3.偽物の戦女神が襲ってきまして。

 異世界ガイア生活二日目 場所浮遊島アースガルズ・イース


 なんかお客様が来たな……って出て行ったら野生? の女神様がいた。


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アーゥティルキフォ=ヌワール=アッシュドゥーフ

筋力:1000000

耐久力:1000000

神威:1000000

邪耐:1000000

敏捷:1000000

体力:1000000

知力:1000000

幸運:1000000

技能:剣技[+一刀流][+斬撃速度上昇][+抜刀速度上昇][+無拍子][+飛斬撃]・神威操作[+侵食速度上昇][+侵食範囲向上][+侵食距離向上][+連続発動][+複数同時発動][+付加発動][+遅延発動][+神威放射][+神威圧縮][+遠隔操作][+体力変換][+治癒力変換]・神威回復[+高速神威回復][+超速神威回復][+瞑想]・精霊術【+闇属性適性】[+侵食速度上昇][+侵食範囲向上][+侵食距離向上][+発動速度上昇][+威力上昇][+持続時間上昇][+連続発動][+複数同時発動][+付加発動][+遅延発動]・神殺しの闇・憑依・甘言・時空遍在・鬼化[+堕チタモノ]・法則書換[+異界の天使]・晶生成[+異界の天使]

所持品:晶剣ゴッドスレイヤー・戦女神の戦衣(模倣)

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 黒の戦女神アーゥティルキフォ=ヌワール=アッシュドゥーフ……っぽいお姉さん。でも、背中に水晶っぽい羽を持っているから別人だよね? 名前一緒だけど。


 ってか、どっかで見たことがあるような水晶なんですけど。

 透明な結晶体の内部を血液のように光が流れている……うん、骨じゃないし、翼竜じゃないけど間違いない。


 訂正、野生のアンゴ●モア? が現れた。


『貴方ですね、ンュチーォフを倒した冴えない男は』


「〈流転する世界の理ウェリタス・デ・ゼッサント〉の使徒……ってことであっているか? 待ってたよ。お前らが動くのをな」


『奇遇ですね。わたくしも貴方のことを探していました。――この世界に来た雷神。匿っているのは貴方ですね。あれを差し出すのであれば、見逃してあげましょう』


「へぇ、異世界の唯一神をコイツ扱いね。……あんまり身の程を弁えないでいると、逆鱗に触れることになるぞ。いや、もう触れているか。……俺は口で言っても分からない脳筋と賢いことを鼻にかけた天才君が大っ嫌いだ。だけど、よ。こんなモブキャラをライバルと言ってくれた、あの雷神様には多少なり愛着が湧いているんだ。……ウコンや戦女神に手を出すというなら、分かっているよな? 覚悟はできているんだよな? このバグったモブキャラと全面戦争をする覚悟が」


 エルダーワンドを取り出し、刀剣の形に変形させる。


『――愚かな。神に絆された哀れな人間よ』


「哀れなのはお前らの方だと思うけどな。……言葉を弄すな。歴史が物語っているだろう? 勝てば官軍、負ければ賊軍。武力で世界の命運を決める以上、正義ってのは勝った方にある。お前達が正義かどうかは戦えってみれば分かると思うけどな、女神様・・・


『――キサマァ!!』


 凄い。「女神様」って表現が最大の侮辱になるってことも本当にあるのか。世界が変われば常識は変わるみたいだな。

 自らが忌み嫌う神と同列に扱われることがどれほどの侮辱となるのか、今の反応を見れば一発で分かる。……戦女神アーゥティルキフォの形を取っているのに?


