4.遂に二人の神殺しが邂逅しまして。

 異世界ガイア生活二日目 場所異世界ガイア、某所上空


 浮遊島アースガルズ・イースを出発した俺は、異世界ガイアの各地を飛行しながら巡っていた。


 目的は“神殺し”のために自然神狩りを行っている〈流転する世界の理ウェリタス・デ・ゼッサント〉を見つけ、討伐すること。


 いつどの自然神が狙われるか分からないので、【叡慧ト究慧之神】を頼りに敵を見つけていく。


 敵は透明な結晶体の体を持ち、内部を血液のように光が流れている天使――神滅の窮天使ストゥディオーススと、黒の戦女神の姿と透明な結晶体の翼を持つアーゥティルキフォ=ヌワール=アッシュドゥーフの偽物。


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アーゥティルキフォ=ヌワール=アッシュドゥーフ

筋力:1000000

耐久力:1000000

神威:1000000

邪耐:1000000

敏捷:1000000

体力:1000000

知力:1000000

幸運:1000000

技能:剣技[+一刀流][+斬撃速度上昇][+抜刀速度上昇][+無拍子][+飛斬撃]・神威操作[+侵食速度上昇][+侵食範囲向上][+侵食距離向上][+連続発動][+複数同時発動][+付加発動][+遅延発動][+神威放射][+神威圧縮][+遠隔操作][+体力変換][+治癒力変換]・神威回復[+高速神威回復][+超速神威回復][+瞑想]・精霊術【+闇属性適性】[+侵食速度上昇][+侵食範囲向上][+侵食距離向上][+発動速度上昇][+威力上昇][+持続時間上昇][+連続発動][+複数同時発動][+付加発動][+遅延発動]・神殺しの闇・憑依・甘言・時空遍在・鬼化[+堕チタモノ]・法則書換[+異界の天使]・晶生成[+異界の天使]

所持品:晶剣ゴッドスレイヤー・戦女神の戦衣(模倣)

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神滅の窮天使ストゥディオースス

筋力:120000000

耐久力:120000000

魔力:120000000

魔耐力:120000000

敏捷:120000000

体力:120000000

知力:120000000

幸運:120000000

技能:双大剣術[+斬撃速度上昇][+無拍子][+飛斬撃]・全属性魔法[+発動速度上昇][+効果上昇][+持続時間上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動]・自己修復・瞬間移動・神速飛行・法則書換[+異界の天使]・時空切取[+異界の天使]・座標貫通[+異界の天使]・神殺しの闇・晶生成[+異界の天使]

所持品:晶双剣

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 神滅の窮天使ストゥディオーススは、異界の天使の集大成のような存在だった。


 炎で作り上げられた代行の天使セラフィムを凌駕する敵。その力は《概念魔法》の元となった異界の天使本来の力三つ――法則書換、時空切取、座標貫通を全て有するという規格外。


 いや、厳密に言えばそれ以上だ。


 フェアボーテネが模倣したに過ぎない三つの能力とは異なり、法則書換は肉体の完全な変換――瞬間的な進化を可能とし、時空切取は自らを素体とする必要すらなく異世界ガイアの記録に刻まれた全ての存在を過去・現在・未来のいずれかから召喚し、座標貫通は指定した座標に攻撃を発動するだけに留まらず、目標物以外を透過する効果すら有している。


 幸い、時空切取を使用してくることが無かったのは良かったが、最も厄介な座標貫通――目標物以外を透過する効果がウザかった。

 まあ、超越者デスペラード耐性で透過することはおろか、貫通することすらできないんだけどね。しかも、結晶が俺の身体にぶつかると俺の硬さに劣る結晶は砕け散るらしい……いや、硬いって何!? ただの男子高校生だよ!!


