テトラ=カルタ〜六生転輪な七賢者〜 その1

 異世界生活百七十日目 場所ラグナ・ヴァルタ島、ヴァパリア黎明結社本部


 地上には無数の墓が建てられた島――それが、決戦の地ラグナ・ヴァルタ島だ。


 かつて、『帝国』との戦いで戦死した『自警団』のメンバーから二代目のヴァパリア黎明結社の者達に至るまで、ヴァパリア黎明結社に関わった全ての者達の亡骸が収められている。


 俺達は海底を進み、このラグナ・ヴァルタ島の地下にある空洞からヴァパリア黎明結社本部に入った。

 部門長クラスすら場所を知らないという厳戒態勢の場所ということで規模はそこまでではないが……敵の配置からして、必ず七賢者全員を倒さなければ首魁――ゼドゥーとは戦えないようになっているみたいだな。まあ、最初からそのつもりだけど。


 相手は基本的に一部屋につき一人で、七賢者二人以上との戦闘の可能性は低い。唯一二人いるのはアルフレートとシャリスだろう。この部屋もシャリスは見届け人の立場にあるため結局アルフレート一人との戦いになる。


 チームは、リーファ、ジューリア、雪乃、アストリアリンド、リーリス、進藤、久嶋、大門、織田、後田、楠木、犬吠埼、木村、瀧野瀬、氷鏡、南雲からなるAチーム。


 聖、ロゼッタ、イセルガ、志島、一、眞由美、ミュラ、相沢、エリーゼ、不知火、度会、凛、丑寅、栗栖、畠山、赤城からなるBチーム。


 白崎、朝倉、北岡、アイリス、クリプ、一ノ瀬、ゼラニウム、メーア、ジュリアナ、コンスタンス、姫川、氷岡、平城山、山田、織姫からなるCチーム。


 インフィニット、シヴァ、佳奈、ケリー、エドワード、シュゼット、リュドミラ、リィゥ、デクエゥシスの超帝国組のDチーム。


 柴田、岸田、八房、高津、常盤、レーゲン、狩野、藍川、春彦、宍戸、葦屋浦、天宮、夢咲、新田、堰澤、吉祥寺からなるEチーム。


 そして、俺一人からなるFランチーム……えっ? 違うって?? モブキャラだし、Fランクで十分ですよー。


 一応、神界には死者の魂を転生の輪に入るまでに回収して保管してもらうことになっているので、この最終戦争ラグナロクで死んでも特殊転生が受けられないということはないものの……やっぱり死なない方がいい訳で、白崎達も死なないように立ち回ることを決めているようだが……まあ、相手は七賢者だし、今までみたいに全員無事みたいな都合のいい展開にはならないだろうな。


 Aチームはリーファをリーダー、Bチームは聖をリーダー、参謀をロゼッタ、Cチームは白崎をリーダー、Eチームはレーゲンをリーダーに、それぞれ七賢者の待ち受ける部屋へと進んでいる。

 戦いが終わり次第、次の七賢者に向かうか、応援に駆けつけるかということになっているが……まあ、インフィニット達は先に進むだろうな。

 その辺りは各々の判断に任せるという話になっているので、どっちが正解だという訳ではないけど。


 さて、一人残った俺は……というと、他のチームが選んでいないルートを選択し、ラグナ・ヴァルタ島の地下通路を歩いていた。

 そして、数十分後――分厚い金属の扉が見え、その先が空洞で人一人がいることが確認できた。ホント、叡慧ト究慧セーフェル=之至高神イェツィラーって便利だよな。

 重い扉を蹴り飛ばし、中に入るとそこには住所不定無職のジャージの人が…………ん? 部屋を間違えたか? そんな訳ないよな。

 ジャージの人といえば、死に戻りのお兄さんとかデリバリーゴッドとかを思い出すけど……うん、どっちも違うな、これ。前者はとにかく死に戻りができるから生きていられるだけでその他のポテンシャルは異世界レベルでは雑魚に設定されているし、後者も戦闘力は高いけど……コイツとはあまりにもかけ離れているからな。


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NAME:テトラ=カルタ AGE:17歳

LEVEL:99999999(DESPERADO)

HP:99999999/99999999(+9999999999999)

MP:99999999/99999999(+9999999999999)

STR:99999999(+9999999999999)

DEX:99999999(+9999999999999)

INT:99999999(+9999999999999)

CON:99999999(+9999999999999)

APP:6000(+9999999999999)

POW:99999999(+9999999999999)

LUCK:99999999(+9999999999999)


JOB:自宅警備神ニート神


TITLE:【ニート神】、【隠し神デュ・ドゥ・レ・モン】、【触らぬ神に祟りなし】、【即死チート】、【世界で一番働かせてはいけない人間】、【五重輪廻転生者インポッシブル・ソウル】、【上位転生者ハイ・リンカーネーター】、【創造因子アルファマターの使い手】、【超能力者サイキッカー】、【魂武者ブレイザー】、【魔導皇】、【真の蘇生技能者リザレクサー】、【ヴァパリア黎明結社七賢者】、【超越者デスペラードの領域に至りし者】


SKILL

【物理無効】LEVEL:MAX(限界突破)

→物理を無効にするよ! 【物理耐性】の上位互換だよ!