『――望み通り神より先にキサマを葬ってやろう! 人間!!』


「人間じゃなくて能因草子。お前を倒す者の名だ――覚えて逝ってくれ! 【魔法剣・闇纏ヤミマトイ】」


Envelopperオンブルベ avecアベック les ténèbresテネーブル/Croissantクロワサン deドゥ luneリュンヌ envoyéアンヴォワイェ


『晶壁――〈吸魔の壁-Absolute Wizardry Shield-〉』


 A.T.フィー●ドならぬ、A.W.シールドか。

 魔力を吸収し、無効化する盾……なんとなくフレ●ズの水晶にも似ているなと思っていたけど、魔力吸収の効果を有していたか。


 攻撃魔法は通用しないと考えていい。間接的な攻撃はどうか分からないけど……少なくとも飛んでいるから〝滑転スリップ〟は効かないだろうな。スマホTARO作戦はチャレンジする前に失敗しました。

 まあ、魔法以外の選択肢もあるし、わざわざ魔法で攻める必要はないだろう。


 【魔法剣理】を解除し、【分解のオーラ】を宿して【浮遊者】と【転移ノ王】を使ってアーゥティルキフォの水晶の盾に肉薄、【究極挙動】で【唐竹】を放つ。

 ――はい、両断完了。


『盾を砕いたくらいでいい気にならないでください。晶縛――〈結晶の鎖-Absolute Crystal Chain-〉』


 【殺気圏ノ王】を発動して結晶の鎖を切り捨て、【転移ノ王】でアーゥティルキフォの正面に飛ぶ。


『わたくしはまだ負けた訳ではありません! 鬼化! 晶糸剣!!』


 アーゥティルキフォを黒いオーラが包み込み、その姿を変化させていく。

 頭に二本の角を生やし、黒いオーラを爆発させ、糸のように極限まで細くした晶剣ゴッドスレイヤー? を振るうアーゥティルキフォ。


『な……何故! 何故切れない!!』


 黒いオーラが揺れ、アーゥティルキフォの目が動揺の色に染まる。


「切れる訳がないだろう? お前達とは次元が違うんだから。そうだな……霊体と実体の周波数の違いみたいな? なんかだいぶ違う気がするけど。人間? 魔人族? 魔族? 亜人種? 神? 天使? 悪魔? んなもん関係ないよ。堕ちてオニになったから超越者デスペラードを倒せるなんて御都合主義が通るなら超越者デスペラード超越者デスペラードじゃない。因果を超越し限界を超えた存在に、ただ堕ちただけ・・・・・で勝てると思うな、女神の偽物。――concasserコンカッセ!!」


 アーゥティルキフォ、撃破。新手はいないみたいだし、浮遊島アースガルズ・イースに結界を張って〈流転する世界の理ウェリタス・デ・ゼッサント〉の使徒が入ってこれないようにしておくか。

 ……どれだけ頑張っても破られる気がするけど。って、縁起でもないこと考えている暇があったら思いつく限り手を尽くせって? 勿論だよ。



「草子さん、どうしましたか……って、アーゥティルキフォ様!!」


『何!? アーゥティルキフォだと!!』


 アーゥティルキフォの亡骸を抱え、浮遊島アースガルズ・イースのホテルに戻る。

 ホテルで出迎えてくれたのは、驚いた表情のヱンジュとツバキ、戦女神達だった。


「少し前にアーゥティルキフォと交戦しました。ンュチーォフとほとんど同じ力を感じなので、間違いなくンュチーォフと同種の存在でしょう」


『〈流転する世界の理ウェリタス・デ・ゼッサント〉……ですわね』


『……私達の同胞を玩具のように弄びよって! 許せない!!』


 インディアースの声音は冷たく、サファリアの言葉には激しい怒りが込められている。


「ですが、タイミングが良かった。〈流転する世界の理ウェリタス・デ・ゼッサント〉の目的が掴めたことでこちらも動きやすくなりましたし、偽物のアーゥティルキフォの亡骸を得ることができました」


