45話 地獄の果ての荒野
老兵は、なぜ、いまだに戦場に立ち続けているのか――。
相手がヒトであった頃から、その身は血に塗れ続けてきた。
矛を収める機会は幾らでもあっただろう。幾ら武勇に秀でても、老いには勝てない。無茶をして仕切れるだけの肉体ではもうない。だと言うのに………。
崩れ掛けの長屋の連なり。その道を
貫通はしない。ただ、その硬質の皮膚を撃って打たれた
刃が舞う―――
瞬く間。
血の雨が降り注ぎ、
老いた体に連戦は辛い。乾坤一擲の、ただの一部隊。それを見送ってからどの程度経ったか。
終わりの見えない戦場だ。
送った部隊の安否も正否も知る由はない。
わかることは、この基地の状況。
備蓄の底が見えてきた。3日は楽観的な予測だったか―――疲労がかさめば無駄弾も増える。
昼夜問わぬ戦争。
目覚めた時に目の前に竜がいる可能性が脳裏を過ぎれば、たとえ休ませようとも緩みきれるものではない。
皆、疲れている。疲れ切っている―――だからこそ
前時代的な士気高揚―――それもまた当然の話。老兵は老兵、前時代の遺物。
次は育ててある。将羅を欠いたとして、この防陣はその頭脳を失わない、そうなるように任せておいた。輪洞がどうにでもする。リチャードは補佐するだろう。
さればこそここで擦り切れるも良し。己を使い捨てるも良し―――。
――だが、倒れるのはこの戦が済んだ後。
老兵が働いているのだ。その限り、若者がなぜ怠けられよう?
粉骨砕身。骨も身も砕け四肢諸々千切れ飛んだとしても尚、己はこの場に立ち続けよう。
――息を整い終えると、将羅はまた、駆け出した。
将足るべく。
羅刹の如く。
手ずから
老兵に引き際は幾らでもあった。
ただ去るべきと、その先人列々の遺訓に倣う―――そんな性分ではない。
若者が命を賭けているのに、なぜ胡坐を掻いていられようか。
せめて、送り出した者達が帰りつくまでは―――。
老兵は戦場に立ち、異形の軍勢を凌ぎ続ける。
曇り空の下――。
*
異国の者は、なぜ、いまだ戦場に立ち続けているのか。
この国に生まれたわけでも無い。
故郷は別にある。ここに命を賭けずとも、どちらにせよ流れ者。また別に流れてしまっても良い。だと言うのに……。
帝国軍第3基地。
夥しく地面を覆い隠す竜の最中、部隊があった。
100人にも満たない、簡易的な防衛陣に守られた、そんな部隊。
設置当初よりも、その防衛陣は狭まっている。外縁で銃を構える者は、皆、傷を負っている。
傷を負いながらも怯むことなく、迫る竜へと弾丸を放ち続ける―――。
それに守られながら、どうにか、その被害を食い止めようと、アイリスは生まれもった力を振るい続けていた。
異能力。
この戦場で、あるいはただ一人、傷を負っていない女―――。
守られている。だから、守らなければならない。頭にあるのはそれだけだった。
どこか無垢に、深く腹を探り合うこともなく―――ただこの一瞬に生きる。
杭は踊っていた。戦場を返り血で染め上げながら、他の誰にも出来ないような速度で、竜を殲滅し続ける。
どれだけ、そうし続けたのか――もう、時間の感覚はない。何日も経ったような気もするし、たっだ数分だったような気もする。
ただ、疲労を重ねながら、それでも手を休めることなく――アイリスは周囲を殲滅していく。
飽きるまでもつなんて、ただの強がりだ。事実、もたなかったから、防衛陣が縮小されている。倒れた仲間もいる。
だが、それでも、たとえ永遠でなくても可能な限り長く―――。
ここで竜を減らして、脅威であり続ける限り、遠く基地、仮住まいが、あるいは竜の巣の奥深くにもぐった二人の負担が軽くなるはずだから。
不意に――視界の一角に、黒い竜が見えた。
それは、アイリスへと、背にある杭―――銃口を向けている。
流石に、アイリスが邪魔だと竜も気付くらしい。スコアでいえば対面の死屍累々、その6割以上、アイリス一人で食い殺している。
アイリスへと、杭が放たれる―――自身に迫るそれを、アイリスは無視した。
代わりに、自身も、杭を一つ、黒い竜へと向け、躍らせる。
