文学少年(変態さん)は世界最恐!? 〜明らかにハズレの【書誌学】、【異食】、にーとと意味不明な【魔術文化学概論】を押し付けられて異世界召喚された筈なのに気づいたら厄災扱いされていました〜
訪れるヴァパリアからの使者、そして始まる最終戦争-Ragnarøk- 後篇
訪れるヴァパリアからの使者、そして始まる最終戦争-Ragnarøk- 後篇
異世界生活百七十日目 場所ミンティス教国、聖都、新神殿宮
「てっきりフルゴル・エクエス辺りを使者として連れてくると思ったんだけどな。まあ、歓迎したくはねえが、遠路遥々ようこそ、とだけ言っておくよ。ティンダロスの者共」
さて、団体様のお着きだが……こんなに人数必要だっただろうか? もっと少なくても問題なくね?
『我らを知っているのか? そもそも我らを見て発狂しないとは……どうやら只者ではないらしいな。……時を超えた形跡がある。この世界ではさほど珍しいことでもないし、我らもこの世界の曲線の時間の持ち主達に攻撃しようとは思っていない。この世界は我々にとっても異郷だからな。我々に不浄の全てを押し付けたニンゲンの……いや、全ての生物の祖とこの世界の者達は無関係。故に、我らの中でも知恵を持つ者達は滅多矢鱈にニンゲンを襲わない者だ。まあ、中には野生化した者達もいるし、我らも【外なる神の忘れ形見】が命ずるのであればニンゲンにも危害を加える。…………ん!? ……貴様、一体何なんだ!? あり得ん! そんな馬鹿な! 神という共通属性による量子共振、その同調状態における因果律への限定干渉を可能とする神殺しの力!! そんな都合のいい力を持つ者だと!!』
どうやら、ティンダロスの王たるミゼーアも気づいたようだな。ムイスラの方はミゼーアに言われて改めて見て気づいたってことか。
「そういえば、ティンダロスの王は外なる神ではない存在でありながら、外なる神に分類されるほどの強大な力を持つ存在だったな。複数体いればヨグ=ソートスにすら匹敵するというようだが…………そもそも、高がヨグ=ソートスに苦戦するようではマルドゥーク文明の【天壌典雅唯我獨尊】ギルガメッシュ=フェニュゴリュウェ大佐にすら劣るってことになる。まあ、正直ヨグ=ソートスよりもギルガメッシュの方が厄介だと思ったけどな。あの人、どっかの将軍サマみたいにしぶといし。……ああ、俺も本物とは戦ったことはないよ。だから、データはデータだって言いたい気持ちも分かるし、そう思うならそう思っていればいい。だが、マルドゥーク文明の情報は基本的に正確無比だ。俺は俺が戦ったデータはヨグ=ソートスそのものだと思っている。ああ、君達の祖とされるマイノグーラやシュブ=ニグラスとはデータとすら戦っていないが、正直勝てる自信はあるよ」
『随分自信があるようだが、その神殺しの力があるからと慢心していれば、思い掛けないところで殺されることになるぞ』
もしかして、祖先を馬鹿にしたのがまずかったかな。いや、本当のことを言っただけなんだけど。
「ああ、勘違いしないでもらいたい。神殺しは、ミゼーアさんとムイスラさんには効くが、【因果無効】に容易に無効化されるし、神に至っていない者には効果はない。まあ、流石に
原子核の混沌世界の究極的破壊エネルギーを右手で弄びながら不敵に笑みを浮かべる。
『『まさか!! そ、そんな訳がない!! 何故お前如きが創造主アザトースの力を使える!?』』
うーん、お前如きって馬鹿にされているよな。まあ、見た目も中身もモブキャラだし、その程度って言われるのも致し方無いんだろうけど。
「ああ、やっぱりこの力はアザトースの物なんだな。いや、スキルの説明には書いてあったけど、
『我らはナイアーラトテップ様のメッセンジャーだ。例え相手がアザトース様を超える力を持つ化け物でも、アザトース様と相対して存在そのものを抹消される程度の存在であろうと、我らが手を下すことはない。だが、本音としては我らはお前とは相対したくないな。……これがヴァパリア黎明結社七賢会議からの書状だ。ここに、お前の言う
「おう、わざわざすまねえな。……了解した。やっぱり島か」
ヴァパリア黎明結社の各部門のビルが立ち並ぶヴダーローゥア島よりも更に南東方向に進んだ場所……えっと、ラグナ・ヴァルタ島? ここが
「それじゃあ、手土産無しに帰らせるってのは申し訳ないし、ちょっと待っててくれ」
【虚空ト異界ヲ統ベル創造ト破壊之究極神】を発動し、ミスリルを素材に一枚のディスクを作成。【才能ト譲渡之神】で【這いよる混沌】をディスクに譲渡する。
「よしよし。ゲレゲレ、このディスクをご主人様に届けてくれないか?」
