文学少年(変態さん)は世界最恐!? 〜明らかにハズレの【書誌学】、【異食】、にーとと意味不明な【魔術文化学概論】を押し付けられて異世界召喚された筈なのに気づいたら厄災扱いされていました〜
超古代文明マルドゥークの科学は異世界勇者すらも凌駕してしまうようだ。
超古代文明マルドゥークの科学は異世界勇者すらも凌駕してしまうようだ。
異世界生活百三十日目 場所ジュドヴァ=ノーヴェ魔族王国、シャドウレイの森
「草子さん、ありがとうございました」
「……おい、待て。まだ終わってないよ」
お礼を言って帰ろうとするキールを呼び止める。
「終わっていないとは?」
キールは首を傾げた……いや、寧ろなんでこれで終わったと思ったんだ?
「それじゃあ、次だ」
皮の袋に手を突っ込み、目当てのものを探す……おっ、あったあった。
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取り出したのは二丁拳銃……まあ、ぱっと見何かは分からないだろうな。
例え拳銃に対する知識があったとしても、この二つの正体を見抜くことは不可能だろう。
「勇者固有技には遠距離技もあるが、基本的に剣というのは近距離で使うものだ。ということで、遠距離用に用意したのがこの拳銃という武器だ」
「……ケンジュウ、ですか?」
「まあ、拳銃であって拳銃ではないんだが……普通の拳銃ってのは行程を色々と吹っ飛ばすが、引き金を引くと鉛玉が飛び出すものだと思ってくれればいい。が、この二つは少し違う。一つは引き金を引くと広範囲に超重力の断層を作り出して射線上にあるあらゆるものを押し潰すという効果を発揮する。そして、もう一つは引き金を引くと本来存在しえない同座標の亜空間を無理やり生成してそこにあったものや周囲のものを亜空間ごと世界の修正力によって消し去るという効果を発揮する」
「……あの、何を言っているのかさっぱり。僕の考えが正しければ、それって勇者固有技よりヤバいと思うんですが」
「ん? そりゃこっちの方がヤバいぞ。……少し前に魔族の仇敵――ミンティス教国の聖都で戦争があって、そこに参戦した陣営の一つが使った武器を小型化したものだが……もし、一撃でも成功していたらミンティス教国は間違いなく滅んでいたな」
……あれ? そんなに青褪めること?
「まあ、小型化しているし性能もかなり落としてあるから気にせず使えばいいと思うけど。……まあ、流石に《
おーい、どうした? なんで固まっているんだ?
「まあ、試しに森に向けて撃ってみて」
「は、はい」
震える手で
森の一部に猛烈な重量が襲い掛かり、瞬く間に押し潰されてしまった。
「……百分の一くらいか。まあ、大体それくらいだよな。それ以上を求めるのなら、やっぱり砲台そのものを巨大化させるしか無いか」
「草子さん、もしかして僕を実験台にしていますか?」
「……すまんな。まあ、でもこれあったら魔王軍幹部や騎士修道会騎士団長くらいは殺せると思うし、それくらい大目に見てくれないか?」
「まあ、草子さんに頼んだのは僕ですし、草子さんにも得することがあるべきだとは思いますが……これは」
「強過ぎるってことはないと思うよ。……でも、力に溺れてはならない。これは、間違いなく魔族内の力関係を変えてしまう兵器だからね。妹を守るために使うと誓って欲しい」
「勿論です。……この力で必ずシュオン達を――僕の大切な人達を守ってみせます!」
◆
〝
「あっ、草子さん。お兄ちゃんと一緒だったんですね」
「ちょっと頼まれごとをされてな。まあ、それも終わったし、そろそろ出発するよ。……ジューリアさん、出発できるか?」
「ときじくうちいでらる」
ジューリアと共にポテムの村の宿屋を出る。
昨日とは違い、魔族達から石を投げられることは無かった。……まだ若干敵意の視線は感じるが、好意的な視線も散見できたのは嬉しかった。
「「――草子さん、ジューリアさん!!」」
「キール、シュオン。わざわざ見送りに来てくれたのか?」
いや、そこまで律儀に見送りに来てくれなくてもいいと思うんだけど。
「草子さん、またこの村に来てくれますか?」
「〝
後ろにいる住民達が一所懸命首を横に振っているが……モブキャラに気を遣う必要はないと思うけど。
「ジューリアさんも気に入ったみたいだし、また宿にも寄らせてもらうよ。シュノアさんにもよろしく伝えておいてくれ」
――さて、改めて行くとするか。
次の目的地は魔王領バチカル……統治者の魔王軍幹部は一体どんな人か。
……セクハラデュラハンとかは流石に勘弁して欲しいな。
◆
【三人称視点】
魔王領バチカル――狂信国家ミンティスと戦う最前線であるこの地は、魔王軍内でも実力が高い
ヘズティスは魔王軍の中で実力が高いと言っても、幹部内ではそれほどの強さを持っていない。
そのヘズティスが、この重要な地を治めることになった理由は二つ。
一つはヘズティスは魔王に対して絶対の忠誠を誓っていること。
裏切り行為によって魔王領への侵攻を見逃されてしまえば大惨事を招く。そう考えた魔王は、忠誠という点においては幹部一であるヘズティスを魔王領バチカルに配置したのである。
もう一つの要因となったのはヘズティスが保有する
魔王領の門番にして最初の砦――そんなヘズティスは今、二つの問題を抱えていた。
一つは魔王領バチカルで暗躍をしていたという仮面の者達の調査。
ヘズティスは部下の報告から、フリーランスの魔族で【猛獣使い】のスキルを持つサウロンという魔族が自然発生したオログ=ハイを支配してミンティス教国への侵攻を行った事件の裏に、この仮面の者達の存在があることを突き止めていた。
しかし、目撃者の魔族は突如失踪し、ヘズティスが最も信頼を寄せていた部下の魔族もその報告を最後に消息を絶っている。
魔王領バチカルを治める者として、魔王領バチカルで暗躍する者を放置することはできない。ヘズティスは新たな部下を送り込んで調査を進めるも全くの進展なし。……ヘズティスはこの状況に焦りを覚えていた。