かわせないわけではない。ただ、かわすくらいならカウンターで殺した方が早い。
……そう言う場所に、アイリスはいる。
「うおおおおおおお、」
気合の声を上げているのは、イワンだ。もうガトリングガンを撃ち切って、それを捨てて、代わりとばかりに、破棄した簡易防衛陣にあった金属製のプレートを持っている。
アイリスへと杭が迫る――その視界を、ドワーフが、その手の金属製のプレートが覆い―――派手な金属音が鳴り響いた。
飛来した杭が彼方に飛び去っていく――。
目の前から、金属製のプレートが消える。
その陰の向こう。黒い竜は、アイリスの操る杭で、その首を落とされていた――。
そこに注意を向けすぎることなく、アイリスは即座に、また雑魚の処理に集中する。
「おら!おっさんの頑丈さ舐めんな!」
横でイワンが吼えていた。衝撃でへこんだ金属製のプレートを抱えて、転びながら。
つい、アイリスは笑う。
「……おっさんじゃなくてプレートでしょ、」
「ああ?ありがとうぐらい言えねえのか?」
「後でまとめて言うわ。……足りないもの」
この場で、唯一。
アイリスだけが完全に守られている。一切、防御にも回避にも意識を裂かなくて良い立場にある。
今、イワンがしたように。あるいは他の誰かがするように、脅威を排除してもらえる。
だから、アイリスだけがこの場所で無傷だ。
だから、アイリスは攻撃に意識を集中しなければならない。
アイリスが殲滅した分だけ、味方の負担が減る。
永遠には、もたないだろう。だが、もたないと言う訳には行かない。
せめて、<ゲート>が破壊されるまで。
味方に頼り、味方に頼られた上で……。
勝つまで、耐え続ける。勝つまで、竜にとっての、邪魔モノで居続ける―――。
その為に、アイリスは、あるいは他の誰もが、この場所に来たのだ。
オニが刀を振るう。
エルフが火器で、撃ち殺す。
ドワーフが重火器で、プレートで足止めを続ける。
青い
それをどれだけ続けても、死骸の山を踏み越えて、竜は次々襲い来る―――。
終わりのない戦闘だとしても、それは、無意味な戦闘ではない。
愛着を持った場所の為に命を賭ける。
愛着を持った者の為に命を賭ける。
流れ者が命を賭ける理由はそれだ。ただ、愛着がある。
彼らが、そこで、踏ん張らなければ。
そこにいる竜の全てが、他に向いていたら―――全ては、もう終わっていたかもしれない。
竜の軍勢はまだまだ、絨毯のよう。
そんな基地、竜の絨毯の一角にある、大穴。
その、深く暗い洞穴の奥深く――。
*
派手な女は、なぜ、いまだ戦場に立ち続けているのか――。
その身は傷だらけだ。纏う赤はもはや羽織の染め色ではなく明確な命の雫。足に傷を負った時点で退いて良かった。いや、あるいは、足手まといになる可能性を考慮すれば、退くべきですらあっただろう。だと言うのに………。
洞穴、輝く竜の巣の奥で血染めの鬼が、暴れていた。
暴れるごとに血が流れる。竜の血、鬼の血、交じり合って宙に浮くそれを鬼の舞踊が切って散らす――。
傷があるままに、扇奈は太刀を手に、竜のただ中へと突っ込んでいる。
足の痛み。身体中の痛み。それを考える余裕は、もうない。
ただ、竜を殺す。
ここで足掻いた分だけ、ここで殺して、通せんぼしている分だけ、鋼也を追うトカゲの数を減らせるはずだ。それだけがわかっていれば十分―――。
尾が迫る。
牙が迫る。
爪が迫る。
杭が迫る。
刃が迫る。
輝く洞窟に血の匂いが蔓延し、自分のモノと竜のモノ、それらで身体を真っ赤に染めながら、
「ハハ、」
―――鬼は、嗤う。
何がそんなに嬉しいのかと、そんな事を考える余裕も無い。
いや、別に嬉しいわけでも無いだろう。
「ハハハハハハハハハハハハハハ、」
嗤いでもしなければやっていられない。タガを外していかなければ、もう身体はまともに動かない。
何を切って何に切られているのかもわからない。
次の瞬間、自分が生きているのかどうかもわからない。
いや、今この瞬間、自分が生きているかどうかすら―――。
