祝『カクヨム』フォロワー100件達成記念企画。

「二つのゲーム〜もう一つのカオスと乙女ゲーム〜」

 エリシェラ学園の多目的教室に、俺達は集まっていた。


 メンバーはジルフォンド、シャート、ヴァングレイ、フィード、ノエリア、プリムラ、ロゼッタの乙女ゲーム組と、マイアーレ、シャンテルの演劇部組、後は聖達いつものメンバーである。


「とりあえず、試作機のゲーム機を作ったから実際にプレイして感想を聞かせてくれ」


「…………草子君、これどう見てもD●なんだけど」


「しかも、Lite版だよね。懐かしいな……」


 聖が反応するのはなんとなく分かったけど、まさか白崎も知っているとは……高嶺の花もゲームやるんだね。


「ちなみに、ソフトは『THE WORLD of KHAOS』と『The LOVE STORY of Primula』の二つを用意しました。ちなみに、『The LOVE STORY of Primula』は【メニュー】を解析して作ったものですので、薗部美華さんが前世のプレイしたものと全く同じだと思ってください」


「ごめんなさい……私がロゼッタ殺しを楽しまずまじめにプレイしていなければこんなことには……」


 ロゼッタのトラウマが再発しているようだ……まあ、ゲームってのは別に個人個人が好きなように楽しむものだと思うから、やりたいようにプレイしたロゼッタが責められる理由はないと思う。


 ただ、ロゼッタ殺しで『The LOVE STORY of Primula』を周回し、結果として悪役令嬢ロゼッタという存在について深く理解してしまったことが、ロゼッタに一度は自殺という選択肢を考えさせてしまったことを考えるとドス黒い周回プレイはやらなかった方が良かったのかもしれないと思う……まあ、俺がプレイしていた訳ではないし、過ぎ去ってしまったことだから今更言っても遅いんだけど。


 乙女ゲームの悪役令嬢に転生した者達というのはごく一部の例外を除いて悪役令嬢だったことを反面教師にしていく。

 それが結果として攻略対象や主人公達との良好な関係に繋がっていく訳だが、その背後にあるのは当然「悪役令嬢として攻略対象や主人公に対して行った悪行の数々」に対する嫌悪感や罪悪感と言った負の感情だ。


 その最たるものが八歳で前世の記憶を思い出して、乙女ゲームの世界だと気づくプラ●ド第一王女。

 そして、こういうタイプは悪役令嬢であるもう一人の自分の影に怯えながら、そうはなるまいと努力し、他人にもそのことを口にできないままその重圧に押し潰されていく。……とても恋愛どころではないよな。


 純粋な気持ちもあるだろうが、ロゼッタの場合もそれだけじゃなかった。心のどこかでバッドエンドにはなりたくない、悪役令嬢ロゼッタにはなりたくないという純粋ではない気持ちが、打算があった。

 心優しいロゼッタでもそうなのだから、誰がロゼッタの立場に置かれてもきっと同じ状況になっただろう。


 ロゼッタが真実をジルフォンド達に語り、ジルフォンド達もロゼッタのことを認め、受け入れてくれた時には部外者だけど嬉しかった。

 悪役令嬢に転生した者達に共通する自分でも気づかない努力が、優しさが認められたことが我が事のように嬉しかった。


 この誰一人欠けることのない平和なエリシェラ学園があるのは、偏にロゼッタの功績だ。……折角ここまで努力して最高の居場所を手に入れたのに、なんでロゼッタは俺達についてきたんだろうね?