【虚空ト異界ヲ統ベル創造ト破壊之究極神】で作り出したポシェットにディスクを入れ、ザ・バトルドッグ・オブ・ティンダロスに成長したゲレゲレを撫でてポシェットを掛けた。
戸惑うゲレゲレに、俺は少し考え、言葉を掛けた。この子は、
「ゲレゲレ、ダニッシュさんのことは本当に残念だった。まあ、敵対していた俺があの人のことを語るべきではないと思うかもしれないけどな。それに、俺はお前から二人目のご主人様を奪おうとしている」
「――クゥン?」
「でもな、俺達はそれぞれ自分の信じるものを貫こうとして戦っているんだ。ダニッシュさんだって、ナイアーラトテップだってな。あの人は類稀な立派な人だったよ。敵じゃなければきっと友人になれたと思う……いや、俺はモブキャラだし、対等にはなれないか。……俺はナイアーラトテップと、ヴァパリア黎明結社と戦う。勿論、勝つつもりだ。その戦いをお前がどう思うか、何を選ぶかはお前次第だし、俺を倒しに来るというならそれでも構わない。全力で相手をする」
「……クゥン?」
「ただ、それだけを言いたかっただけだ。俺個人としては、お前が幸せに生きることを祈っているよ。ダニッシュもきっとそう望んでいる」
あくまで自己満足だ。ゲレゲレに伝わっていなくたって構わない。
俺とダニッシュは敵同士だった。そのように出会ってしまったが、ダニッシュはアルフレートやシャリスと同じくこの世界で出会った好感持てる人物の一人だった。
大切な人のためにエゴを貫き通す――その生き様にも憧れを抱いた。いや、眩し過ぎるか……所詮は自分のエゴのために生きる俺とは違う。アルフレート達と友人っていうのは烏滸がましいな。
「ってことで、メッセンジャーお疲れ様。もう帰っていいよ」
ティンダロスの者達は再び青黒い煙となって消えていく。仲間達が消えていく中、ゲレゲレが一瞬躊躇してこっちを見た気がしたけど、多分俺の願望が錯覚を見せただけだよな。
◆
【三人称視点】
「よしよし。ゲレゲレ、このディスクをご主人様に届けてくれないか?」
『よしよし。ゲレゲレ、いつも偉いぞ!』
誰かは知らない黒髪の冴えない少年。いつも頭を撫でてくれる大好きな……しかし、もうこの世にいないあの人には似ても似つかない。
でも、あの人の声が重なって聞こえたのは、撫でてくれる手の温もりがあの人と同じなのは何故だろう。
「ゲレゲレ、ダニッシュさんのことは本当に残念だった。まあ、敵対していた俺があの人のことを語るべきではないと思うかもしれないけどな。それに、俺はお前から二人目のご主人様を奪おうとしている」
ナイアーラトテップはゲレゲレにその少年が敵だと語った。でも、そうは見えない。
「でもな、俺達はそれぞれ自分の信じるものを貫こうとして戦っているんだ。ダニッシュさんだって、ナイアーラトテップだってな。あの人は類稀な立派な人だったよ。敵じゃなければきっと友人になれたと思う……いや、俺はモブキャラだし、対等にはなれないか。……俺はナイアーラトテップと、ヴァパリア黎明結社と戦う。勿論、勝つつもりだ。その戦いをお前がどう思うか、何を選ぶかはお前次第だし、俺を倒しに来るというならそれでも構わない。全力で相手をする」
見ず知らずの少年は、初対面なのにダニッシュとゲレゲレの関係を理解しているようだった。
ゲレゲレから大好きな人を奪ったことに罪悪感を抱いているようだった。
「ただ、それだけを言いたかっただけだ。俺個人としては、お前が幸せに生きることを祈っているよ。ダニッシュもきっとそう望んでいる」
あの人と同じ匂いがする、あの人と同じ温もりがある。
あの人が良心とヴァパリア黎明結社の部門長として為すべきことの間で苦しんでいた時と同じ、どこか悲しそうな、辛そうな表情を浮かべている。
ゲレゲレにはどうすればいいか分からなかった。
結局、
仲間達が続々と帰っていく中、ゲレゲレは草子の方に視線を向け……結局その場を後にした。自分には何もできないないことを理解していたから。
それに、ゲレゲレは主人であるナイアーラトテップのことが大切だ。その大切な邪神と敵対する少年に着いて行ってナイアーラトテップと敵対する――恩を仇で返すようなことをゲレゲレはやりたくない。
ゲレゲレはせめて、ナイアーラトテップと草子の戦いを最後まで見届けようと決意してその場を後にした。
◆
異世界生活百七十日目 場所コンラッセン大平原、能因草子の隠れ家(旧古びた洋館)
俺達は一旦屋敷に戻り、
白崎達は今頃、パーティ分けをしている筈だ。
今回の七賢者戦は俺一人で全員回ってもアリだと思っていたが、白崎達も最後の戦いに参加し、自らの手で地球への帰還の切符を掴み取りたいらしい。まあ、白崎勇者パーティ最強の白崎やその仲間達の方が取り巻きの俺よりも遥かに強いから頼もしいんだけどさ。