それでも、竜の巣窟で、派手な鬼は暴れまわる。
自分が暴れた分だけ、味方の負担が減る。ここで踏ん張っていれば、鋼也を追い掛ける竜はいない。それだけを想って―――。
場所は違えど、死なないため。
死なせない為に―――
不意に、扇奈の、足が止まった。
崩れるように、その膝が意図せぬタイミングで折れ曲がる――竜の、ただ中で。
「……ッ、」
立て直す暇は、なかった。
方々から、牙が爪が尾が――――。
それを、扇奈は、見ていた。
単眼。
そこに映る
だから、鬼の
剣閃は血を引き、扇の如く、華やかに破滅的に。
派手な鬼は、命がけの舞台で、舞い踊り続ける。
贖罪愛着責務信頼親愛恋慕悔恨懺悔…………悉く。
―――還す先は戦場にある。
だから、派手な背中は死を眼前に、守り続ける。
その、血染めの艶やかな背の、その更に奥―――。
*
俺は、なぜ、いまだに戦場に立ち続けているのか――。
なんて、今更カッコ付ける気なんて更々ない。
俺がこの道を選んだ。
だから俺は
それ以外の
「―――ああああああああああああああああああああああああああッ!」
迫る杭を叩き伏せる間に側面からの攻撃が俺を裂くがその間にその単眼をぶん殴って叩き潰し殺しその死骸を掴んで振り回し放り投げその陰から突っ込んできた奴を蹴って殴って切って刺して切って切って切って。
――コワイ、
野太刀で2、3匹同時にぶった切りその間に杭を喰らうがそれを抜いて手近な奴に付きたててその後踏み殺した上でその死骸を踏み越えて襲ってきた奴の単眼に手を突っ込んでぐちゃぐちゃにかき回しながら振り回し死体だかまだ生きてるんだか良くわからない
――コワイ、
踏み殺した黒い竜を別の黒い竜が踏み殺し近付いてきた瞬間に単眼に刃を突き刺して奥の奴ごとまとめてぶっ殺したまま力付くでその野太刀を振り回し死骸をふっとばしながらその横にいる
――コワイ、
レーダーは真っ赤。視界は真っ黒。真っ黒いトカゲの群れに俺のだかトカゲのだかもはやわかりもしない血が降りかかり続ける――。
地獄だろう。だが、わかっていて踏み込んだ地獄だ。
コワイコワイコワイ―――竜が馬鹿みたいに呻き続けている。
ああ、怖いだろう?俺もイカレてるからな!
「ああああああああああああああああああああああああああああああッ!」
人間離れした咆哮を上げカラダのタガと精神のタガを外しただひたすら暴れ続ける――。
後何匹いるのか――そんな事を考える暇はない。いるだけ全部殺せば良い。
――コワイ
まとまって動く数匹が俺の側面死角側に周りコワイその背の杭を一斉に俺へと放つと同時に背後にコワイ回りこんだ別のトカゲが刃を振りかざし背中から俺へと切りかかって来るがその全てが俺には攻撃するタイミングのずれまでコワイ完璧に知覚できるコンマ数秒の着弾のズレと刃の一撃のズレからカラダが勝手にコワイ冷静に対処順を決め即死しない分は無視して頭を下げ刃をかわしその辺に居たクソ野郎を掴んで即死する杭に投げて防ぎコワイ防ぎきれなかった分胴に一発杭は喰らったが残った一発が背後のクソに当たり自滅かよざまあねえなんて考える間に手近な黒い竜を叩き殺し切り殺しコワイその間に間を詰めて来た一匹に肘うちして転ばせてコワイ踏んで踏み殺した勢いのままさっき俺の胴にクソ突き立てやがったクソへと駆け出してその道中に立ちはだかるのかコワイ逃げるのかわからない動きをする奴もついでに殺し殺し殺しどれ狙ってたんだがわかんなくなったがどうせ全部クソだからどれ殺しても大差ないコワイ全部殺す野太刀を振り回すコワイ流石に血で鈍ったのか切ってる途中で野太刀が死体にめり込んで進まなくなりその間に手近な奴が杭を一発コワイ致命傷を避けながら装甲が裂けながらまだしぶとくコワイ無事に俺の肩からぶら下がってる玩具を掴んでぶっ放して再装填の間に手放し近い奴を蹴って体当たりして殴って強引に作った一瞬の間にまた俺に杭が突き刺さったが俺は無視して野太刀を引き抜き終わりまたそこら中のクソを切って切って切って切って切って――。
――コワイ!