 現れた“神殺しの使徒”と偽女神を倒している間にブルックの町が見えてきた。いや、昨日ぶりだけど久々に来た気がするな。

 驚きの表情のまま固まる門番に会釈をしてから飛翔――とりあえず、商業都市カセドラの方を目指して飛んでみる。


 おっ、俺の優先討伐順位がかなり上がってきたみたいだな。

 神滅の窮天使ストゥディオーススや偽女神が自然神の討伐を中断して俺の方を優先的に討伐しようと攻撃を仕掛けてくることが多くなっている気がする。


Le Théâtreテアトル duドゥ Ultimeウルチム Grandグラン-Guignolギニョール/glacerグラセ flammeフランム


 竜の翼で飛び回り、張り巡らせた数百万の【粘鋼撚糸】に【法則之神】で凍冷焔華を纏わせ、全ての糸を攻撃に繰り出す。

 神滅の窮天使ストゥディオーススと偽女神を【貪食ト銷魂之神】で捕食し、純粋なアーゥティルキフォの部分と水晶を【分離】し、別々の時空間へと保存する。


 そんな感じで移動すること一時間弱、俺は商業都市カセドラに到達した。


「――今度は誰だ!! あの黒い女の手先か!!」


 門番は俺を見るなり俺を敵視し、魔法を放ってきた……まあ、そこまで強くないし超越者デスペラード耐性で防いで終わりだけど。


「Non non.俺は敵じゃないよ。金ランク冒険者能因草子――ほい、ステータスプレート」


 皮の袋からステータスプレートを取り出し、門番に投げる。

 門番、キャッチと同時に地面に埋まった……あちゃ、加減間違えた。


「た、確かに……金ランク冒険者に間違いはない。……全く、驚かせないでくださいよ。……それより、地面から抜いてください」


 必死になって門番を地面から引き抜こうとする門番二人……大きなカブなのだろうか? 俺も手伝うよ。


「しかし、黒い女か……まさか、アーゥティルキフォの偽物が俺以外にも攻撃を仕掛けているとはな」


「……草子さんはあれが何かを知っているのですか?」


「まあ、な。俺はアイツらを倒すために飛び回っている途中だ。……攻撃優先事項は多分俺に切り替わりつつある。まあ、随分連中の同胞を食ったからね。……あっ、この街にとばっちりが来ないように結界を張っておくよ」


「本当になんでもありですね、金ランク冒険者は」


 なんでもありじゃないよ! 万能な訳ないじゃん。だってモブキャラだもの。


「とりあえず、状況を確認したい。支部長に会ってくる。〝距離に隔てられし世界を繋ぎたまえ〟――〝移動門ゲート〟」


 結界を張ってから〝移動門ゲート〟を開いて自由組合冒険者ギルド カセドラ支部に飛ぶ。

 自由組合冒険者ギルドの中からは活気が失われていた。完全にお通夜ムードになっている。……どったの?


「やあ、草子君。一人かい?」


 ジョセフの言葉からも覇気が感じられない……というか、書類仕事放り出して真昼間にやけ酒してていいの?


「……どうしたんですか? なんか街の様子もどんよりですけど」


「君はいつもと変わらないね……実は少し前に黒い女が来たんだよ。で、三日以内に全ての人間が信仰を捨てなければ世界を滅ぼすと宣言した……無理に決まっているだろ!! 一体この世界にどれだけの敬虔なフェアボーテネ教信徒がいると思っているんだ! それに、自然神を信仰する者達もいる! もう、終わりだよ、終わり! あの女は天災級だ! あれが何体もいる……そんなの勝ち目がある訳ない!! 世界は滅ぶ、クエストをやったところで意味はない。自由組合冒険者ギルドは今、開店休業状態だよ」


 あ……とんでもないこと言ってきたな。

 無理難題だ、というかどうやって判定するんだよって話だ。

 証明のしようがない。信仰ってのは心の話で、外からは見えないのだから。


 しかし、世界を滅ぼすか……大胆に出たな。


「ジョセフ支部長の言う通りだ。奴らの――〈流転する世界の理ウェリタス・デ・ゼッサント〉の欲求は絶対に叶わない。例えこの世界の全てのものが信仰を捨てたとしても、この俺が武神ウコンや戦女神達を見捨てることなどあり得ないからだ。例え一時的な仲間であったとしても、仲間は仲間だ。手を出すことを許容する気は更々ない。俺は傲慢だからな。守れるものは全て守る」


「……ははは、どちらにしろ僕達には滅ぶ道しか残されて――」


「残念だったな、ジョセフ。〈流転する世界の理ウェリタス・デ・ゼッサント〉は三日も用意してしまった。俺は一日で連中を滅ぼす。お前達が言うところの黒い女――偽物のアーゥティルキフォと神滅の窮天使ストゥディオーススを全て倒し、敵の親玉を引きずり出す」


「……ははは、夢物語でしかないのに、何故君に言われると信じたくなってしまうのだろう? ……僕達にできることは何かあるかい?」


「ない……いや、強いて言うなら『全冒険者にアイツらに関わるな』と連絡をすることかな? ……俺の予想では俺しか〈流転する世界の理ウェリタス・デ・ゼッサント〉の親玉は倒せない。それに、偽物のアーゥティルキフォに苦戦しているようなモブキャラ以下、戦場にいても邪魔にならないよ」


