第5話 テスト中こそ眠りたい!

「はい、それでは始めてください」


 見覚えのない中年女教師がそう宣言すると、教室で紙を裏返して名前を記載する鉛筆……は少数だけれど、名前を一斉に書き出した。

 今日は殆どの学生が嫌がる定期テストの日。

 だけど私はそうではない日。


(早く終わらせて寝よう……)


 そう、この日に関しては教室で寝ていてもテストが終われば眠っていても怒られない日なのだ。

 私は普段の授業では寝ていないし、その授業内容とほんの少しの復習だけでテストで悪い点数を取ったことはない。


(とは言っても中学生になって初めてのテストだし、授業を聞いていれば大丈夫だろうけれど安心して寝るためにちゃんと答えないと……)


 100点。

 なんてことは望まないけれど、少なくとも80点はキープしておきたいので問題文をよく読み解いてから答案を埋めていく。


(うん、これなら大丈夫……そういえば、佐香子ちゃん大丈夫かな)


 佐香子ちゃんはそれほど……いや、かなり座学は苦手だし、もしかして最初から寝ているなんてことは流石に……。


「うにゃぁ……おにくらー……」


 教室内に佐香子ちゃんの寝言が聞こえた。

 ダメ、みたいだね……まぁ先生も佐香子ちゃんのところにすごい笑顔で近づいていってるし、起こされることだろう。

 それよりも最後の問題を解いて早く眠りたい…………。

 許されるのなら退室してベンチか保健室のベッドで…………。


 …………………そして、私が次に聞いた音は、チャイムの音だった。


「……最後の問題、解けてない」


 なぜ先生は私を起こそうとしなかったのだろうか。

 ふと気になって答案を集めて教室を出ていこうとしている先生に聞きに行くと。


「え、だってあなたは殆ど解答していたでしょ?ごめんなさい、私はてっきり最後の問題が読書感想文になってたから諦めたのかと思っちゃったの」

「…………次は起こしてください」

「ねむりんが起こしてだって!?ど、どうしちゃったの……頭打っちゃった?」


 モモちゃんに最後の問題を読み込んでる最中に寝てしまったことを説明するのに、休み時間いっぱいかかった。

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 小清水さんは眠りたい 水森錬 @Ren_Minamori

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