ぶりっ子AIにスケバン風AI……超古代文明マルドゥークのAIは個性豊かに作られているようだ。

【三人称視点】


 ――彼ら・・が踏み潰した命の数は分からない。

 好奇心を持ち、挑んだ愚かな人々が勝手に発狂したり過ぎない。


 彼ら・・から特定の人間に対し攻撃を加えることはほとんど無かった。

 その神秘に惹かれ、群がり、人には不相応は領域に触れ、死んでいくだけ――。


 彼ら・・はかつて、旧支配者と外なる神という二つの派閥に分かれ、争うこともあった。

 彼ら・・にとって、敵と呼べる存在は同族の神達だけであった。


 その時代を思い出し、クトゥルフは語る。――あれほど平和な時代は無かった、と。


 世界すら呑み込むほど巨大な魔法陣によって、彼ら・・――異世界の神々異なる神が召喚されたその瞬間から、彼ら・・の不幸が始まった。


 その世界――後に異世界カオスや、単にカオスと呼ばれる世界には、既に他の世界から来訪し、支配者となっている者達が存在していた。

 カオスの〈全知回路アカシック・レコード〉にはファーストクライシス“叡慧”のマルドゥークとして記録された異世界からの侵略者、または旅人達だ。


 カオスの〈全知回路アカシック・レコード〉にセカンドクライシス“神軍”のアウターゴッドとして記録された彼ら・・は、既にこの世界に居たマルドゥーク文明と覇権を争うことになる。


 旧支配者と外なる神は初めて手を組んだ。そうせざるを得ないほど、マルドゥーク文明という存在は強大だったのだ。

 圧倒的力を持ちながら、外なる神側が矮小な旧支配者側に助けを求めた形になったのは、偏に首領――狂気に満ちた宇宙の真の造物主にして、如何なる形をも持たない無形の黒影、飢えと退屈に悶える白痴の魔王、名状し難くも恐るべき宇宙の原罪そのものである大魔神アザトースの死という、外なる神々が全く予想していなかった悲劇にあると言えるだろう。


 人間は元より他の旧支配者達を蔑み、常に嘲笑を湛えていたあのナイアーラトテップがその顔に有り余る怒気を湛え、忌まわしきマルドゥークの名を叫んでいた光景をクトゥルフは克明に思い出せる。


 アザトースの死に至った経緯は、この世界がアザトースの領域テリトリーでは無かったからだった。

 故に、狂気に満ちた宇宙の真の造物主であるアザトースの性質に由来していた絶対的な強さを発揮することができなかった。


 天を埋め尽くすほどの大量の使徒天使、空を飛行する艦隊、海を支配する潜水軍艦、大地を踏みしめて進む機動要塞、そして万物を消滅させる力を持つ究極の魔術――〝DIES IRÆ〟。


 アザトースを消滅させたのは、この〝DIES IRÆ〟だ。

 一人のマルドゥーク人の青年の命と引き換えに、アザトースを消し去るのが大きな成果なのか、小さな成果なのか? マルドゥーク文明はそれを大きな成果だと考えたのだろう。


 《異なる神》の中で唯一善戦したのが、外なる神の副王、ヨグ=ソトースだった。

 《異なる神》の故郷の〈全知回路アカシック・レコード〉そのものであったヨグ=ソトースはカオスの〈全知回路アカシック・レコード〉を手に入れることで再び全能の力を得ようと考え、行動に移した。


 既に〈全知回路アカシック・レコード〉を完全に支配していたマルドゥーク文明と幾度となく交戦――飛空戦艦エンリルの後続機であった飛行戦艦を三十ほど撃ち落としたが、飛行戦艦の艦長であるマルドゥーク人の命を引き換えにして放たれた〝DIES IRÆ〟によってその命を失った。


 その後も、シュブ=ニグラス、アブホース、マイノグーラ、ヌギル=コーラス、ウボ=サスラ、トルネンブラ、トゥールスチャ、イォマグヌットが〝DIES IRÆ〟によって消滅し、ナイアーラトテップは使徒天使の【分解のオーラ】を二刀流によって命を奪われた。


 クトゥルフ達旧支配者も無事ではない。クトゥルフは瀕死の傷を負ってディープ・ワンズと共に逃走。それからどうなったかは定かではないが、クトゥルフは彼らがマルドゥーク文明に勝つことはできず、全滅したと考えている。