「ははは……手厳しいね。分かった。全て君に託す――必ずこの世界を救ってくれ。能因草子英雄


「俺は英雄ヒーローじゃない、ただのバグったモブキャラだ」



 主人公が受け取るセリフを何故かモブキャラが受け取ってしまった。これは重大なエラーに違いない。

 急いで初期化フォーマットする必要がある気がするが、時間がないのでこのバグは無視することにしよう。


 しかし、異世界カオスだけでなく異世界ガイアにもバグが広まり始めたか。

 神界でも俺が英雄とか勇者とか神よりも上位の存在だとか厄災とか認識されているみたいだし……マズイな。本当にただのモブキャラなのに勘違いが広がり続けている。……いつか、重大なエラーを引き起こしそうだ。


 やることはさっきまでと変わらない。偽物のアーゥティルキフォと神滅の窮天使ストゥディオーススを倒し続ける――敵を倒し続けて親玉が出ざるを得ない状況を作り出す典型的な手段だ。


 ……かなり偽物のアーゥティルキフォと神滅の窮天使ストゥディオーススの数が減ってきている。

 後、一桁台? そろそろ親玉が出てくるか?


Le Théâtreテアトル duドゥ Ultimeウルチム Grandグラン-Guignolギニョール/gronderグランゼ brûlerブリュレ


 竜の翼で飛び回り、張り巡らせた数百万の【粘鋼撚糸】に【法則之神】で炎喰焔華を纏わせ、全ての糸を攻撃に繰り出す。

 さて、これで終わった……か。


 魔人族首都イビルフィストの上空に十個の黒いひび割れのようなものが現れ、広がっていく……近●民ネイ●ーが攻めてくるのだろうか? この状況で??


 現れたのは水晶の身体を持つ存在……と、ここまではいいのだが、翼がない。

 背には後輪を背負う、男とも女ともつかない美貌の存在。それが十体、俺の目の前に姿を現した。


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最終使徒ラストアポストルエヘイエー

筋力:∞

耐久力:∞

魔力:∞

魔耐力:∞

敏捷:∞

体力:∞

知力:∞

幸運:∞

技能:法則書換[+異界の神]・時空切取[+異界の神]・座標貫通[+異界の神]・神殺しの闇・晶生成[+異界の神]・思考加速[+異界の神][+思考型同時予測未来閲覧]・絆繋[+異界の神][+記憶情報共有]・瞬間移動[+転移]

所持品:晶杖

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最終使徒ラストアポストルヨッド

筋力:∞

耐久力:∞

魔力:∞

魔耐力:∞

敏捷:∞

体力:∞

知力:∞

幸運:∞

技能:法則書換[+異界の神]・時空切取[+異界の神]・座標貫通[+異界の神]・神殺しの闇・晶生成[+異界の神]・時空消滅[+消滅時空認識]・瞬間移動[+転移]

所持品:晶杖

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最終使徒ラストアポストルエロヒム

筋力:∞

耐久力:∞

魔力:∞

魔耐力:∞

敏捷:∞

体力:∞

知力:∞

幸運:∞

技能:法則書換[+異界の神][+会得能力複製][+会得能力贈与][+会得能力保存][+接触発動]・時空切取[+異界の神]・座標貫通[+異界の神]・神殺しの闇・晶生成[+異界の神]・瞬間移動[+転移]

所持品:晶杖

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最終使徒ラストアポストルエル

筋力:∞

耐久力:∞

魔力:∞

魔耐力:∞

敏捷:∞

体力:∞

知力:∞

幸運:∞

技能:法則書換[+異界の神]・時空切取[+異界の神]・座標貫通[+異界の神]・神殺しの闇・晶生成[+異界の神]・支配者[+覇気][+覇壊][+絶望支配]・瞬間移動[+転移]

所持品:晶杖

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最終使徒ラストアポストルエロヒム・ギボール

筋力:∞

耐久力:∞

魔力:∞

魔耐力:∞

敏捷:∞

体力:∞

知力:∞

幸運:∞

技能:法則書換[+異界の神]・時空切取[+異界の神]・座標貫通[+異界の神]・神殺しの闇・晶生成[+異界の神]・修復[+自己修復][+他者修復][+完全修復]・瞬間移動[+転移]

所持品:晶杖

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最終使徒ラストアポストルエロハ

筋力:∞

耐久力:∞

魔力:∞

魔耐力:∞

敏捷:∞

体力:∞

知力:∞

幸運:∞

技能:法則書換[+異界の神]・時空切取[+異界の神]・座標貫通[+異界の神]・神殺しの闇・晶生成[+異界の神]・魅了[+究極の美][+傾世][+美貌支配]・瞬間移動[+転移]