【衝撃無効】LEVEL:MAX(限界突破)

→衝撃を無効にするよ! 【衝撃耐性】の上位互換だよ!

【魔法無効】LEVEL:MAX(限界突破)

→魔法を無効にするよ! 【魔法耐性】の上位互換だよ!

【状態異常無効】LEVEL:MAX(限界突破)

→全ての状態異常を無効にするよ! 【状態異常耐性】の上位互換だよ!

【即死無効】LEVEL:MAX(限界突破)

→即死を無効化するよ! 【即死耐性】の上位互換だよ!

【因果無効】LEVEL:MAX(限界突破)

→因果干渉を無効化するよ! 【因果耐性】の上位互換だよ!

【即死無効貫通】LEVEL:MAX(限界突破)

→即死無効を貫通するよ! 【即死耐性貫通】の上位互換だよ!

【クライヴァルト語】LEVEL:MAX(限界突破)

→クライヴァルト語を習得するよ!

【ミンティス国】LEVEL:MAX(限界突破)

→ミンティス語を習得するよ!

【マハーシュバラ語】LEVEL:MAX(限界突破)

→マハーシュバラ語を習得するよ!

【ジュドヴァ=ノーヴェ語】LEVEL:MAX(限界突破)

→ジュドヴァ=ノーヴェ語を習得するよ!

【エルフ語】LEVEL:MAX(限界突破)

→エルフ語を習得するよ!

【ドワーフ語】LEVEL:MAX(限界突破)

→ドワーフ語を習得するよ!

【獣人第一共通語】LEVEL:MAX(限界突破)

→獣人第一共通語を習得するよ!

【獣人第二共通語】LEVEL:MAX(限界突破)

→獣人第二共通語を習得するよ!

【海棲語】LEVEL:MAX(限界突破)

→海棲語を習得するよ!

【ヴァパリア黎明結社共通語】LEVEL:MAX(限界突破)

→ヴァパリア黎明結社共通語を習得するよ!


ITEM

・ジャージ

→ニート御用達のジャージだよ!

・黎明結社のペンダント

→ヴァパリア黎明結社のシンボルである六芒星に十字架を合わせた意匠のペンダントだよ!


NOTICE

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 ……これが、セブンス・クライシス“即死”のテトラ=カルタ…………アルファに即死してオメガなる者チート

 なんでそんなんがニートなんてやっているの??



【三人称視点】


 テトラ=カルタは自分の出自を、本当の名前を知らない。

 物心ついた時には既に一人で親もなく、天涯孤独の後にテトラと呼ばれる少年は、孤児院に引き取られて暮らしていた。


 少年は親無しで、友人の輪に入っていくような積極性が無かったため、次第に孤立していった。孤立だけでは留まらず、いじめが行われることも増えた。

 しかし、孤児院の職員達が少年に味方をすることは最後まで無かった。


 暴力を振るおうとした孤児院の子供が、健康だった筈にも拘らず突如として死因不明で生き絶えるという事件が頻発した。

 孤児院の子供達にとっても職員にとっても、少年は恐怖の存在となったのだ。そんな少年に味方をするような奇特な存在は、その孤児院にはいなかった。


 子供達を守るべく少年を殺そうとして、孤児院の職員が原因不明の死を迎えることも多々あった。

 少年に直接危害を加えなければ死に絶えることはない――それに気づいた孤児院の者達は少年を自殺に追い込むべくあの手この手を使った。そうすれば自分達は生き残れると、再び平穏な日常に戻れると信じていた。


 そんな孤児院はある日――邪神を信仰する教団によって呆気なく制圧され、子供達六十人と職員十名は皆殺しにされた。

 教団は少年の噂を聞きつけ、死神――隠し神デュ・ドゥ・レ・モンとして崇めようとしていたのだ。

 そして、その死の力を振るってもらい世界を支配しようと考えていた。


「死ね」


 だが、教団の思惑はあっさり頓挫する。なんとなく面倒な予感がしたという理由で少年の力が行使され、教団のメンバーが揃って原因不明の死を迎えたのだ。

 一人になった少年はここに残っても仕方ないから、と孤児院を出た。



「望んだ相手を殺せる力? それは、【即死】ってスキルじゃないかい? ……でもおかしいね。ステータスに【即死】のスキルはないんだけど」


「ありがとうございます」


 少年は孤児院を出てから日銭を稼ぐために傭兵となることに決めた。

 少年は傭兵職業安定所ハローワークに赴いて傭兵として登録した際に、受付嬢にステータスの鑑定を依頼したのだが、少年の力の謎は解明されなかった。


 自分は何者なのか、何故相手を即死させる力を持っているのか……少年は旅をしながら自分の正体を探るつもりでいたが、【鑑定】でステータスを調べても分からないとなるとその力の正体が分からないまま一生を終えるかもしれない。