その状況で降ってきたのが、ミンティス教国方面から現れた二人の人間。
魔族の悩みの種であった《
「『初めまして、能因草子と申します。明日か明後日に魔王軍幹部様の城に赴かせて頂きますので、よろしくお願い致します。こちらが勝利した場合、魔王城の結界を解除して頂きたいと思いますので、そのおつもりで。追伸、現在滞在中のポテムの村は俺が脅しているため無関係です。先手を打って攻撃しないようお願い致します』……ねえ、こんなご丁寧に挑戦状を送ってくる人間の挑戦者って初めてじゃねえか? 人間の勇者って『悪を殺すのに正々堂々など関係ない!』って、謎の大義名分を掲げて奇襲を仕掛けたりしてくるが……そういえば、最近ミント正教会の勇者の姿も見ねえな」
魔王軍は突如現れた《
魔王軍が恐れていたのは、その機に乗じてミント正教会の勇者が魔王領への侵攻を開始することだった。
が、その懸念は杞憂に終わり、勇者の侵攻はパタリと止んで凪の時期に突入している。
魔王軍が安心して……というのは多少違うが、《
「……しかし、本当に俺達が倒せなかった《
待機していた部下に命令を下すと、ヘズティスは再び通常業務に戻った。
◆
異世界生活百三十日目 場所ジュドヴァ=ノーヴェ魔族王国、シャドウレイの森
「〝双星顕符〟」
二つの星の意匠が描かれた札が消失し、ジューリアの身体を虹色の輝きと黒い輝きが包み込んだ。
光と闇――相反する属性を宿したジューリアは、
「――太極光闇飛斬」
その一撃を受けた胸元に受けたグレーター・ミノタウロスは、抵抗すらできずにそのまま前のめりに倒れる。
「光と闇――相反する属性の相剋効果で威力が上がっているみたいだな。【太極刃】を参考にしてみたが、上手くいって良かったよ」
ジューリアの攻撃力は双星顕符を使用してから大幅に上がっている。
更に、そこに修道服と巫女服を融合した防具と
元々、ジューリアは【結界魔法】や【障壁魔法】を得意としていて、榊翠雨時代のレーゲンもこの守りには苦戦を強いられたらしい。
そういえば、ジューリアは〝禊祓の障壁〟を空中に展開して、その上を歩く〈口伝・天●通〉と同種の移動手段も持っているんだっけ? 【多重結界】に防御を任せられるようになるのなら、移動だけに【障壁魔法】を使えるようになって魔力を抑えられるようになる。
更にジューリアは飛躍していきそうだ。……流石に今のジューリアなら勇者榊翠雨には負けないだろう……レーゲン相手だと厳しいかもしれないが。
……さて、それじゃあ俺も実験を始めるか。
俺は昨晩、
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・対消滅エネルギー拳銃《マテリアル》
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・超重力断層生成拳銃《バベル》
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・分子分解砲撃拳銃《メギド》
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・霊煌粒子射出拳銃《ノア》
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・亜空還噴進拳銃《アビス》
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……さて、このうち二つの性能はprototype.の方で確認したことだし、対消滅エネルギー拳銃《マテリアル》、分子分解砲撃拳銃《メギド》、霊煌粒子射出拳銃《ノア》を一つずつ使用してみるか。
まずは分子分解砲撃拳銃《メギド》を取り出して構え、引き金を引く。
効果自体は〝エレメント・スキャター〟と同じだが、こっちの場合は魔法じゃないから【魔法無効】を貫通することもできるのか。……けど、射程に入れないと分解できないってのは結構痛いな。〝エレメント・スキャター〟の方は多少融通が効く。
続いて対消滅エネルギー拳銃《マテリアル》を取り出して構え、引き金を引く――今度の狙いはオークディザスター。理由はなんとなく。
命中……オークディザスターが一瞬で跡形もなく消し飛んだ。
今の一撃って一滴分の水滴を分解しただけなんだけど、対消滅のエネルギーってそれだけで軍艦一つを沈められる威力だからね。TNT換算で1キロトン……意味分かんねえ。
これほどのエネルギーを対消滅エネルギー拳銃《マテリアル》は収束して発射することができる。
今回は、《神代非物質魔法》を用いてオークディザスターの付近からエネルギーが漏れ出ないように調整している……逃げ場を失ったことで熱の総量は変わらず……ってもう消し飛んでいるから関係ないか。
《神代非物質魔法》を少しずつ、ゆっくりとエネルギーを逃がしていく……若干あったかくなってきたなぁ。
最後に霊煌粒子射出拳銃《ノア》を取り出して構え、引き金を引く。
これは、幽霊とか高野聖とかパ●ノーマル・パラ●イトとか
「――神の怒りに焼きつくされろ! 〈
【水操作】を使って凸レンズ状の水を生成し、【光操作】で収束した光を放つ〈
これで終わりか?
その後も魔王領バチカルに到着するまで何度か魔獣が襲ってきたが、俺とジューリアで楽々撃退できた。
ちなみに、《
魔王領で旅をしていればいずれどこかで会うだろうし、気長に行けばいいか。……ついでに討伐した方がいいかなって程度だし。
さて……明らかに歓迎ムードじゃない魔族とどう交渉するか……あんまり序盤からバトりたくないし、できる範囲で頑張りますか。
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