クソの動きが変わる乱雑にばらばらに迫ってくるだけだったクソが隊列を組んでコワイ!ご立派に鶴翼で俺を包囲する前線が居てその後方に杭が杭が杭がコワイ!杭が杭が杭が杭が全部まとまって一斉に来るがその包囲陣に俺の方から突っ込んでやればコワイ!致命傷分は前に出てるトカゲの背中に当たってコワイ!だの喚いてるそれを体当たりでとばしながら包囲してる奴は無視してコワイ!どうせ装甲を掠める程度の当たり方しかしない分の刃は完全に無視して後方で杭撃ってご丁寧にリロード中の奴らを食い破って食い殺して切って撃って切って殴って踏んで陣形が完全な包囲で全方位から杭を撃とうとしてやがるコワイ!クソ共が視界全部空間全部から杭が俺を殺そうとしてくるが脳がイカレテル俺はコワイ!その全ての軌道を理解し全部交わすのは無理でも生きるだけなら野太刀を振るいながらその辺で死んでる黒い竜の尾を振り回しコワイ!その尾ではたき落とし野太刀で切ってその身体で受け何発か喰らうか掠めるか死ながら一番近くに居たクソ野郎へと突っ込んでぶっ殺す切って踏んで殴って叩き潰して――
――コワイ、
学習能力のないクソ共はコワイ、懲りずにまた陣形を組もうとするがおい逃げようとしてねえかその端のコワイ、奴テメエだよ今踏み殺した死んだオマエだいや今俺の手で気色悪い棍棒みたいになってる奴かコワイ、見分けがつかねぇんだよもうどいつも同じ色で同じ顔しやがって全部殺すから関係ねえなコワイ、また逃げようとしてる奴がいる統率が乱れかけてるのかなら逃げてる奴から殺そうコワイ、ってまともぶりたいオレがこの期に及んで戦術的に冷静で冷徹にそういう奴を殺すたびに逃げる奴がコワイ、増えていくがどっちにしろ全部殺す―――。
コワイ、
コワイ!
コワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイ!
コワイコワイコワイ逃げてくるトカゲを追って切りコワイコワイコワイ踏んで殴って殺してコワイコワイコワイ何匹か逆切れしたのか
「コワイ、」
―――叩き切る。
「コワイ、」
―――踏み殺す。
「コワイ、」
―――殴り殺す。
「コワイ、」
―――距離を詰める。
「コワイ、」
―――叩き切る。
「コワイ、」
―――次を探す。
「コワイ、」
―――見つけて、追って、
「コワイ、」
―――殺す。
「…………、」
―――突っ立ってる。
「…………、」
―――俺が、突っ立ってる事に気付いて、次を探す。
「…………、」
―――頭が回らない。イカレたのか視界が真っ赤だなんで半分見えないんだ?
「…………、」
―――竜がいない死体しかない何処だここは良くわからないが、真っ赤だ。
「…………、」
―――頭が、回らない。何を、してるんだ俺は。
「…………、」
―――見回す。眩しい。なんかある。デカイ。キモい。生首生えてる。ああ、
「………コワイ、」
―――なんか喋ってるか?幻聴、か。イカレてんな。とりあえずあそこは届かないから杭を………。トバねえ。遂に壊れたか?