 クトゥルフ達にとって、自らの命を顧みず〝DIES IRÆ〟を放つマルドゥーク人、銀の髪を靡かせる作り物めいた絶世の美貌を持つ使徒天使、マルドゥーク文明の叡智の結晶たる機動要塞、航空母艦、海洋母艦は、まさに悪夢の如き存在として心に刻まれたのである。



 異世界生活七十八日目 場所新ルルイエ


「つまり、お前ら神々はこのカオスに召喚された、と。それで、マルドゥーク文明と敵対することになり、同胞達のほとんどが命を散らせることになった、と。……ご愁傷様としか言えないな。被告人エレシ、弁解を」


【……無理だよ。完全にこっちが悪者だよ。……そもそも、マルドゥーク人がこの世界に来たのは、マルドゥーク人の技術が進み過ぎて世界が崩壊してしまったからだよ……で、魔力の濃いこの世界を目指したんだけど……そこで資源不足になって同士討ち、その後は他の世界の神を殺して迷惑をかけて……本当にあの人達って何をしたかったんだろう?】


 技術が進み過ぎて世界が崩壊してしまったから……どっかの(エ●トとかいう)エセ宗教の教祖と似たような感じだな。一人じゃなくて集団であるというのが厄介だけど。……えっ、言及しちゃってるって?


「……一つ気になるのは、異世界の神々を召喚できるほどの魔法……それを誰が使ったってことか。誰も召喚しないのに、クトゥルフ達が召喚されるなんてこと、ありえないだろう?」


【……エレシちゃんにも心当たりはないのです。そもそも、神々を召喚する魔法なんて聞いたことがないし、少なくともマルドゥーク文明はそんなものを生み出してないよ】


 となると、考えられる可能性は二つ。一つは資源戦争で有利になるために、マルドゥーク人が《異なる神》を召喚可能な魔法を開発……実際に使用したマルドゥーク人がやっぱり犯人だった説。

 そして、もう一つが何者かが神格召喚の魔法を教えた、か。……こっちの陰謀論には何の根拠もないんだよな。


 とにかく、神自体は召喚できる。女神オレガノを召喚した時のように。


「とりあえず、一つ言えるのはマルドゥーク文明は滅んだ。お前らが怯えて暮らす理由は無くなったって訳だ。だからって、暴れていいってことにはならない。このまま細々と暮らすでも、他の種と交流を持つのでもなんでも構わないが、とりあえず面倒ごとだけは起こすな」


『分かっている。……能因草子、お前とその仲間と敵対することは得策ではない。我々はここで細々と暮らすつもりだ。我のような存在を恐れる者は多いので、な』


「そうかい。それじゃあ、達者でな。……それと、マルドゥーク関連で何か知っていることってないか?」


「それなら、忌まわしきマルドゥークの海洋母艦が海底に沈んでいます。場所は……」


 ビンゴ、か。念のために聞いてみたら、ディープ・ワンズの一人が知っていた。

 いや、海の中で戦っているって聞いてたから、どっかに沈んでいるんじゃないかって。


「ありがとう。これで借りは返してもらったよ。それじゃあ、改めて」


 新ルルイエを出て【叡慧ヲ窮メシ者】を発動……そのままディープ・ワンズに教えてもらった方向に範囲を広げていく。

 おっ、あった。でかい船っぽい反応……場所は、北北東?


「という訳で、このまま海底に沈む海洋母艦に向かう。機動要塞エレシュキガル、バラシャクシュ遺跡のどっちかで戦闘経験があるなら大丈夫だろうけど、敵は使徒天使とゴーレム。とにかく数が多い上に強いから、そのつもりで」


 志島、にのまえ、柊、ミュラの四人は使徒天使やゴーレムとの経験が無いからな。

 まあ、なんとかなるだろうけど。こっちには勇者様がいる訳だし、他のメンバーも強い。

 流石は勇者パーティって感じだ。


「それじゃあ、行くか」



 でかい船……エレシによると海洋母艦ナンムと呼ばれる船に乗り込んだ俺達は、突如ライトが点灯した船の中でお馴染みの連中と対峙していた。


-----------------------------------------------

NAME:使徒ツァールライヒ

LEVEL:1000

HP:99999/99999

MP:∞

STR:199999

DEX:199999

INT:12000

CON:199999

APP:1300

POW:199999

LUCK:1000


JOB:ホムンクルス、天使剣士、双剣士、治癒師


TITLE:【造られた使徒】、【天使の剣士】、【無限の魔力を有する者】


SKILL

【二刀流理】LEVEL:MAX(限界突破)

→二刀流の真髄を極めるよ! 【二刀流】の上位互換だよ!