所持品:晶杖

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最終使徒ラストアポストルアドナイ・ツァバオト

筋力:∞

耐久力:∞

魔力:∞

魔耐力:∞

敏捷:∞

体力:∞

知力:∞

幸運:∞

技能:法則書換[+異界の神]・時空切取[+異界の神]・座標貫通[+異界の神]・神殺しの闇・晶生成[+異界の神]・即死[+因果攻撃][+過去攻撃][+現在攻撃][+未来攻撃][+並行世界攻撃][+死亡確定]・瞬間移動[+転移]

所持品:晶杖

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最終使徒ラストアポストルエロヒム・ツァバオト

筋力:∞

耐久力:∞

魔力:∞

魔耐力:∞

敏捷:∞

体力:∞

知力:∞

幸運:∞

技能:法則書換[+異界の神]・時空切取[+異界の神]・座標貫通[+異界の神]・神殺しの闇・晶生成[+異界の神]・攻撃必中[+因果干渉][+結果確定]・瞬間移動[+転移]

所持品:晶杖

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最終使徒ラストアポストルシャダイ・エル・カイ

筋力:∞

耐久力:∞

魔力:∞

魔耐力:∞

敏捷:∞

体力:∞

知力:∞

幸運:∞

技能:法則書換[+異界の神]・時空切取[+異界の神][+魂魄再現]・座標貫通[+異界の神]・神殺しの闇・晶生成[+異界の神]・魂魄支配[+思念支配][+思念誘導][+生死不問][+落憶]・瞬間移動[+転移]

所持品:晶杖

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最終使徒ラストアポストルアドナイ・メレク

筋力:∞

耐久力:∞

魔力:∞

魔耐力:∞

敏捷:∞

体力:∞

知力:∞

幸運:∞

技能:法則書換[+異界の神]・時空切取[+異界の神][+魂魄再現]・座標貫通[+異界の神]・神殺しの闇・晶生成[+異界の神]・虚無化[+攻撃動作][+意思力][+任意発動][+接触発動]・瞬間移動[+転移]

所持品:晶杖

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 ……突っ込ませて欲しい。何故、神を忌み嫌う存在が神の名を持つ存在……いや、最早異界の神そのものといえる存在を召喚したのか?


 いや、天使ってことは神の使い――つまり、神がいるという展開は何と無く想像してたよ?

 流石に生命の木セフィロトをセフィラを守護する神の名を持つ存在が出てくるとは思わなかったけど。


 となると、ラスボスは隠された意味として悟り、気づき、神が普遍的な物に隠し賢い者は試練として見つけようとした「神の真意」という意味を持つダアトに対応する存在か……いや、ダアトに対応する神はいない筈だし、当てはまるとしたら神聖四文字……んな訳ないよね。


 エヘイエーは、思考を加速させることによる未来視と自己と他者を同期することによる記憶の共有を行える。


 ヨッドは、時空消滅と消滅時空認識……消し飛ばした時間を自分だけが認識できるって感じか? どこの王様なクリムゾンさんだよ!!


 エロヒムは、法則書換を拡張した会得能力の複製、贈与、保存……豊穣●王シュプ・ ニグ●トかな? 接触発動ってことは効果を発動するためには触れる必要があるが……むむ? エヘイエーの同期機能を使えば触れる必要すらない!?


 エルは……多分圧倒的絶望を与え、絶望した存在を支配する能力かな?


 エロヒム・ギボールは、自己と他者の修復――つまりは回復役。


 エロハは、圧倒的美貌で他者を支配する……エルが鞭ならエロハは飴というとことか?


 アドナイ・ツァバオトは、過去、現在、未来、並行世界、因果律を同時に攻撃して死亡を確定させるってことかな? どこのメ●ヴィッチだよ!! ってか、消滅じゃなくて即死なんだな。


 エロヒム・ツァバオトは、攻撃の必中という結果が因果律への干渉で決定されることで、攻撃が必中するって能力か……うん、でも単体で運用しても意味はない気がする。アドナイ・ツァバオトと相互リンク状態にすれば運用できるかって……って思考がカードゲームが世界存亡にかかわるのが普通なカードゲームアニメ脳になってしまっていた!? ……うん、冷静に考えると色々とおかしい。


 シャダイ・エル・カイは、魂魄支配。覚醒版中●恵里かと言いたくなるような完璧な降霊術師コンボ(※但し、生者も含む)。

 強いんだろうけど、このメンバーだとあんまり強い気がしないような……。


 アドナイ・メレクは、攻撃してくる相手の動作や意思の力をゼロに戻す能力……間違いなくヨッドと対をする……あれ? 第一のセフィラ・ケテルと通じ合っている筈だから位置がおかしい?

