に当てはまりそうですし。
>そうしますと、人によっては「そこまで恨みを募らせる前段階で
>主人公たちが何とか手助けしてあげられなかったのかな…?」と
>感じる可能性も少しあります。
これは一作目でも二作目でも、書いている私自身、何度も思ったことです。だから一作目では主人公であるピペタ自身が後悔する描写を取り入れたくらいです。さすがにそれは言い訳臭かったかな、と今回は控えめにしたつもりでしたが、「いったん四人で集まっておきながら『まだ裏の仕事にはできない』と判断する場面」があった二作目こそ、四人が深く後悔する描写が必要だったのかもしれません(今から書き加えられないか、ちょっと考えてみます)。
必殺シリーズのテレビドラマを見たり、小説の『仕掛人』を読んだりした時は気づかなかったのですが……。こういう作品の主人公チームって、ある意味、連続殺人事件ものミステリに出てくる探偵役と同じなのですね。「終わってから解決するくらいなら、それができる力があるなら、途中で止めろよ!」と読者からツッコミを食らってもおかしくない存在。そうした『ツッコミ』が出てこないようにするのも作者の腕次第でしょうから、今後このシリーズを書く時の課題の一つです。
>一応、恨みは晴らされたんだけど、結局救われないなぁ…と言う
>印象が拭い去れない感じです。
主人公チームが正義の味方ではなく、その世界における法律を破っている存在である以上、勧善懲悪ものであってはいけないタイプの物語だと思って書いています。だから虚しさとか寂寥感とか、そんな読後感は、ある意味、計算通りなのですが、問題は「それでエンタメ作品として成り立つかどうか」というところですね。読者が満足できるカタルシスがないと、エンタメとして成立しない。そもそも、途中で「この作品、もう読みたくない!」と思われてしまう。
>普段自分が読まない方向性(ダウナー系は特に苦手)にもかかわらず、
>結局するする読めちゃった(笑)
とおっしゃっていただけたので、ある程度「最後まで読んでもらう」力はあったということで、そこは嬉しく思っています。だから「最後まで読んでもらった上で、満足してもらう」までには、あと一歩、何かが足りないのだろう、と。そこを考えていきたいと思います。
>依頼人が恨みを抱くまでの過程がとても丁寧に
>そして、ほぼ時間系列順に描かれている
これは「この作品、実は発想段階では、裏稼業シリーズではなかった」ということと関連していると思うので、少し、その事情を。
作中の一話の『日本』の場面で出てきた心霊番組、あんな感じのものを見て「肝試しで呪われるパターン。肝試しの発案者ではなく、嫌々同行した方が呪い殺される話も多いけど……。その場合、遺族は呪いそのものよりも肝試しの発案者を恨みそうだなあ」と思ったのが、そもそものきっかけでした。
そこで『遺族』視点のホラーを書こうと思ったのですが「この遺族感情、理解はされても共感されないのではないか。主役には向いていないのではないか」と考えて……。「裏稼業シリーズにしてしまえば、少しだけ『主役』からずらせて、しかも『恨み』を描ける」ということで、プロットを組んで書き始めたのです(プロットを組んだ段階でも『遺族』の『恨み』だけでは『肝試しの発案者』が殺される理由にしては薄いと感じました。そこで、新聞記者の存在などを加えました)。
だから、いただいた感想(特に『丁寧に』というお言葉)を目にして「書きたかったものが、きちんと伝わった」という気持ちと「でも、それが作品としてはプラスにならなかった」という気持ちで、悲喜こもごもです。
>敵さんとしては(1)の方が素人でもわかりやすく「悪人」だった…と言うか、
>フォローのしようが無いくらいの悪事だったのに対し、
>(2)の悪人たちは小物臭がしました。(笑)
これは少し意外な感想でした。言われてみれば、確かに二作目の悪役の方が小物で、悪事のスケール自体は小さい。でも、その『悪』の度合いは一作目以上だと思っていたからです。
一作目の悪人は、罪こそ償っていないものの、放っておけばこれ以上悪事をする気は無かったのに対し、今回の悪人たちは独自の『価値観』があるので、今後も庶民の命を軽視するような連中。そこを色々と描写したつもりでしたが……。