【神聖剣 極】LEVEL:MAX(限界突破)

→神聖剣の極致だよ! 【神聖剣】の上位互換だよ!

【翼理】LEVEL:MAX(限界突破)

→翼使いの真髄を極めるよ! 【翼術】の上位互換だよ!

【羽撃】LEVEL:MAX(限界突破)

→羽を飛ばすのが上手くなるよ!

【飛行】LEVEL:MAX(限界突破)

→飛行が上手くなるよ!

【空歩】LEVEL:MAX(限界突破)

→空中を歩くのが上手くなるよ!

【全属性魔法】LEVEL:MAX(限界突破)

→全属性の魔法を使えるようになるよ!

【回復魔法】LEVEL:MAX(限界突破)

→回復魔法を使えるようになるよ!

【結界魔法】LEVEL:MAX(限界突破)

→結界魔法を使えるようになるよ!

【複数魔法同時発動】LEVEL:MAX(限界突破)

→複数の魔法を同時に発動できるよ!

【複合魔法】LEVEL:MAX(限界突破)

→複数の属性の魔法を融合できるよ!

【全属性耐性】LEVEL:MAX(限界突破)

→全属性に対する耐性を得るよ!

【状態異常耐性】LEVEL:MAX(限界突破)

→状態異常に対する耐性を得るよ!

【気配察知】LEVEL:MAX(限界突破)

→気配察知が上手くなるよ!

【魔力察知】LEVEL:MAX(限界突破)

→魔力察知が上手くなるよ!

【熱源察知】LEVEL:MAX(限界突破)

→熱源察知が上手くなるよ!

【振動察知】LEVEL:MAX(限界突破)

→振動察知が上手くなるよ!

【駿身】LEVEL:MAX(限界突破)

→駿速の領域まで速度を上げるよ! 【瞬速】の上位互換だよ!

【魔力吸収】LEVEL:MAX(限界突破)

→魔力を吸収できるようになるよ! 【魔力回復】の上位互換だよ!

【再生】LEVEL:MAX(限界突破)

→失った部位を再生できるようになるよ! 【体力回復】の上位互換だよ!

【自己治癒】LEVEL:MAX(限界突破)

→自己治癒できるようになるよ!

【恐慌】LEVEL:MAX(限界突破)

→恐慌を起こせるようになるよ! 【恐怖】の上位互換だよ!

【掣肘】LEVEL:MAX(限界突破)

→掣肘が上手くなるよ! 【威圧】の上位互換だよ!

【覇潰】LEVEL:MAX(限界突破)

→覇潰が上手くなるよ! 【覇気】の上位互換だよ!

【無限の魔力】LEVEL:MAX(限界突破)

→無限の魔力を得るよ!

【分解のオーラ】LEVEL:MAX(限界突破)

→オーラに触れたものを分解するよ!

【瞬間移動】LEVEL:MAX(限界突破)

→瞬間移動が上手くなるよ!

【擬似限界突破】LEVEL:MAX(限界突破)

→擬似的に限界突破するよ!


ITEM

・神聖双大剣アーティキュルス・エーアスト

→神聖なる加護が宿った双大剣だよ!

天女の戦装束コスチューム・オブ・バトルエンジェル

→純白の天使を彷彿とさせる戦装束だよ! 胸当てとワンピースが一体化しているよ!

-----------------------------------------------


-----------------------------------------------

NAME:魔鉱金アウリカルクム自動人形ゴーレム

LEVEL:800

HP:69999/69999

MP:99999/99999

STR:399999

DEX:49999

INT:-99

CON:49999

APP:-99

POW:49999

LUCK:999


JOB:ゴーレム


TITLE:【自動人形】


SKILL

【マーシャルアーツ】LEVEL:MAX(限界突破)

→格闘術が上手くなるよ!