 能力を発動するためには接触する必要がある上に、任意発動――つまり発動を意識する必要がある……鎮魂歌レクイエムに比べたら欠陥が多いな。自分に向かってくる敵意を無力化する効果のオート機能が封じられている訳だし。


 明らかに強敵だ。というか、どう考えてもラスボスクラスだ。そんなものがわんさかわんさか……舐めとんのか?


 ステータスは安定の∞……無限大ってなんだろねー。って時々思う。きっとステータスで表記される以上数字なのだろう……それだとUnmeasurableも数字なのかって論争が起こりそうだけど。


 ……まあ、いくらステータスが高かろうと俺には関係ないけどね。


「〝距離に隔てられし世界を繋ぎたまえ〟――〝移動門ゲート〟」


 皮の袋からエルダーワンドを取り出して刀剣の形に変化させ、〝移動門ゲート〟を円形状に十枚ほど開き、【超過之神】、【疾走ノ王】、【究極挙動】を【虚々実々】で無理矢理繋ぎ合わせ、身体のリミッターを外して圧縮強化し、〝移動門ゲート〟に飛び込む。


 光速の領域を超えた速度でエルダーワンドを前に突き出し、まずはエヘイエーに突撃。


 えっ? 光速を超えたところで神殺しは無理だって?

 そのままの状態だとどっちが勝つか分からないけど、こちらには神殺しがある。


 神殺しの効果――それは、「神という共通属性による量子共振、その同調状態における因果律への限定干渉を可能とし、神の運命を捻じ曲げて強制的に死を確定する」というもの。

 そして、そのためには「直接的に殺害を行うための行動をとることが必要」となる。


 ぶっちゃけ、変形させていないエルダーワンドを一振りすれば、この条件は満たされる。

 殺意・・を持って撲殺しようとする・・・・・・・・ということは、「直接的に殺害を行うための行動をとる」という条件を満たすことになるから。


「Gott ist tot(神は死んだ)……しかし、まだ後九体残っている模様」


 勿論、俺の攻撃はこれで終わらない。エヘイエーを貫いて向かった先に〝移動門ゲート〟を出現させ、ヨッドの前に開く。

 神を貫いては〝移動門ゲート〟を開いて神を貫き、まあ〝移動門ゲート〟を開いては神を貫く――その繰り返し。


 神殺しの勝利だな。十柱の神撃破。――ということで戴きます。


「異界の神を喰らい尽くせ、【貪食ト銷魂之神】!!」


 ふう、ご馳走さまでした。……さて、もうこれで〈流転する世界の理ウェリタス・デ・ゼッサント〉の手札は無くなった筈だし、親玉自ら出てくるしかないと思うんだけど……おっ。


 さっきの神々のものと比べ物にならないほどの巨大な黒いひび割れのようなものが現れ、異界の門を形作る。


「うふふ、初めまして、神に絆された愚かな異世界人さん。私は〈流転する世界の理ウェリタス・デ・ゼッサント〉の枢機卿――ミュレニム=セイント=エンシェルテよ」


 波打ち煌めく純銀を溶かし流したような銀髪、全てを見通すように鋭くやや吊り気味に見開かれたコバルトブルーの瞳。白磁や雪も斯く白く滑らかな肌、剥き出しの肩、大きく開いた胸元から覗く豊かな双丘、スリットから伸びるスラリとした細い線の美脚、すらりと伸びる手足と白魚のような指、艶かしいその肢体はフェアボーテネがツバキの身体を奪い作り上げた女神の姿形に匹敵、あるいは凌駕するほどの美を体現している。

 その身に纏うのは純白の修道服――しかし、大胆に改造されたそれからは、修道服の持つ清楚という性質が完全に失われている。

 にも関わらず、清楚で厳格な性質が漂うという矛盾。その矛盾すらも呑み込み、絶対的な美という概念へと昇華している。

 背には水晶で作られた三つの後輪が浮かび、銀髪の上には水晶で作られた天使の輪が浮かび、水晶の中は血液のように光が流れている。


 異世界ガイアで最も神を憎む少女――ミュレニムは水晶の剣を創り出し、右手に構える。

 そして、異世界ガイアの神の存亡をかけたひとりぼっち最終戦争が幕を開けた。

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