文学少年(変態さん)は世界最恐!? 〜明らかにハズレの【書誌学】、【異食】、にーとと意味不明な【魔術文化学概論】を押し付けられて異世界召喚された筈なのに気づいたら厄災扱いされていました〜
1.魔法少女が自称〝神〟を圧倒しまして、勝っちゃいまして。
第8.5章3章 ~必勝と叛逆――二人の神殺しが激突します~
1.魔法少女が自称〝神〟を圧倒しまして、勝っちゃいまして。
【三人称視点】
「私が終わらせてあげるわ。神などという害悪にしかなり得ない存在も、それを盲目的に信仰する愚かな者達も全て――」
漆黒に染まった異界の中心で、ミュレニムは不敵な笑みを浮かべた。
彼女の周囲では《天使》と《精霊》、そして〝神〟たるフェアボーテネを巻き込んだ〈天霊対戦〉を生き残った無数の異界の天使達が跪いている。
フェアボーテネとの戦争で、《天使》側と《精霊》側は多くのものを失った。
《精霊》側は精霊の頂点たる戦女神と戦女神に仕える巫女を失い、頂点を失った精霊達は統率を失い野良へ堕ち、更に魔物を喰らったことで堕ちた精霊――最早精霊とは呼べぬ存在となった。
フェアボーテネによって聖域を蹂躙され酷く絶望した自然神達は、フェアボーテネへの激しい恨みから禍穢神となり、世界の守護者である筈の存在は世界を破壊する魔ノ物と化している。
《天使》側はフェアボーテネにほとんどの天使を奪われ、“神の使徒”とされてしまった。
幸い、《天使》の権能までは奪われていないが、フェアボーテネは権能は《概念魔法》で再現し、《天使》達の生前の力を完全とはいえないが復活させられてしまっている。
ミュレニムの手中にあるのは、〈天霊対戦〉を生き残った異界の天使と、新たにミュレニムが創り出した異界の天使達だけだ。
その数もガイア侵攻直後の半数以下――どれほど戦力が減退しているかは一目瞭然だろう。
「法則の書き換え……フェアボーテネはその真の力を知らぬまま不完全な形で模倣した。――本当に良かったわ。知られてしまえば、私達に勝ち目は無くなっていた」
法則の書き換え――その力は、精霊術や魔法を無効化するためのものなどではない。
その正体は、どんな世界でも異界の天使達が適応できるようにするための適応能力だ。
「――ンュチーォフ」
『はい、なんデしょう?』
「ずっと思っていたんだけど、貴方ってウザいわね。書き換えてあげるわ」
『……そレは、あまりニ酷過ぎマセンか!?』
「異世界の冴えない男に負けたお前に逆らう権利があると本気で思っているの?」
時空に偏在する全てのンュチーォフを異界に召喚させ、法則の書き換えで書き換えていく。
この世界の守護者だった、神の姿に――。
艶やかな濡羽色の髪を持つ漆黒のマーメイドラインドレスを身に纏った美しき女神――黒の戦女神アーゥティルキフォ=ヌワール=アッシュドゥーフの名と姿を与えられたンュチーォフだったものは婉然と微笑んだ。
「一刻の猶予もならないわ。別の世界から新しい神がこの世界に降り立った。……このまま負けを恐れていつまでも動かなければ、遠くない未来――この世界は神の食い物にされる。そんなこと、許される訳がないわ! だから、そうなる前に終わらせましょう。この世界を――」
ミュレニムは異界の天使に触れ、その本質を書き換えていく。
透明な結晶体の体を持つ終焉をもたらすために生み出された最強の天使へと。
その書き換えは異界の天使だけではなく、アーゥティルキフォや自身にまで及び――。
「黒は反転し、白となる。――うふふ、これこそ神殺しに相応しい力だわ」
ゴシックドレスは純白の法衣へと変わり、背には水晶で作られた三つの後輪が浮かぶ。
白く染め上げられた髪の上には水晶で作られた天使の輪が浮かび、水晶の中は血液のように光が流れている。
その姿は、奇しくもミュレニムが憎む
◆
異世界ガイア生活二日目 場所神域
「……草子さん、この状況で何をしているんですか?」
「――貴様、我を愚弄しているのか!!」
うん、敵味方問わず怒り心頭に発しているようだけど、変身シーンに攻撃しないっていうテンプレはきっちり守ってくれたみたいだ……攻撃してくれたって良かったんだよ? 勿論、攻撃してきたら皆殺しにするけど。
「そういえば、魔法少女カリエンテを捕食してから力を試して無かったな……と思って。ついでだしこの場で試しちゃおうと。……女を馬鹿にして貶めてきた奴が女に倒されるってなかなか風刺が効いていていいんじゃないかな? まあ、俺は男だけど」