【振りかざし】LEVEL:MAX(限界突破)

→振りかざしの威力が上がるよ!

【拳理】LEVEL:MAX(限界突破)

→拳での戦闘の真髄を極めるよ! 【拳術】の上位互換だよ!

【蹴理】LEVEL:MAX(限界突破)

→蹴りの真髄を極めるよ! 【蹴撃】と【跳び蹴り】の上位互換だよ!

【豪打】LEVEL:MAX(限界突破)

→豪快に殴るよ! 【猛打】の上位互換だよ!

【金剛】LEVEL:MAX(限界突破)

→金剛の如き硬さまで硬化するよ! 【部分硬化】の上位互換だよ!


ITEM

-----------------------------------------------


 ちなみに、魔晄石と魔鉱金アウリカルクムは名前は似ているが完全に別のものらしい。……情報源は【叡慧ヲ窮メシ者】だ。ネットよりは信用できるな。


「……まさか、こんなのを相手にするの」


 志島を筆頭に腐女子三人衆と、ミュラが絶望の表情を浮かべているが……別にそこまで恐ろしくないだろう?


「大丈夫、大丈夫。その武器ならスパッだなら。倒せば倒した分だけ楽になるよ」


 脳筋三人衆の方は早速ゴーレムに突撃しているようだ。


「あっ、ゴーレムの素材は今後使いたいから消滅だけはさせないでね。まあ、よっぽど強力な魔法さえ使わなければ切れるとか壊れる程度だろうけど」


 白崎の混沌祓い尽せエドゥラホーン・ダブルが使徒天使を切り裂く。持っているスキルは同じでも、使う人の腕次第で全く別物になるってのが一目瞭然の戦闘だな。

 回復職ヒーラーが必ずしも回復に掛かりっきりになる必要はない。敵を多く倒せばそれだけ傷つく人間は減る。ある意味、白崎の姿が本来の回復職ヒーラーの姿なのかもしれない……って、別に回復職ヒーラーにオールラウンダーを目指せと言っている訳ではないよ!! 回復職ヒーラー一本に絞っている人をとやかく言うつもりはないし、別に暗殺職をメインにするべきだってことは一言も言っていないから! というか、暗殺者アサシンがメインの人はかなり特殊な経歴だし。


 二刀流の扱いに関しては聖も負けてない。【瞬間移動】を上手く利用し、背後を取りながら使徒天使に二刀を浴びせている。

 たまに、遊んで爆弾を仕込んだりしているけど、そこはご愛嬌ということで。


 レーゲンは【創剣】と【操剣】を利用して大量の黒剣を飛ばして使徒天使を滅多刺しにしている。……レーゲンって別に勇者固有技を使わなくても十分強いからね。自作の剣技に、勇者固有技に、【創剣】と【操剣】に、魔法に、魔獣スキル……まさに、オールラウンダーだ。


 おっ、リーファは【魔法剣】か。本当に厄介な相手には精霊武装エレメンタル・テールム、そこそこの相手には【魔法剣】と使い分けて戦っているみたいだな。

 つまり、使徒天使を暗に雑魚だと言っているってことか。……まあ、雑魚なんだけどね。


 ロゼッタは優雅なる令嬢の傘ソーンセク・ドーンジュリを使った魔法戦、イセルガはいつものように【透明化】を使いながらの物理攻撃、アイリスは〝水晶のRewind遡行time〟を使って補助に徹しているみたいだ。


 朝倉の【袈裟斬り】が使徒天使を、北岡の振りかざした万端斬り裂けメルヴェイユ・シャムシールがゴーレムを、それぞれ切り裂く。

 柴田の十状変り闘えフェイタル・ハルバードを使った突きがゴーレムを貫き、岸田の二刀が使徒天使の胴を切り裂いた。

 八房のベレッタ・モデル92(擬)から放たれた弾丸が確実に使徒天使の息の根を止め、背中合わせに敵と対峙した高津と常盤が襲い掛かる使徒天使を悪鬼斬り伏せオニキリマルクニツナ悪鬼斬り滅せドウジキリヤスツナを両断する。