『何が良かっただ! 草子、お前には分からないのだろう。同胞を玩具にされた苦しみが』


「ソレイフィア様、落ち着いてください。これでようやく本物のアーゥティルキフォ様の蘇生の光明が見えたのですよ?」


『……アーゥティルキフォの復活ですか?』


 テルミヌスにとって、アーゥティルキフォは対をなす存在。きっと、アーゥティルキフォに対する思いは戦女神の中で最も強いのだろう。

 その目は強い希望に満ち溢れている。


「あっ、断っておきますが完璧に復元するのは無理ですよ。アーゥティルキフォ様は破壊され、分割させられてンュチーォフを構成する要素の一つになっていました。……今から、偽物のアーゥティルキフォの中にあるアーゥティルキフォの部分を取り出します。そこに皆様の神威を注ぎ込むことで、失った部分を補う……理論上はこれでアーゥティルキフォと呼べるものが復活しますが、寸分違わず同じにすることはできません。欠けた部分は戻せませんから」


『……それで十分です。草子様のお陰で私達は九曜の家の敵討ちをすることができました。それだけでも十分ですのに、草子様は私達が眠っている間に壊されてしまった最後の同胞まだお救いくださろうとしている。……よろしくお願い致します』


 エメレティス様、本当に欲がないな。完璧なアーゥティルキフォを取り戻したいと駄々をこねることだってする権利はあると思うけど。

 勿論、そんなことは無理だ。まず、俺が二体のンュチーォフを消滅させてしまっているからね。


「では、ご了解を頂けたということで早速施術を開始します」



 まずは、【貪食ト銷魂之神】を使いアーゥティルキフォを捕食する。

 次に【叡慧ト究慧之神】の技能統合分離作成スキル・パーフェクターに統合された【分離】を使い、純粋なアーゥティルキフォの魂だけを取り出す。


「皆様、よろしくお願いします!!」


 そして、俺、ヱンジュ、ツバキ、テルミヌス、ソレイフィア、トワイライナ、トパーシュ、エメレティス、サファリア、アメジェス、インディーアスで神威を注ぎ込む。


 戦女神と二人の精霊の巫女が結集した神威は膨大であっという間にアーゥティルキフォを復活させた。


『…………ここ、は。……テルミヌス、ソレイフィア、トワイライナ、トパーシュ、エメレティス、サファリア、アメジェス、インディーアス……みんなが揃っているのって何年ぶりでしょう? ……それに、どうしたのですか? 泣きそうな顔をして』


 どれほどの記憶混濁があるか予想がつかなかった。

 もしかしたら、テルミヌス達のことを忘れているかもしれないと思ったけど、そういうことは無かったみたいだね。


「お久しぶりです、アーゥティルキフォ様……私達のこと、覚えていらっしゃるでしょうか?」


『ごめんなさい……神威の気配が七曜家の人に似ている気がするんだけれど……思い出せないわ』


 戦女神達は悠久の時を共に過ごしている。例えずっと側にいないとしても付き合いは長い筈だ。

 一方でヱンジュとツバキは彼女達にしてみれば一瞬に限りなく近い短い時間を共に過ごした相手――そりゃ、どちらが記憶に多く残るかは誰にだって分かるよな。


「……そうですか。……初めまして、七曜ヱンジュと申します。こっちは妹のツバキです。改めて、よろしくお願い致します」


『ヱンジュさんに、ツバキさんね。必ず覚えておくわ』


 まあ、これで戦女神が全員復活したか。

 その後、俺達はアーゥティルキフォに自己紹介をした。

 なんか、俺のことを見てアーゥティルキフォが絶句していたように見えたけど多分気のせいだろう。


「ということで、今のアーゥティルキフォ様は記憶のほとんどを失っている状況にあります」


『申し訳ございません。私が不甲斐ないばっかりに……。今の私には封印された時の記憶はありません。一人だけ復活させられたことも忘れてしまっています……犯人が誰か分かればお力になれたのですが……』


「アーゥティルキフォ様、貴女が謝る必要はありません。全部は無理ですが、記憶を集めてきます。方法は貴女を復活させた時と同じで、偽物のアーゥティルキフォからアーゥティルキフォ様の部分を分離、それをアーゥティルキフォ様に吸収して頂くという方法を取らせて頂きます」


『……草子お兄ちゃん。〈流転する世界の理ウェリタス・デ・ゼッサント〉の討伐、私達にも参加させてくれないかな?』


「トワイライナ様、お気持ちは嬉しいですが今回はご遠慮頂きたいと思います。皆様についても同様です。……本日、この時間を持って皆様を浮遊島アースガルズ・イース内に監禁致します。この戦争が終わるまで異世界カオスと浮遊島アースガルズ・イース以外への立ち入りを禁止しますので、そのおつもりで」



 ついにモブキャラは犯罪に手を染めてしまった!