「
ジューリアの無表情が怖い。……ジューリアってたまに何考えているか分からないから怖いんだよね。
クールビューティに見えて中身アレな人もいたし。
「…………ペックチュ。誰かが噂したのかしら?」
……美春、ベタが過ぎる。それ、まるで自分のことだって証明しているようなものだぞ。……というか、意外に可愛らしいくしゃみをするんだな。
「見るがいい! これが神の力だ!! ――《概念魔法・光輪》」
ゴッドハン●・クラッシャーか! とツッコミを入れたくなるセリフと共にフェアボーテネの背後に九つの光の輪が現れ、後輪から無数の光球を顕現する。
光球が俺達目掛けて殺到する。対して俺は――。
「――刻すら凍れ、絶対零度の劫火――《神代概念魔法・
“神の使徒”を喰らうことで解析することができた《概念魔法》を発動し、【貪食ト銷魂之神】で喰らう。
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【法則之神】LEVEL:1
→異界の力を得た法則掌握の力だよ!
炎と雷その他プラズマ、水、氷、風、音、砂、熱と冷気、光、闇、魔力、重力、放射線を完璧に処理した核熱を掌握するよ! 霧を散布して偽りの幻影を作り出す、黄金の光をその身に纏うことでステータスを上げる、黒い災いの竜巻を発生させる、異界の炎を凍らせる焔を操作する、十秒間光を纏ってあらゆる攻撃を弾く代わりに物理攻撃ができなくなる無敵状態になることができるようになるよ! 無敵状態効果は一度使うと一時間は使えないよ! 【法則ノ王】の上位互換だよ!
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【法則ノ王】は異界の概念と融合し、神となった。
凍冷焔華を展開し、殺到する光球全てを凍結させる。
光球を空中で凍結させることで無力化させた俺はカリエンテの偃月刀を片手に浮遊したまま加速――フェアボーテネに迫る。
「全てを穿て――《概念魔法・光芒》」
光球から有機物・無機物を問わず、また物体の硬度・耐熱性・可塑性・弾力性を問わず対象物を穿つ光を放つ《概念魔法》ってところか?
だが、どれほどの力を持っていても所詮は光だ。【法則之神】の操作の対象になり得る。
「何ッ! 神罰の光を掌握し、自在に操るだと!?」
フェアボーテネは
つまり、元から狙ってない。
「――
《概念魔法・炎喰焔華》を発動して俺に殺到する
「捕食してください、【貪食ト銷魂之神】!!」
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【法則之神】LEVEL:1
→異界の力を得た法則掌握の力だよ!
炎と雷その他プラズマ、水、氷、風、音、砂、熱と冷気、光、闇、魔力、重力、放射線を完璧に処理した核熱を掌握するよ! 霧を散布して偽りの幻影を作り出す、黄金の光をその身に纏うことでステータスを上げる、黒い災いの竜巻を発生させる、異界の炎を凍らせる焔と炎を喰らう焔を操作する、十秒間光を纏ってあらゆる攻撃を弾く代わりに物理攻撃ができなくなる無敵状態になることができるようになるよ! 無敵状態効果は一度使うと一時間は使えないよ! 【法則ノ王】の上位互換だよ!
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「炎操作の操作権は敵の焔にも及びます。そして、【炎熱聖女】の効果の一つは炎の支配権限の固定――つまり、フェアボーテネ――貴方は
「…………エゲツない」
「エゲツないですわね」
『……敵だが少し同情してしまうな』
裕翔とヱンジュの言葉が心に突き刺さる! そして、ソレイフィアはあろうことか敵であるフェアボーテネに同情してしまった!!
「ヱンジュさん、戦女神の皆様。今からフェアボーテネからツバキさんの支配権を強奪します。皆様はツバキさんが解放されたら彼女を守ってください。後は全部私が責任を持って片付けます」
「――舐めよって! 我は神だ!! 高がモブキャラ如きに負ける私ではないわぁ!!!」
≪フェアボーテネ、ワレが真っ先にするべきことは命乞いやった……能因草子――あれの正体を見抜けへんかった時点でワレは所詮その程度やったってことや≫
恒例のウコンの過剰評価だ。俺ってモブキャラだよ? ただの男子高校生なんだよ? なんで揃いも揃って化け物扱いするだよ!?