 進藤達三人はとにかく暴れ回っている。五条突き通せブリューナグ万物斬り断てアメノオハバリ武神剣に宿れアマノムラクモによって強化された脳筋の強さは、最早スキルがいらないと思えるほど……というか、前々から必要無かったんだけど。


 志島、にのまえ、柊、ミュラの四人も倒した数は少ないが、かなり善戦しているようだ。


 さて、と。俺もそろそろ戦いますか。使徒天使が三体ほどお待ちのようですし。


「【魔法剣・闇纏ヤミマトイ】」


 刀剣に変化させたエルダーワンドに闇を纏わせる。


Envelopperオンブルベ avecアベック les ténèbresテネーブル/Croissantクロワサン deドゥ luneリュンヌ envoyéアンヴォワイェ


 【魔法剣】と【飛斬撃】を併用して闇の斬撃を三発飛ばす。ついでに使徒天使六体を斬り捨てた。

 まあ、雑魚だしね。【魔法剣】だけで充分です。


 よし、とりあえず魔鉱金アウリカルクムはいくつか回収したし、神聖双大剣アーティキュルス・エーアストと天女の戦装束コスチューム・オブ・バトルエンジェルも補給できた。


 それじゃあ、そろそろ迎撃をやめて進みますか。

 その後も使徒天使とゴーレムを倒し、その度に素材を回収した。皮の袋に入れるのも面倒になったので、途中から【空間魔法】を使った。……そこ、面倒くさがるなって言わない。


 そんな感じで最奥部に移動、そしてお馴染み、無菌室を彷彿とさせる白一色の部屋。

 そして、モニター……中のAIはまさかの爆睡中!?


 スマホを起動して、エレシを呼び出す。


「……おい、コイツお前の友達だろう? 色々な意味で大丈夫か?」


【……う〜ん。大丈夫、じゃない。あの娘はナンちゃん……エレシちゃんと同期のAIなんだけど、面倒な子なのです】


 いや、お前も面倒な奴だからな。


【……ん? なんかゾロゾロ来てるな。それに、エレシか。相変わらず、ふわふわしやがって。もう少しシャキッとしろよ!】


 何、この暑苦しい奴。脳筋? 脳筋なのか!?

 熱血系口悪美少女? というか、不良少女スケバン!? カツアゲでもするのだろうか?


「……お前らマルドゥークのAIって揃いも揃って個性的だな。というか、三●素の女神?」


【あぁ? コイツ誰だ? というか、エレシ。こんな下等生物と一緒にいるのか? だからお前は底辺なんだよ】


 あの、あって早々下等生物扱いとか……流石にキレる、よ?


「……誰が下等生物なのか、もう一遍言ってみろ!!」


 やっ、べ。やっちまったよ。無意識で【掣肘覇潰】を発動していたみたいだ。

 直撃したナン……だったっけ? AI涙目だよ。


【……ナンちゃん、ドンマイ。草子さんを怒らせたら本当に消されちゃうよ】


「えっ、消していいの? でも、消えると遺跡への行き方分かんなくなるからな。ってことで、消されたくなければ大人しく従え?」


【……エレシ、よくこんなヤバい奴につく気になったな】


【そうしないと殺されそうだったからね。……でも、草子さんには優しいところもあるから、口では何と言ってても消したりしないよ】


「エレシ、ナンが真面ならお前解雇してもいいんだけれど?」


【……解雇って、消すってこと?】


「……さあ?」


【ねえ、ナンちゃん。ナンちゃんの持っている遺跡のデータ、エレシちゃんに渡すのです!!】


【おい、莫迦、渡す訳ないだろう!! おい、入ってくるな。そ、草子、さん。エレシより、アタシの方が優秀だ、よ】


 AI同士の醜い争いだな。白崎達はジト目を向けている……えっ、俺達? エレシとナンじゃなくて?


「これ以上醜い争いをされると、主に女子メンバーからの冷たい視線に晒され続ける羽目になるから……とりあえず、どっちかを消すってのはやめるよ。安心しろ、消す時は一緒だ」


【【――結局消されるの!!】】


 AIの異口同音ユニゾンか。そういうのもあるんだな。

 ナンを俺のスマホに移し、海洋母艦ナンムのシステムを停止させる。


 〝移動門ゲート〟を開いて水の街アクアレーティアに移動する。

 まずは、ヨハンへの報告からだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る