「皆様には各種一枚ずつソフトをプレゼント致します。今、エンリ達と協力して新しいゲームソフトを作っていますので、それが完成し次第市場に流そうかな、と思っています」


 流石はマルドゥーク文明の人工知能。そのスペックは俺達の想像を軽く超えていく。

 なんか、ゆくゆくはDMMORPGのフルダイブシステムや、ゲーム機すら必要としないキ●クの『魔法少●育成計画』のような完全ダイブシステムを作るつもりらしい……コイツらは一体何を目指しているんだか。


 乙女ゲーム組と演劇部は『The LOVE STORY of Primula』、聖達は『THE WORLD of KHAOS』を選んだようだ……まあ、想定通りだな。

 演劇部は『The LOVE STORY of Primula』を基にした演劇を計画中のようだし、やっておいて損はないよな。


 さて、どんな反応をするのか……楽しみだな。



 『THE WORLD of KHAOS』は四つのエリアと解放されていないエリアによって構成されている。

 アルドヴァンデ共和国、自由諸侯同盟ヴルヴォタット、ミンティス教国、ジュドヴァ=ノーヴェ魔族王国……つまり、これまで旅をしてきた国が四つのエリアで、超帝国マハーシュバラが未解放エリアということになるな。


「草子さん、このキャラメイクとキャラ選択ってどんな違いがあるのかしら?」


「あっ、キャラメイクは本当に新しいキャラを一から造形するもので、キャラ選択は既存のキャラを選択することができる奴だよ。例えば、アストリアさんはアストリアLv.1を選択してプレイすることができる。各データでキャラクターは引き継げるから二周目でアストリアLv.60とかを別のエリアで使うこともできるよ。ちなみに、パーティは四人までで一人プレイから四人プレイまでいけるから協力して進めることもできる……一人で四人選択して進めることもできるけど」


「それなら……リーリス、一緒にやるわよ!」


「はい、リーリス様!!」


 アストリアはリーリスと協力プレイでジュドヴァ=ノーヴェ魔族王国エリアを選択したらしい……おいおい、途中には魔王様お父さんとの勝負が挿入されているし、このエリアのラスボスは紅葉とブルーメモリアだぞ……あれか? 過去を乗り越える的な感じか?


 ちなみに、各エリアにはラスボスが設定されていて、自由諸侯同盟ヴルヴォタットはフィードとフルゴル・エクエス×3、アルドヴァンデ共和国はイヴとカンパネラ、ミンティス教国はダニッシュと、それぞれ強力なラスボスが配置されている。

 えっ、ミンティス教国はインフィニットとか飛空戦艦エンリルじゃないのかって……ちょっとゲームに変える際に脚色したからね。


「白崎さん、良かったら俺と――「草子君、良かったら私と『THE WORLD of KHAOS』でパーティを組んでくれないかな?」


 おいおい、白崎。春彦の言葉遮っちゃって大丈夫なのかよ?


「いや、今回は傍観者貫かせてもらうよ。一応テストプレイで能因草子Lv.∞まで育てているし……ってか、エンリさん達。なんか、既存の全エリアを攻略すると裏ボスに挑戦できるとかいう仕様付け加えたのお前ら?」


【それはエンリがやりました。裏ボスは各エリアのボスよりも遥かに強力です。ついでに言えば現状攻略方法がありません】


「…………そんな奴居たっけ? アリスさんは……出てくる訳がないし」


【ヒントは今エンリの入ったスマホを持っている人です】


 ん? ……つまり俺ってこと? いや、どう考えてもそりゃねえだろ? だってただのモブキャラだよ!?


「あっ、確かに草子君相手なら絶対に攻略不能だね」


 ……おいおい、聖。否定しろよ。


 ちなみに、各メンバーのエリア設定とパーティは以下の通り。


-----------------------------------------------

・高野聖(PT1)

挑戦エリア:自由諸侯同盟ヴルヴォタット

人数:一人プレイ

パーティ名:元祖草子パーティ

PT1.高野聖

PT1.能因草子


・リーファ=ティル・ナ・ノーグ(PT1)

挑戦エリア:ミンティス教国

人数:一人プレイ

パーティ名:LOVE BL and LOVE SOUSHI

PT1.リーファ=ティル・ナ・ノーグ

PT1.能因草子

PT1.進藤臨

PT1.久嶋康弘


・白崎華代(PT1)

・朝倉涼音(PT2)

挑戦エリア:自由諸侯同盟ヴルヴォタット

人数:二人プレイ

パーティ名:クラス委員と草子君

PT1.白崎華代

PT2.朝倉涼音

PT1.能因草子

PT2.北岡胡桃


・北岡胡桃(PT1)