「神の速度は瞬間移動にすら見える高速移動を可能とする! 《概念魔法・神速》」
「神は魔法陣すら必要とせず瞬間移動を可能とする! 《概念魔法・天動》」
瞬間移動に見えるほどの速度まで加速し、瞬間移動させた敵を瞬殺するコンボか……【魔法無効】を持っている奴を相手にするとコンボ壊れるけど大丈夫?
「何!? 魔法が効かないだと!! 貴様、何か小細工をしたのか!?」
「小細工? 【魔法無効】スキルの効果ですが何か? 絶対零度の劫火を浴びて、凍りつけ――
カリエンテの偃月刀に炎を凍らせる焔を纏わせ、振りかざすことで敵を
まあ、フェアボーテネを凍りつかせて身動きを封じれたら御の字程度で放ってはみたんだけど。
「――《概念魔法・終末銀渦》。あらゆるものを呑み込む銀河は全ての攻撃を無力化する…………筈だ。何故、何故銀渦が凍っている!!」
《惑星魔法》に連なる《概念魔法》で攻撃を無効化するつもりだったようだが、残念。
炎を凍らせる焔は炎だけではなく炎に触れたものを凍結させる。そこに例外は存在しない。
「――《概念魔法・流星嵐》」
無数の流星を創り出し、降り注がせる《概念魔法》か……もう《天体魔法》ってカテゴリを作ったほうがいいよ? ってもうあるか? 異世界カオスにだけど。
「〝世界を構成する有象無象よ、色即是空空即是色の理に従い、新たな世界を作る糧となれ〟――〝雲散霧消-Decompose to elements-〟」
はい、流星嵐、無効化に成功。……異世界カオスの
「さて、そろそろ決着をつけますか。――《神代概念魔法・天動》」
フェアボーテネのみを俺の目の前に転移させる。つまり、後輪は置いてきぼりになった。
後輪は主たるフェアボーテネが消えたことで自然消滅……《概念魔法》の対策くらいしておけよ。
「では、その身体にお別れを告げてください。似非神様――《神代概念魔法・
魂を選別し、任意の魂を残して
【
空から降ってきた訳ではないけど、女の子をキャッチ。……うん、モブキャラのやることじゃない。
「ヱンジュさん、ツバキさんを――」
「分かりました。――姉として責任を持って守ります」
……さて、決着をつけますか。
魔法少女の仮装を解除し、精神体だけとなったフェアボーテネと対峙する。
「もしかして、後二回変身を用意していたりする? 生への執着で魔物とか使徒とかを取り込んでなんとか形を取ろうとする吐き気を催す存在になったりする? ……お前は沢山の人達を苦しめた。それを俺に咎める権利はない。誰にだってない。――弱者が強者によって踏み躙られるのは世界の摂理だ。だから、ツバキさんが囚われたのも、戦女神様達が封印されたのも、みんな彼女達がお前より弱かったせいだ。……俺のエゴは、俺が信じるままに異世界を旅し、地球へと帰還すること。俺なりの正義を貫き、少しでも救える可能性があるなら、微力な俺の力でも運命を変えることができるのなら、運命を変えるために共に戦うこと。俺が異世界に召喚されたというのは不本意だが一つの運命だ。その縁で出会うことができた人達に俺と出会えて良かったと思ってもらえるような存在でありたい。――俺の視点の中で、お前は吐き気を催す邪悪だ。だから、俺はお前を倒させねもらう。最も残酷な方法で。――フェアボーテネ、俺のエゴでお前のエゴをぶち壊す!」
皮の袋から一本の試験管を取り出し、フェアボーテネに向かって投げる。
「【
強化ガラスでフェアボーテネを包む立方体を生成。
その試験管が強化ガラスにぶつかった瞬間、パリンと音を立てて割れ――。
『ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッッ――』
フェアボーテネの断末魔が響き渡る。……実際に見たことないけど、霊体に
『……あれって、《
「えっ? いや、使えるかなって霧に入る前に三本分入手しておいたんだよ。中に
ジューリアを除くメンバーが絶句して固まっているが気にせず大量のミスリルとオリハルコンを生成し、【
「
完全に霧と同化し、霧霊と化したフェアボーテネだったものが入った立方体諸共世界の修正力によって消し去った。
◆
フェアボーテネ亡き後も神域は正常通り作動していた。
つまり、フェアボーテネを倒したところで“神の使徒”は止められないということである。