 少年は自分の色々と試すうちに、自分の能力が少しずつ分かってきた。


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・通常の即死。

・害する意思を持った相手に強制的に死を与える。

・害する意思がなくても対象に死の可能性がある場合に因果を収束させて死に至らしめることができる。

・殺意を持った時点で時間移動や時間移動を行おうとしても逃れられず、必ず死に至らしめられる。

・死の概念が存在しなくても死ぬ。

・全世界線に存在する対象を纏めて殺す。

・物質や空間、概念などでも殺せる。

・他者や他世界などを通して攻撃しようとした場合でも殺せる。

・無限に復活できる相手も完全に殺せる。

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 唯一殺せないのは【即死無効】を持った相手だけであった。自分の即死すらも念頭において設計されている……というのは流石に気のせいだろうと、少年はあっさり切り捨てたが、まさかその少年の予想が当たっていたとは思わないだろう。まあ、設計者――始まりの一族オリジン・オブ・ケイオスが念頭に置いていたのは、お●くし様と呼ばれる存在の即死の力であって、少年の即死の力は出自こそ違いはあるものの、能力自体は全く同類のものなので無効化されたというだけなのだが……。


 少年は傭兵としてその後も旅を続けた。幸い、少年の力を知る者――孤児院と教団は壊滅している。

 少年が面倒ごとに巻き込まれない限りは、即死の力が世間に大々的に知られることにならなければ、平穏な傭兵としての生活を送ることができる。



 ある時から、少年は夢を見るようになった。

 どうやら前世の夢らしい……しかし、それにしては妙だった。


 ある時は、とある国の皇帝だった。あらゆる物質を創造可能な高次元物質創造因子アルファマターを操る力を持つカエサル=ノーデムフェレダという男で、終焉残滓オメガマターと呼ばれる既に終わりきっているために破壊という概念が通用せず、全てのものを蝕み生という生を貪り喰らう残滓によって構成された堕ちた創造神による侵略から世界を守っていた。


 ある時は、超能力者だった。あらゆる超能力者に憑依することで能力を略奪することができる力を持つ超能力者ヴァシスハウル=モージュームという名で、あらゆる超能力者から超能力を奪うことにより、超能力者が戦争の兵器として使われるという最悪の未来を回避した。


 ある時は、とある技術により魂を形にする力を手に入れた学生、三条慈水だった。位階Ⅹという最高位である究極領域アブソリュート・ブレイザーに到達し、同じ学園で出会い、最高のパートナーとなったユリシア=アルゲントゥムと共に、慈水の幼馴染で月の光のような暗い光から創り出した武器を生み出すことができる究極領域アブソリュート・ブレイザーに至ったリュンヌの異名を持つ月宮玉桂を倒し、幼少の頃からの因縁に終止符を打った。


 ある時は、意思を反映させる魔法で願うだけで事象を発動させる究極魔法を操り、世界を支配した魔導帝国の魔導皇グレーテスィト=グロウリーだった。

 ある国の王族であったが強過ぎる力を持つが故に恐れられ、迫害され、長らく幽閉されていたが、後に右腕として、妻としてグレーテスィトを支える皇宮の魔女サラシャ=ブラックンドによって牢を破る決意をし、その後巨大な力で世界と渡り合い、遂には世界征服を成し遂げて魔導の技術をたった三年で百年分ほど進めるほどの技術革新を行った。


 ある時は、時空や世界線を超越してその魂を探し出して複製フルコピーし、記憶データを現在生きていると仮定した状態に書き換えて貼り付けることにより実質的な完全蘇生を行うことが可能な死霊術師ネクロマンサー――フェデリック=シュービッツだった。弟子のリーフィンド=リュッシュと共に世界を巡り、死者を冒瀆する異理の力イミュテーションを振り撒きながら、仕えるべき主人を求めていた。


 本来、転生者リンカーネーターが前世の記憶を思い出す場合、基本的には一つの前世しか思い出すことはない。稀に複数の前世を記憶している者もいるが、多くても二つが限度だ。

 だが、少年は五つの前世の記憶を持っていた。そして、その全てが非凡なものでは無かった。


 少年は前世の記憶を取り戻すと同時に、自らの力の正体を知った。

 異理の力イミュテーション――世界の理から外れ、歪める力だ。


 しかし強大な力を持ち、何かしらの使命を与えられているのであろうことを理解しても少年は何かを成そうとは思わなかった。

 これまで再三世界を救い、滅ぼしてきた。世界や化け物を相手にするのは流石に飽きた。


 少年は、自らにテトラ=カルタ――六憲の名を与え、今世はひっそりと自堕落に生きようと考え、歴史の日陰で生きてきた。

 そんなテトラは、ある日――ヴァパリア黎明結社の首魁ゼドゥーと戦って初めて敗北の味を知り、約束に従って渋々ヴァパリア黎明結社に所属し、七賢者の一人としてニート生活を始めることになる。

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