今にして思えば、これ「長々と説明するよりも、短く雰囲気で語った方が読者には『伝わる』」という、物語の基本(頭ではわかっちゃいるが実践は難しい)の、一例だったのかもしれません。これも、良い勉強になりました。
>こっちを先に読んでいたらキョウの存在は「唐突」な上に、
>何でこの子、ここに居るんだろう??と感じたかもしれません。
これも、シリーズの課題の一つです。別の世界の人間である以上、物語に絡めにくくて……。一作目は「少ない出番だからこそ」みたいな部分もあったと思うのですが、二作目では、本当に困りました。
今後キョウ(ケン)をメインにした物語として「一作目で言及した二大宗教の設定の中で『巫女』という言葉を出している。ならば巫女の神託みたいな形で『別の世界』の様子が夢に出てくる、というゲストヒロインはどうだろう? そのゲストヒロインが夢の内容を占い師ゲルエイに相談する。ゲルエイは『これはケンの世界では?』とピンときて、彼を召喚する……」というような構想もあるのですが、こうやって状況を整えてやらないと物語に関われないのでは、キャラ設定に無理があったのではないか。少し反省しています。
以上、申し訳ないほど長くなりました。
こうやって色々と考えさせられる感想。今後の作品執筆にも参考になるので、本当にありがとうございました!
読了致しましたので感想を。
普通に必殺してる内容で良かったです。
(1)は復帰話だから、やや変則的でしたし。
誰が仕置対象で、誰が依頼人なのかと考えを巡らせてしまう展開も面白かった。
ニュース屋さん、最初彼女が黒幕で、仕置対象になる展開も想像してましたが、最終的に「彼女は真のジャーナリスト魂を持った人間だった」と分かる展開が熱かったです。
疑いを持った分、余計に。(スマンカッタ!)
前の感想でも言いましたけど、今回の標的は内面の描写シーンが長かったので、どれだけ思い上がってて、どれだけ許せない奴なのかがしっかり伝わって来たのが好印象。
仕置シーンで「こいつだけは許してはいけないよな」って思わせてこそですからね。
標的の行動、心の動きで特に面白かったのは、少年たち3人がアリカムの指導の下、外道に「開花」するシーンでしょうか。
あそこで「ああ、もうお前ら地獄行きしか道は無いよ」って思ってしまうのが良かったです。
読者が彼らに匙を投げる展開。
仕置されるシーンでひとり命乞いしてましたが「見苦しい」の一言ですわ。
外道に堕ちたんだから、もうその運命は変えられないっての。
作者からの返信
山川海のすけ様、コメントありがとうございます。レビューもありがとうございました。
自分でも1作目はシリーズ第1話独特の変則要素があったと思うので、こちらの方が基本に則っていた、というのは納得です。読者と作者の見方が一致したみたいで嬉しいです。
こういう物語は、早い段階で「こいつが仕置対象」というのを見せておいた方読者が安心できる、みたいな感想を(シリーズのどこかで)以前にいただいたことがあります。それはそれで私も同意できるのですが、作者としては、同時に「完全に分かってしまうと面白くない。少しは意外性も含ませたい」とも思ってしまいます。その点、この作品ではニュース屋が「仕置対象側か? 犠牲者側か?」という思わせぶりなキャラですからね。以前にも「疑っていました、ごめんなさい」みたいな感想をいただきましたし、私の想定以上に良い感じの『思わせぶりなキャラ』になってくれました。
時代劇の必殺を見ていると、私は時々、仕置対象の一人を「仕事人チームの人数に応じた、数合わせ」みたいに感じて、「あれ? 話の都合で仕置対象になっている?」と思う時がありました。だから自分で書いていて「殺されて当然の悪役が殺される」というのは貫きたかったですし、シリーズの中でもこの作品は、特にそうだったと思います。大人たち三人もそうですが、特に子供たち三人。主人公側が子供を殺す話になるので、特に気を使いました。その辺りを『外道に「開花」するシーン』として評価されたのが、とても嬉しいです。これも必殺好きならではの感想だろう、と感じました。