俺は玉座を調べ、そこに“神の使徒”を停止させる装置が組み込まれていたのを確認した。ということで、エンリを複製したプログラムをインストールし、神域のシステムを完全掌握――その後“神の使徒”を完全停止……ではなく自害するように命令を与え、全て破壊した。
勿体ない? 悪用されたら大変なので……。
その他、神域には大した能力も無かったので、“神の使徒”とのリンクプログラムなどの割と危険そうなプログラムを完全に破壊し、入り口を
ちなみに、今頃ツバキとヱンジュは再会の時を分かち合っている筈だ。
戦女神達とツバキ、ヱンジュ――彼女達だけで過ごす時間も必要だろうと思って邪魔者は退散させてもらったよ。
で、俺は今どこにいるかって? ……魔人族首都イビルフィストだよ。
『改めまして、能因草子です。異世界から来ました。ダブルフェイス……いえ、フェアボーテネですが、ついさっきお亡くなりになりましたので、ご報告に参りました』
どよめく生き残りの魔人族達……自分達の神を殺したことに憤りを覚えたのか、自らの神の正体がフェアボーテネであったことに驚いたのか……。
「……能因草子だったか? 異世界から来たというお前は何故、我らが同胞の命を奪った? 何故、何も関係のないお前が魔人族の命を奪う!!」
『神託に従い、軍を引き連れて交戦体制を整えていたのはどこのどいつらだ? 戦うってことは自らが死ぬことを覚悟して行うものだ。自分達だけは傷つきたくないだと? それなら何故戦場に足を踏み入れた? 選んだのはお前達だ。俺達だって命を懸けて戦った。……俺の力は全て自分の機転と努力で掴み取ったものだ。俺でもできたんだから誰にだってできる。ただ、その努力を、強くなるために考えるということを怠っているだけだ。チートだ? 一方的な蹂躙だ? 戦いに巻き込まれたくなければ戦場に来なければ良かった話だ。俺達を倒したければ、俺達を分析し、対抗手段を立てるべきだった。お前らはそれができなかった。だから死んだ奴は死んだ。以上。……それと、なんで関係のない俺がお前らと戦ったかだったな。俺はフェアボーテネによって異世界カオスに飛ばされた七曜ヱンジュという精霊の巫女をこの世界に送り返すためにこの世界に来た。だが、ただこの世界に返すだけでは足りない。フェアボーテネがいる限りヱンジュは安心して暮らせないからな。……俺はできることは全てやりたいタイプなんだ。だから、俺はヱンジュが暮らしやすい世界にするために障害となるフェアボーテネの排除を決めた。そのフェアボーテネの討伐の障害となったお前達魔人族も邪魔するようであれば排除する対象になったということだ。あまりにも身勝手な理屈だって? この世界に身勝手じゃないものなんてない。結局、人間も亜人種も魔人族も、異世界でも地球でも、どこに行ったってその本質はほとんど身勝手だ。自分の思い通りにしたいって直接的な奴から、いい人間として思われたいっていう偽善的な奴まで様々だけどよ。全て望み通りにはならない。願いというのは必ず別の願いと衝突するからだ。お前達も神託に従い、見ず知らずの人間を殺そうとしただろう? お前達の理屈で、正義で。それと本質的には同じだよ。ただ、今回はたまたま俺達の方が強かったってことだ』
俺は自分が正義だとは思っていない。俺を悪と断ずるものはいくらでもいるだろう。
俺は願いを叶えるためなら、他の願いを持つ者達の屍を越えて行く覚悟はあるし、同時に別の願いを持つものに屍を越えられる覚悟もしている。
戦場に身を置くということはそういうことなんだと、俺は異世界カオスに来てから思った。
殺すってことは殺されるってことだ。それを理解できず、理不尽だと論ずる者がいれば、そいつには戦場に立つ資格はない。
『まあ、信じてもらえるとは思わないし、今から貴方達に俺の記憶を見せるよ。その記憶を見て、それでも俺を許せないというのなら勝負を受けてやる。――《神代概念魔法・記憶付与》』
魔人族達に俺が異世界ガイアに来てから見聞きした全ての記憶を送り込んだ。
……さて、魔人族達はどんな反応を示すのだろうか?
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