 女性十六人(+男三人)を拉致監禁だ!! やべえよ! 禁固刑確定だよ!!


 ってのは冗談で――。


『……どうして、私達が監禁されないといけないのかしら?』


 ……ユエの視線が突き刺さる。


「まず、理由の一つは交戦した偽物のアーゥティルキフォですが、あれは全ての魔法と精霊術を無効化する結晶を自在に生み出し、操ることができることが判明しました。ヱンジュさん、ツバキさん、戦女神の皆様と偽物のアーゥティルキフォの相性は最悪です」


 フェアボーテネの力を十全ではないとはいえ使えるようになったツバキと魔法と精霊術を無効化する結晶との相性は最悪だ。

 《概念魔法》の中には通用するものがあるかもしれないが、【無限の魔力】を持たないツバキではジリ貧だ。


「ジューリアさん、裕翔さん、美春さんの三人については魔法以外の選択肢はあるけど、この浮遊島アースガルズ・イースのために留まってもらいたい。一応結界は張ったけどどこまで通用するか分からないからね。そして、最大の問題はウコン様です」


 ≪何の問題があるんや? わいの技は魔法でも精霊術でもないぞ≫


「敵の目的はウコン様、貴方です。〈流転する世界の理ウェリタス・デ・ゼッサント〉は神殺しを――貴方を殺すことを望んでいる。そんな奴らの前に出るとか莫迦ですか? いや、脳筋でおバカなことは知っていますが……」


 ≪一々酷いな。わいは脳筋やんけ! たや、考えるよりも先に動いた方がはよ解決すると思っとるだけや≫


「それを脳筋だと言っているんだよ!!」


 女性陣+裕翔、メルドが首肯してくれた。最早、ウコン=脳筋は俺らの共通認識となったといっても過言ではないだろう。


 俺は皮の袋からステータスプレートを取り出した。


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能因草子 (永遠の)16歳 男 レベル:1000

天職:運命の特異点・必勝の神殺し・終わらせる者・魔導の頂点・慈愛の大聖女・精霊の巫女姫・人の形をした厄災・全てを見通す聖眼・万象を解析する者・異界からの来訪者(禍殃) 職業:冒険者(金) サブ職業:―