挑戦エリア:自由諸侯同盟ヴルヴォタット

人数:一人プレイ

パーティ名:胡桃の逆ハーレム

PT1.北岡胡桃

PT1.能因草子

PT1.能因草子

PT1.能因草子


・柴田八枝(PT1)

・岸田美咲(PT2)

・八房花凛(PT3)

挑戦エリア:ミンティス教国

人数:三人プレイ

パーティ名:元ビッチパーティチームA(←自分で言っている) with 能因草子

PT1.柴田八枝

PT2.岸田美咲

PT3.八房花凛

PT1.能因草子


・高津寧々(PT1)

・常盤愛蘭(PT2)

挑戦エリア:ミンティス教国

人数:二人プレイ

パーティ名:元ビッチパーティチームB(←自分で言っている) with 能因草子

PT1.高津寧々

PT2.常盤愛蘭

PT1.能因草子

PT2.能因草子


・イセルガ=ヴィルフィンド(PT1)

挑戦エリア:自由諸侯同盟ヴルヴォタット

人数:一人プレイ

パーティ名:幼女ハーレム

PT1.イセルガ=ヴィルフィンド

PT1.アメリー(幼女)

PT1.ビェラ(幼女)

PT1.カルラ(幼女)


・アイリス=メージュネルト(PT1)

挑戦エリア:自由諸侯同盟ヴルヴォタット

人数:一人プレイ

パーティ名:魔法少女と美しい髪の者達

PT1.アイリス=メージュネルト

PT1.カタリナ=ラファエル

PT1.白崎華代

PT1.リーファ=ティル・ナ・ノーグ


・志島恵(PT1)

挑戦エリア:自由諸侯同盟ヴルヴォタット

人数:一人プレイ

パーティ名:女人禁制

PT1.進藤臨

PT1.久嶋康弘

PT1.大門龍次郎

PT1.狩野照次郎


・一薫(PT1)

挑戦エリア:自由諸侯同盟ヴルヴォタット

人数:一人プレイ

パーティ名:男乃楽園

PT1.進藤臨

PT1.久嶋康弘

PT1.大門龍次郎

PT1.狩野照次郎


・柊眞由美(PT1)

挑戦エリア:自由諸侯同盟ヴルヴォタット

人数:一人プレイ

パーティ名:薔薇庭園

PT1.進藤臨

PT1.久嶋康弘

PT1.大門龍次郎

PT1.狩野照次郎


・レーゲン=イーザー(PT1)

・狩野照次郎(PT2)

・藍川孝徳(PT3)

挑戦エリア:ミンティス教国

人数:三人プレイ

パーティ名:勇者パーティ

PT1.レーゲン=イーザー

PT2.狩野照次郎

PT3.藍川孝徳


・一ノ瀬梓(PT1)

・ゼラニウム=レーラ(PT2)

・メーア・ゼーエン(PT3)

・ジュリアナ=スワン(PT4)

挑戦エリア:ミンティス教国

人数:四人プレイ

パーティ名:一ノ瀬梓の百合ハーレム

PT1.一ノ瀬梓

PT2.ゼラニウム=レーラ

PT3.メーア・ゼーエン

PT4.ジュリアナ=スワン


・平城山泉都(PT1)

・山田太郎(PT2)

・コンスタンス=セーブル(PT3)

・ミュラ=アンディルサント(PT4)

挑戦エリア:ミンティス教国

人数:四人プレイ

パーティ名:冒険者達

PT1.平城山泉都

PT2.山田太郎

PT3.コンスタンス=セーブル

PT4.ミュラ=アンディルサント


・ジューリア=コルゥシカ(PT1)

挑戦エリア:ミンティス教国

人数:一人プレイ

パーティ名:ミンティス教国の修道士達

PT1.ジューリア=コルゥシカ

PT1.カタリナ=ラファエル

PT1.ネメシス=ダルク

PT1.メル=ジルフィーナ


・氷麗=スノーワイト=雪乃(PT1)

挑戦エリア:ジュドヴァ=ノーヴェ魔族王国

人数:一人プレイ

パーティ名:ショタに囲まれて

PT1.氷麗=スノーワイト=雪乃

PT1.アルミン(ショタ)

PT1.ブルーノ(ショタ)

PT1.クルト(ショタ)


・アストリアリンド・ダル=ノーヴェ(PT1)

・リーリス=ヴリュエッタ(PT2)

挑戦エリア:ジュドヴァ=ノーヴェ魔族王国

人数:二人プレイ

パーティ名:新代魔王と淫魔の騎士

PT1.アストリアリンド・ダル=ノーヴェ

PT2.リーリス=ヴリュエッタ


・織田一樹(PT1)

・後田修治(PT2)

・楠木陣内(PT3)

・犬吠埼啓(PT4)

挑戦エリア:ジュドヴァ=ノーヴェ魔族王国

人数:四人プレイ

パーティ名:百戦錬磨のヲタク達

PT1.織田一樹

PT2.後田修治

PT3.楠木陣内

PT4.犬吠埼啓


・相模春彦(PT1)

・宍戸烈(PT2)

・葦屋浦雫(PT3)

・天宮日奈子(PT4)

挑戦エリア:ミンティス教国

人数:四人プレイ

パーティ名:四角形の彼方

PT1.相模春彦

PT2.宍戸烈

PT3.葦屋浦雫

PT4.天宮日奈子


・夢咲莉乃(PT1)

・新田瑞希(PT2)

・堰澤兵悟(PT3)

・吉祥寺寛也(PT4)

挑戦エリア:アルドヴァンデ共和国

人数:四人プレイ

パーティ名:二人のアイドルとドルヲタ達

PT1.夢咲莉乃

PT2.新田瑞希

PT3.堰澤兵悟

PT4.吉祥寺寛也


・瀧野瀬芽依(PT1)

・氷鏡将輝(PT2)

・南雲麻衣子(PT3)

挑戦エリア:ジュドヴァ=ノーヴェ魔族王国

人数:三人プレイ

パーティ名:図書委員会

PT1.瀧野瀬芽依

PT2.氷鏡将輝

PT3.南雲麻衣子


・姫川秋桜(PT1)

・氷岡麗緒(PT2)

挑戦エリア:自由諸侯同盟ヴルヴォタット

人数:二人プレイ

パーティ名:性別逆転カップル

PT1.姫川秋桜

PT2.氷岡麗緒


・白鷺織姫(PT1)

・不知火陽炎(PT2)

・度会影介(PT3)

挑戦エリア:自由諸侯同盟ヴルヴォタット

人数:三人プレイ

パーティ名:忍ぶ者と色つき空気と不可視と

PT1.白鷺織姫

PT2.不知火陽炎

PT3.度会影介


・相沢秀吉(PT1)

・エリーゼ=ヴィーゲルト(PT2)

挑戦エリア:自由諸侯同盟ヴルヴォタット

人数:三人プレイ

パーティ名:数学的天才と黒猫な嫁

PT1.相沢秀吉

PT2.エリーゼ=ヴィーゲルト


・佐伯凛(PT1)

・丑寅虎雄(PT2)

・栗栖白鬼(PT3)

挑戦エリア:ジュドヴァ=ノーヴェ魔族王国

人数:三人プレイ

パーティ名:不良の王とシモベ達

PT1.佐伯巌

PT2.丑寅虎雄

PT3.栗栖白鬼


・畠山大介(PT1)

・赤城北斗(PT2)

・木村猛(PT3)

挑戦エリア:アルドヴァンデ共和国

人数:三人プレイ

パーティ名:不良達の協奏曲

PT1.畠山大介

PT2.赤城北斗

PT3.木村猛

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 ……見事なまで趣味に走ったパーティだよな……特に雪乃とイセルガは「お巡りさんこっちです」だし……まあ、流石にゲームだし咎めはせんけど。

 あまりにと趣味に特化し過ぎて物理特化になっている腐女子達とかいるけど大丈夫かね? 回復薬って結構掛かるし、【回復魔法】を持っている奴をパーティに入れた方がいいと思うけど。後、魔法職も。

 しかし、何故カタリナをパーティに入れている奴がこんなに多いのか……ってか、アイリスとジューリアの二人か。


 アイリスはカタリナの髪狙いだろうし、ジューリアは表情から窺えないけどカタリナのことを神聖視しているみたいだし……。


 それだけならまだいいんだけど……ジューリアってむっつりスケベで若干のドM要素があるからな。内心カタリナにそこそこ激しい攻めをしてもらいたいって思っているみたいだし……あのな、ジューリア。カタリナってのは「男の理想を体現したような美しさと可愛らしさが共存した姿」、「聖女に相応しい優しさと慈しみ」、「エロには絶対に関わらない永遠の処女」っていう三要素の集合体なんだよ! 要するに誰かの嫁にはならないってこと。

 まあ、中身が俺な時点で幻想が打ち砕かれている筈なんだが……何故今もカタリナ信徒が増え続けているのか。


 ちなみに、俺のパーティはこんな感じ。


-----------------------------------------------

・能因草子(PT1)

人数:一人プレイ

パーティ名:草子パーティ

PT1.能因草子Lv.∞

PT1.カタリナ=ラファエルLv.∞

PT1.ダニッシュ=ギャンビットLv.∞

PT1.ユーゼフ=クランマーLv.∞

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 まあ、思いっきりカンストしてます。やっぱり育て過ぎかな……。



「……ゴブリンが強過ぎるよ。またGAME OVERしちゃった」


「まあ、草子君がいなければ実際に私達もゴブリンに凌辱されて、挙句孕まされ、尊厳を踏み躙られていた……本当に草子君には感謝しないといけないな」


「でもぉ、そうやって草子君を三人もいれたのにまたゴブリン相手に全滅しちゃったわぁ……どういうことかしら?」


 白崎と朝倉のグループと北岡はフィージャ草原で何度目か分からないGAME OVERを経験したらしい……ゴブリン相手に。

 最終的に滅茶苦茶強くなる勇者パーティも序盤は当然弱い……今の感覚でゴブリン相手に連戦していたら、そりゃ危険だよな。

 ってか、北岡。俺のステータスは他の連中と比べても明らかに低い上に残り物スキルしかないんだから、そりゃ三人揃えても全滅するよ!


「……本当に白崎さん達は考えなしよね。草子君の強さの根幹はヴァルジャ=ラ迷宮にこそあるのよ!」


 自由諸侯同盟ヴルヴォタット編のスタート地点はアルルの町。ここを拠点にレベルを上げつつエリシェラ学園に向かい、そこで幾多の戦闘を経てフィードを倒してエンディングという流れで動くのが定石なのだが……実はウィルヴァルドの森に設定された魔法陣に乗ることでヴァルジャ=ラ迷宮に行くことができる。

 なんと、ヴァルジャ=ラ迷宮のある部屋では俺が初期に獲得していた【器用貧乏】、【異食】、【魔術文化学概論】、【書誌学】を一周につき一セットずつ獲得できる仕様になっているのだ!


 聖はコレに気づいて他の狩場を無視してヴァルジャ=ラ迷宮に移動。物理攻撃が全く効かないことを利用して【爆弾作成】や【ポルターガイスト】を駆使しながら隠しボスのサイクロプス、ケルベロス、ヨルムンガンドとの勝負に挑んだのだ。その結果、草子も聖もステータスが大幅に上昇している。


「リーファさんはどこまで行きました?」


「えっと……今、異端審問官と隠法騎士修道会に追われているところですね。異端審問官のマシューは倒したので、今から暗殺者達、ジューリアさんとの連戦ですね」


「…………我、そこまで行きたらず……リーファ、我を殺すや?」


「それは、勿論。ジューリアさんを倒さないと先に進めませんから。……ジューリアさんも、ミンティス教国と戦うことを理解した上で選んだんですよね?」


「そこまでは考へたらざりき……我、かたへに刃は向けられず」


 ……おいおい、ジューリア。まさか、懐かしいからミンティス教国を選んだとかじゃないよな? そのパーティは意図的に自分vs自分を狙ったようにしか見えないぞ?

 ちなみに、リーファに現在のプレイ状況を訪ねた志島達だが、白崎達よりは進んでいるようだ。脳筋達を使ったオートの脳死プレイと宿屋の全回復で着々と進んでいるようだが……フルゴル・エクエスとぶつかった時に対抗できるのかな? これ。


 ちなみに、柴田達五人が三人組と二人組に別れたチーム、一ノ瀬百合パーティ、相模達恋愛を拗らせた幼馴染四人組も異世界召喚後のチュートリアル終了後に放り込まれる常夜の大樹林を攻略中のようだ。……実際はここで翠雨はジューリアに負けてレーゲンとして転生する訳だが、別のエリアを挟むからという理由でジューリアにも勝利可能になっている……というか勝利は必須条件なんだよね。

 一ノ瀬達が遅れた理由は一ノ瀬が可愛いジューリアに攻撃できないとか言い出したせいだ。その際、ジューリアにゴミを見るような目を向けられていた。……まあ、ジューリアからしたら一ノ瀬は女の敵だからな。一度パーティを破壊した危険因子だし、最上級の警戒対象として設定されているのかもしれない。確かに、白崎勇者パーティが二度崩壊するのは流石に外聞的にアウトだよな。まあ、崩壊って言っても俺とレーゲンが抜けただけで、被害といえばレーゲンが抜けたという一点に集約される訳だけど。


 ちなみに、レーゲン達はあの時の雪辱をゲームで果たし、現在ジューリアを攻略してミンティス教国の聖都を目指して激走中のようです。あっ……たった今コンスタンス達がジューリアを撃破したようです。


 イセルガ、アイリス、雪乃の三人は早くクリアすることよりもゲームのグラフィックを楽しむことに重きを置いているらしい……ちなみにイセルガと雪乃は何を思ったの宿で夜にパーティメンバーとイチャつけると期待していたようだが、当然そのような絵が全年齢対象のゲームに出る訳がなく「ゆうべはお楽しみでしたね」に集約されていたことに絶望していたようだ……いや、考えれば分かるだろう?


「凄いです、相沢さん!」


「ふっ、これくらい当然だよ。天才の僕にとっては」


 相沢はエリーゼの前でいいところをみせようと頑張っているようだ。エリーゼの向日葵のような笑顔に、思わず顔を赤らめているところがなんとも可愛ら……ゲフンゲフン。

 しかし、随分と丸くなったな。てっきり数学的天才君と同じ末路を辿ると思っていたんだが……。


「草子の兄貴! 冒険者ギルドに行ったら奴隷解放依頼を受けないといけなくなったんですけど、どう考えても奴隷商人を全滅させるとか無理っす!!」


「いや、モブキャラの俺にもできる簡単なお仕事なんだし、サクッと水の街アクアレーティアのシチリアのマフィア風の名前の男をサクッと討伐してきてくだされ」


 現在アルドヴァンデ共和国で奴隷解放チャートに突入し、泣き言を言い始めた畠山……いや、俺でも余裕で奴隷商人を全滅させられたんだから誰にだってできるよね? シャリスもいない訳だし。

 ちなみに、同じようにアルドヴァンデ共和国に挑戦している夢咲と新田をメインとする四人パーティはとっくの昔に奴隷商人を全滅させてミュナを送り届けるために海洋国家ポセイドンに向かっているぞ?

 ……折角だし、今度完成したソフトをハードと一緒にミュナにプレゼントしようかな? あっ、勿論内容は対象年齢低めの悪影響を及ぼさないものにするよ?


 一方、自由諸侯同盟ヴルヴォタットを選んだ性別逆転カップルはジェルダの町に到着し、忍ぶ者と色つき空気と不可視とというかなり個性的な、実際は織姫しか真面に認識されないんじゃないかパーティはエリシェラ学園に辿り着いていた。


「……ヤルダバオートがウザ過ぎるわ」


「確かに……私達がGAME OVERした時の台詞が上から目線でうざいですね。アストリア様、今度ボコボコにしてきましょうか?」


 俺とは逆ルートでジュドヴァ=ノーヴェ魔族王国の攻略を目指すアストリアとリーリスはヤルダバオートに敗北したらしい……いや、今回は現実のヤルダバオートに非がある訳ではないし、現実でボコボコにされるのは可哀想だと思うのだが……まあ、ただ残機が一つ減らされるだけだと思うけど。……そのまま残機全消しとかは流石にないんじゃないかな?

 ジュドヴァ=ノーヴェ魔族王国を選択したパーティの中で最も進んでいるのは織田達で魔王軍幹部のハンスィスの討伐に成功したところだ。流石はヲタクでも勇者パーティということか。時点で魔王軍幹部スフィリアとの戦いに勝利した図書委員会パーティ。ちなみに、佐伯達はというと。


「くっ、来るな! ゲームの中くらい巌でいさせてくれ!!」


 グレーター・ミノタウロスによって三人纏めて女体化され、グレーター・ミノタウロスが女性キャラ限定で発動する「陵辱」で即死させられていた。……あっ、続きからプレイでも女体化は継続するから、これはグレーター・ミノタウロスにもう一度【性換者】を使ってもらえることを祈るしか無さそうだね。


 しかし、この分だと攻略はまだまだ先になりそうだな。今日はキリのいいところで切り上げてもらって、後は各自好きに進めてもらうとするか。



 一方、ロゼッタ達の方はというと――。


「…………絶対に許せないわ! プリムラさんが丹精込めて作ったお菓子を! ……ロゼッタ、貴女には市中引き回しの上、火炙りの刑がお似合いだわ!」


「お、落ち着いてください! いつもの優しいロゼッタ様に戻ってください!!」


「プリムラさんの言う通りです。ロゼッタ、私達の目的を忘れたのですか? ……ロゼッタは私達にとって大切な人なのですから、自らの分身を傷つけるような真似はやめてください。……例え、貴女自身ロゼッタであっても貴女ロゼッタを傷つけることは許しません」


「……そ、そうですわよね。ごめんなさい、ジルフォンド様達の気持ちを考えずついつい昔の感覚で言ってしまいましたわ。……それに、プリムラさんがイジメられていると思うと居ても立っても居られなくて」


「その気持ちだけで十分です。ありがとうございます、ロゼッタ様。現実の私は大丈夫ですから!」


 うん、ゲームを通してまた絆が強まったようだ。


「お義姉様、遂にお義姉様がデレてくれました! このイベントスチル見てください! プリムラさんを守るように令嬢達と対峙するお義姉様、カッコいいです!!」


「そう、これです! まさに、ロゼッタ様が私を守ってくれた時そのものです!」


 あっ、シャートがロゼッタルートに入ったみたいだ。凄いな……ノエリアルートもかなり見つけるのが難しいけど、ロゼッタルートは攻略本を読まないと絶対に入れないレベルなのに……。


「こっちも、ノエリアルートに入ったぞ。……しかし、令嬢としてのスペックが高過ぎてまともに勝利することすら大変だった」


 ヴァングレイの方はノエリアを攻略したらしい。


「では、ヴァングレイ様とシャート様の攻略情報を元にまだ見ぬスーパーハーレムルートの道筋考えてみますわ。……ちなみに、私はヴァングレイルート攻略完了ですわ!」


「…………ロゼッタルートになかなかは入れずにどうしようかと思案しているところだ」


 うん、楽しんでくれているようで何よりだな。


 異世界カオスに変化し、ロゼッタの尽力で到達したもう一つのハッピーエンド(当初のハッピーエンドスーパーハーレムルートとは少し違うけど……)。

 攻略対象や主人公、悪役令嬢やライバル令嬢が協力しながら乙女もう一つのゲーム自分達の物語を攻略していく……その楽しそうな姿を見れただけで、この企画を企画した意義があったと思う。


 さて……俺も少し楽しむとしましょうか。

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