「コワイコワイ、」
―――弾切れ、か。なんで、……この玩具、俺よりもつんだ?俺は、もう、いや、とりあえず補充。すぐ傍に落ちてる。なんかに突き刺さってるが、
「……オマエ、コワイ………」
―――ガチャン。リロードは、出来た。後は撃てば良い。
右腕を上げる――億劫だな。頭が回らないし手が震える。血が、流れ………。
……まだ動くだろう?ここまで来たんだ。終わりにしよう。何しに、……そうだ。ぶっ壊して帰るんだ。その前に。
「コワイ……コワイ、オマエガ、コワイ………」
生首が喋ってる。逃げないのか?瞬間移動で。……逃げられないのか。くっ付いてるもんな。その、気色悪い……<ゲート>に。
今更、言葉を覚えたのか。
最初から人間に興味持ってたよな、アイツ。アプローチが頭おかしいだけで。最初に言葉覚えりゃ良かったのに。
けど、だからって、見逃すわけにもいかない。
トカゲにする同情も無い。そんなにコワイなら、コワイのがいない場所に逝け。
「じゃあな、」
トリガーを、引く。放つ。飛んで行く。スカした生首はもうスカしたような表情なんて浮かべず明確に恐れてたが。もう遅いんだ。俺は正義の味方じゃない。俺の敵からすれば、俺は悪でしかない。オマエもそうだ。もう消えろ。
杭が突き刺さる。生首が、崩れる。目から杭を生やして。
「……あの世で、別の奴と、まともに遊べよ」
俺は、なんか、言った。なんて言った?わからない。
…………静かになった。息をつく。緊張感が、俺の身体、張り詰めてた、糸が、切れたような気分だ。
眠いな………それから、寒い。
まだ冬だったか?どうでも良いな。さて、で?何をするんだ?何しに来た。寒い。
ああ、<ゲート>だ。怖さないと。コワして、待ってる、言われた。雪でも降ってるのか。チカチカして、寒い。
………頭が回らない。出血。まだだ。まだ。まだ、なにか……そうだ。玩具を作った奴が、爆弾。そう、設置しないと。その為に。それをおけば。
背中。爆弾。設置式。下ろす。形は残ってる。俺は、これも庇ってたのか?庇ってたよな。よくやった俺。後は、これを、置けば……どう、起爆するんだ?そう、コンソールが……。
……コンソールに、ヒビ。洒落たデザインだな、クソ野郎。俺は庇ってたはずだ。爆弾、動かない。なぜ?いつ?背中。杭が刺さったのでも刃でも尾でも牙でも無い。刺さっているのは、金属片。
………背中で爆発が起こった事があったな。有爆しなくて良かったとか、楽観、して。
あの野郎なんていった?あの狂った野郎。最後まで、遊び半分で………クソ。
本当に、動かないのか?……………最悪だ。悪い夢だな。ここまで来て?
…………寒い。雪でも降ってるんじゃないか?やたら眩しい……ああ、眩しいのはあの、死んだトカゲの首が生えてるアレだ。クソ、まだ。
……俺は、道化だな。
ここまで来て逃げ帰るか?
いや、そんな事は、出来ない。
一人で、来たわけじゃない。居場所だった場所の為に。仲間と来た。それを、無駄には……。
死にたくない。生き残りたい。寒い。寒い。寒い……。
前、そうやって、
爆弾はある。この、鎧に。動力源。自爆できる。それで、やれば良い。
死にたくない。死にたくない。死にたくない。
自爆。操作。時限。黒い、鎧の、はらわたに、手を突っ込むように、操作。
問題ない。竜は、例え今、あの光ってるのから出て来ても、物は狙わない。中に居る人間を狙う。知性体、命じる奴は、殺してある。あの狂った奴、イカレの時、竜、俺とイカレ野郎だけを、鎧は無視した。自爆装置を、起爆して、時限で、脱いで、歩いて、出て行けば……それで、
手が震える。寒い、寒い、凍えるようだ。
雪玉。……寒い。暖。オカシイ。壁の穴は、塞いだよな。ハ、穴が開いてるのは俺の身体か?なんか、目の前で数字が、動いてる。なんだ、これ。
寒い。寒い。寒いな。雪が見える気がする。
雪玉をぶつけて。寒い寒い、笑いながら。
かえって、暖をとろう。いや、そういう意味で言ったわけじゃない。
「からかうな、桜……」
眠い。寒い。……俺は今、何処に……桜は?何処に?
全部、夢か。何処までが夢で、何処からが現実だ?
わからない。眠い。瞼が、頭が………。
「待ってろ、」
帰ろう。帰りたい。……何処に、俺は………暖かい、夢の、中へ、…………。
→ 裏演謳歌V アンコール―あの日々の続きを願い―
https://kakuyomu.jp/works/1177354054890150957/episodes/1177354054892461709
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