筋力:Unmeasurable

耐久力:Unmeasurable

魔力:Unmeasurable

魔耐力:Unmeasurable

神威:Unmeasurable

敏捷:Unmeasurable

体力:Unmeasurable

知力:Unmeasurable

幸運:Unmeasurable

技能:言語理解・神殺し・聖眼[+精霊視Ⅻ][+妖精視Ⅻ][+ 怪異看破Ⅻ][+妙見Ⅻ][+邪心看破Ⅻ][+視力向上Ⅻ][+視界向上Ⅻ][+能力看破Ⅻ][+解析Ⅻ]・剣技[+一刀流][+二刀流][+六刀流][+千刀流][+大剣術][+双大剣術][+斬撃速度上昇][+抜刀速度上昇][+無拍子][+飛斬撃][+究極挙動]・全属性魔法[+闇属性効果上昇][+発動速度上昇][+効果上昇][+持続時間上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動][+消費魔力減少][+持続時間上昇][+侵食速度上昇][+詠唱短縮][+無詠唱]・回復魔法[+回復効果上昇][+回復速度上昇][+イメージ補強力上昇][+浸透看破][+範囲回復効果上昇][+遠隔回復効果上昇][+状態異常回復効果上昇][+消費魔力減少][+魔力効率上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動][+付加発動]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+効率上昇][+魔素吸収][+身体強化]・戦闘神楽【+精霊剣舞】 [+顕現速度上昇][+刀剣化速度上昇][+刀剣生成速度上昇]・剣技[+一刀流][+二刀流][+斬撃速度上昇][+抜刀速度上昇][+無拍子][+飛斬撃]・精霊術【+火属性適性】[+発動速度上昇][+威力上昇][+持続時間上昇][+連続発動]・【+水属性適性】[+発動速度上昇][+威力上昇][+持続時間上昇][+連続発動]・【+氷属性適性】[+発動速度上昇][+威力上昇][+持続時間上昇][+連続発動]・【+風属性適性】[+発動速度上昇][+威力上昇][+持続時間上昇][+連続発動]・【+地属性適性】[+発動速度上昇][+威力上昇][+持続時間上昇][+連続発動]・【+聖属性適性】[+発動速度上昇][+威力上昇][+持続時間上昇][+連続発動][+回復効果上昇][+回復速度上昇][+状態看破][+回復範囲上昇][+回復距離上昇][+状態異常回復効果上昇][+消費神威削減][+神威効率上昇][+連続発動][+複数同時発動][+付加発動][+遅延発動][+浄化速度上昇][+浄化範囲向上][+浄化距離向上]・【+闇属性適性】[+侵食速度上昇][+侵食範囲向上][+侵食距離向上][+発動速度上昇][+威力上昇][+持続時間上昇][+連続発動][+複数同時発動][+付加発動][+遅延発動]・【+剣属性適性】[+顕現速度上昇][+刀剣化速度上昇][+刀剣生成速度上昇][+浄化速度上昇][+浄化範囲向上][+浄化距離向上][+連続発動][+複数同時発動][+付加発動][+遅延発動]・神威操作[+浄化速度上昇][+浄化範囲向上][+浄化距離向上][+侵食速度上昇][+侵食範囲向上][+侵食距離向上][+連続発動][+複数同時発動][+付加発動][+遅延発動][+神威放射][+神威圧縮][+遠隔操作][+体力変換][+治癒力変換]・神威回復[+高速神威回復][+超速神威回復][+瞑想]・気配遮断[+偽影][+幻惑]・物理耐性[+金剛][+衝撃緩和]・全属性耐性[+闇属性効果上昇]・高速魔力回復[+瞑想]・縮地[+爆縮地][+神速縮地][+重縮地][+豪脚][+震脚][+無拍子]・九戦女神の加護[+戦女神能力限定使用]・飛行・浮遊・分解能力・銀翼魔弾・魅了・無限の魔力・擬似限界突破・光剣生成・熾剣生成・神殺しの闇・憑依・甘言・時空遍在・鬼化[+堕チタモノ]・法則書換[+異界の天使]・晶生成[+異界の天使]・惑星魔法・空間魔法・時間魔法・非物質魔法・改変魔法・情報魔法・因果魔法・概念魔法

所持品:エルダーワンド・万天照らす日輪の大杖アマテラス龗神の宿し冽流の宝剣クラオカミノカミ雷神の宿し霹靂の迅槍タケミカヅチ焱神の宿し爀焔の刀剣ヒノカグツチ……

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『自慢かしら?』


「いや、自慢するつもりは更々ないよ。こんな成立していないステータスプレート、壊れているようにしか見えないだろう? というか、これだと俺が化け物みたいじゃないか??」


「……化け物だよな?」


「化け物だよね?」


「化け物ですよね?」


 ……もうやだ。ここにいる全員の中で俺の扱いが化け物って……。

 こんな人畜無害なモブキャラを捕まえて……酷いなァ、心外だなァ。


「問題はこの神殺しってスキルだ」


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・神殺し

→神という共通属性による量子共振、その同調状態における因果律への限定干渉を可能とする技能だよ! 神の運命を捻じ曲げて強制的に死を確定することができるよ! この概念に到達するためには共通属性を満たすために神と同等かそれ以上の存在になる必要があるよ! 発動するためには直接的に殺害を行うための行動をとることが必要だよ! 神であれば、実体が無かろうと、並行世界に偏在してようと関係なく殺すことができるよ! 神を殺すためだけの力だから神以外には効果がないよ!