で、俺はというと、ウコン、オレガノ、ミント、トリカブト――神界の管理者に分類される神々を屋敷の応接室に召喚して最終確認と引き継ぎのために召喚していた。
≪突然召喚されるからなんやと思ったぞ≫
「この度は突然お呼びして申し訳ございません。ようやくヴァパリア黎明結社のアジトの情報を手に入れ、最後の戦いの時が近づいてきましたので、段取りの最終確認と引き続きの方をさせて頂きたく、本日は召喚させて頂きました」
≪あの……普通にスマートフォンで連絡してくだされば良かったと思いますが≫
うん、何故だろう。オレガノが普通なことを言っていると気持ち悪いな。R18雑草駄女神なのに……。
「まず、この部屋には神代魔法を使用し、強力な情報遮断の結界が張ってあります。今後話すことのいくつかは念のため知っておいてもらいたいというもので、もし話が広まって
別に情報を遮断するための結界なので、結界の出入り自体は自由だ。管轄者を一網打尽にしようという目論見はない。
≪草子さんがそこまで慎重に動くということはそれだけ重要なことなのですね。分かりました、ここで聞いたことは一切他言しないと誓います≫
≪わ、私もです≫
≪勿論、他言しませんが……その見返りとしてレーゲン君をモフモフさせてはくださいませんか? ……くださいませんか?≫
うん、オレガノのは疑問符じゃなくて最早決定事項だよな? ……仕方ない、レーゲンには生贄になってもらおう。あっ、
「まず、神界では俺達の特殊転生が認められたということで間違いないですよね?」
≪はい、三柱以上の合意で草子さんが望むメンバーの該当世界への転生が可能ということになりました。それぞれの方がどの世界に転生するか選べ、姿形や性別も選択することが可能ということになっています≫
うん、ここにいるメンバーの中で一番信頼できるのはミントだな。トリカブトはまとも組だけどちょっと気が弱いし、オレガノは女神の皮を被った変態だし、ウコンは戦闘狂だし……ってか、四人のうち二人がアウトってかなりマズイよな。
「ありがとうございます。では、本題に入りましょう。今回の作戦はミント様にお願いしたいと思います。俺が旅の中で集めたポイントを譲渡しますので、ミント様はタブレットを使ってゼドゥーのスキル――【永劫回帰】を獲得して、俺達の地球転生と同時に辻褄を合わせてください」
【才能ト譲渡之神】でポイントをミントに譲渡する。
さて、これで目的の一つは達せられたということになるな。
≪意外とあっさり終わりましたね≫
「オレガノ様、ここからの話も重要ですから。……俺達は地球転生を行い、この世界から地球に帰還します。当然、神界とも関係を断つ訳ですが、その前にどうしても知って頂かなければならないことがあります。……ところで、皆様は女神コスモスという名前をご存じないでしょうか?」
≪誰、でしたっけ? 随分懐かしい名前のような気がします≫
オレガノだけじゃなく他の面々も聞いたことがあるような、無いようなという表情を浮かべている。
「今日、その神はヴォーダン=ヴァルファズル=ハーヴィを名乗っています。異世界カオスで生まれた女神で、神界の在り方を変えた存在でもあります」
≪ヴォーダン…………しかし、あの神は管理者の黎明期に活躍した武神で≫
「ミント様、それは捏造された記憶ですよ。ヤルダバオートの供述により、
≪た、確かに……≫
「トリカブト様、今の神界をそのような歪な形にしたのはヴォーダンに自らを偽装した女神コスモスです。彼女……いえ、今は爺と呼ぶべきでしょうか? 爺は認識に干渉するスキル――【永劫回帰】に似たようなものを使ってヴォーダンとして神界に潜り込み、異世界転移を神界の仕事として認めさせ、異世界カオスに数多の人々を転移させました。一方、神界の転生システムに関してもなんらかの干渉を行って操作し、異世界カオスを
≪まあ、知ったところでワイらにできることは限られとるからな。……分かった、覚えとくよ≫
≪なんか老害で嫌な奴だなって思っていましたが、まさかそんなことをしていたとは……分かりました。このことは胸に秘めておきます。そして、来るときにあの嫌味なクソ上司を≫
≪分かりました。神界の管理者の一人として今後はヴォーダンの動きに細心の注意を払います。ご報告ありがとうございます、草子さん≫
≪わ、分かりました!!≫
とりあえず、これで俺も心置きなく地球に帰ることができる。
さあ、残るはヴァパリア黎明結社との決戦のみ。全力で戦い、自分の手で俺の願いを叶えてみせる!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます