あたたかな空気から徐々に徐々に、なにかがズレていく不穏な気配。そのズレが反転したとき、どうしようもなく歪んでしまった狂気の底に横たわる深い悲しみが見えてくる。救われない世界に流れるやさしい狂気。言葉にしがたい余韻が胸にしみます。
願いの有無が人生を左右する世界。願いを捨てたもの達の行き着く先スラムには、王がいた。これは彼を中心に、沢山の人々の願いを描く物語。王の狂気、側近の思惑、様々な願いが複雑に絡み合い、読み応えのあるダークファンタジーを作り上げています。どのキャラクターも目を離し難い魅力があり、彼らの描く人間ドラマと仄暗く独創的な世界観が本作の魅力かと感じます。きっと貴方にもお気に入りのキャラクターが見つかることでしょう。