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「敵は自称『神がいなくても世界は廻る。故に理不尽な運命を与える支配者気取りの神から世界を解放すべきだ、という信条を掲げる救世組織』――〈流転する世界の理ウェリタス・デ・ゼッサント〉。そのトップなら神殺しくらい持っていてもおかしくない」


 【叡慧ト究慧之神】で調べた時から確信していた。

 この技能と神の相性は最悪――神殺しを使う相手と戦う時に神を連れて行ってはいけない。


「…………でも、なんで俺が持っているんだろう? 俺、神じゃないから共通属性を持ってないし……ってか、これって〝無色クリアドラゴン〟の権能? 無職だから会得できたとか?」


 ≪草子……オノレ、ほんまは気づいとるんやろ? オノレが何故、必勝の・・・神殺しか。神っちゅう共通属性を得るっちゅうことは、自身も神になるっちゅうことや。せやから、神殺しは神にしかできひん……っちゅう訳ではあれへん。神と同等かそれ以上・・・・……そもそも、オノレに関しては因果律に干渉する必要すれへんのや。神よりも格上の存在が神に負ける筈があれへんやろ? つまり、そういうことや≫


 “神よりも上位の存在が神に負ける筈がない”という一つの固定された結末に向かって因果律が収束する。

 つまり、俺は神よりも上位の存在だから必勝――故に神に負けることはあり得ない、と……ウコンはそういうことが言いたいんだろう。


 いや、俺は神より強くないけどな? バグっただけのモブキャラだし。

 俺のことを買いかぶり過ぎだと思うけどな。神様も異世界ガイアも。


 この神殺しという技能は、神よりも上位の存在が使うことで必勝の力と化す。

 もし、ウコンの言うことが事実であるのなら、神を殺すために神となった存在――〈流転する世界の理ウェリタス・デ・ゼッサント〉の首魁を一方的に蹂躙することが可能になる……そんな上手くはいかないと思うけどな。


「とりあえず、浮遊島アースガルズ・イース常闇の森テネブラエ・ネムスを繋ぐ異世界間転移門トランスポートゲートは設置しておく。これで異世界カオスと異世界ガイアは自由に行き来できる。まあ、致し方ないとはいえ監禁している訳だからね、不自由な暮らしはさせられないよ。……んじゃ、異世界間転移門トランスポートゲートを設置してから最終決戦に行ってくるんで、後のことはよろしくお願い致します」


 通常の〝移動門ゲート〟を軸に《時間魔法》と《時間魔法》、更には《概念魔法》までつぎ込んだ渾身の力作だ。

 異世界カオスと異世界ガイア――時間の流れが異なる世界を同じ時間の動きと仮定し、二つの世界を繋げるという意味不明な所業を俺の用意した術式は可能としている。

 レベルとしてはクリ●タルキーよりも遥かに上だろう……汎用性はこっちの方が低いけど。


 常時展開型の〝移動門ゲート〟――その莫大な魔力はマルドゥーク文明が異世界カオスに辿り着く前にエネルギー源として使っていた擬人的な特異点を作り出して動力とする過観測式次元エンジンと、宇宙エネルギーを超光速のタキオン粒子へ圧縮変換して動力とする波動エンジンの二つを作り出し、それを魔力へと変換する術式を利用し、使用することが可能となっている。


 ちなみに、この過観測式次元エンジンというのは曲者で、全く同じエンジンが二機稼働した場合、特異点同士がつながりエネルギーが流出すると世界が滅ぶという鬼畜仕様。異世界ガイアと異世界カオスを繋げてしまったので、どちらかの世界で過観測式次元エンジンを使用すれば間違いなくどちらの世界が滅ぶ。


 ちなみに機動要塞、飛空戦艦、海洋母艦のエネルギー源は【無限の魔力】……うん、異世界カオスのスキルは恐ろしいな。


 さて、準備もできたことだし行きますか。――〈流転する世界の理ウェリタス・デ・ゼッサント〉、俺は必ずお前達を倒す!!

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