文学少年(変態さん)は世界最恐!? 〜明らかにハズレの【書誌学】、【異食】、にーとと意味不明な【魔術文化学概論】を押し付けられて異世界召喚された筈なのに気づいたら厄災扱いされていました〜
行く国行く国で怯えられるんだが……こんなモブキャラ相手に怯えて本当に恥ずかしくないのだろうか?
行く国行く国で怯えられるんだが……こんなモブキャラ相手に怯えて本当に恥ずかしくないのだろうか?
異世界生活七十三日目 コンラッセン大平原、能因草子の隠れ家(旧古びた洋館)
翌朝、ヴィッツィーニファミリーのアジト居残り組と交代し、〝
獣人小国ビーストに行くなら、ここからが一番近いからね。
ちなみに、出発前に時間が余っていた時に試作していた武器をロゼッタにプレゼントした。
ロゼッタには、あの大量武器生産の時にいい武器をプレゼントできなかったからな。
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・
→ 神聖大剣アーティキュルス・エーアストと
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一見するとただの傘だが、傘の内側には〝ヒーリング・シャワー〟、石突きには〝ブリッツ・ブリッド〟、〝ファイア・バレッド〟、〝アイシクル・バレッド〟、六つある傘地の部分にはそれぞれ〝禊祓の障壁〟、〝
空気中の魔力を吸収し、発動するので使用者の魔力量に依存しないのが長所かな? 正直、かなり強い武器ができ上がったと思う。しかも、そのまま殴っても十分強力だという……まあ、お淑やかなロゼッタが傘を使った肉弾戦なんてしないと思うけど……しないと思うけど。
渡した時に喜んでもらえたから、気に入ってもらえたんだろう。
これで、全員分武器が揃ったという感じか?
獣人小国ビーストは、サイフィドルの町から通常の行程で三日かかる場所にある。
出現する魔獣も少ないので、飛ばせば多少は短縮できるが、それでも二日とちょっと……あんまり短縮できないし、無茶な旅はやめるか。
「クイックシルバー・ボンバーぁ!! なんちゃって」
「魔法剣・
「〝
かなりの規模のゴブリンの群れが出てきたけど、今回も俺の出番は無かったな。
聖の【ポルターガイスト】とダイナマイトを掛け合わせた浮遊爆破攻撃と、リーファの【魔法剣】、白崎の【瞬間移動】からの【二刀流理】の二連斬撃、北岡の
「今こそ収束せよ! 星々の光宿りし聖剣よ! 四つの斬閃によって敵を刻め――《
白崎の聖剣に青い光が宿り、四連続の斬撃が放たれる……おっ、新しい聖剣技を覚えたのか。
斬撃を受けたゴブリンは跡形もなく消し飛んでいる……マジ怖エェ!!
「流石は勇者様だな。ゴブリンが跡形もなくなっているよ」
「草子君の【魔法剣】でもこれくらいできるよね? 私なんてまだまだだよ」
まだまだのようだ。……いや、ただの【魔法剣】と聖剣技を比べられても。
「……あの、そろそろ俺も戦っていいですか?」
「あっ、ごめんね。今どくよ」
……ただのモブキャラは勇者を退かせてしまったようだ。
とんだ罰当たりだな。勿論、自覚しています。
さてと……いくつか試してみたいけど、まずは。
「我が手に花を咲かせましょう……なんつって」
俺の右手の掌に向日葵を咲かせる。そこから、【光操作】で収束強化した【恒星光線】を放った。
直撃したゴブリンジェネラルの身体は熱に耐え切れず蒸発してしまったようだ。
「やっぱりパネエな、太陽光……いや、恒星光だったか? レンズで収束して、熱と光エネルギーを保管・収束させて、発射する兵器……〝ヒュベ●オン〟を再現してみても面白いかもしれないな」
まあ、結局魔梨華さん、マジパネェって話なんだけど。
同じ頭に花を咲かせるキャラでも河童とは格が違うな。
「草子君、今のってクイーンアウラウネのソーラービームよねぇ」
「よく覚えているな、北岡さん。あの時のビームだよ」
「……でも、こんなにも威力は無かったと思うんだけどぉ」
「俺のステータスがバグっているからだろう?」
北岡は納得いかないようだ。まあ、確かにモブキャラが持つにはおかしい威力の技だよな。
まあ、モブキャラでもここまでの威力を出せるんだからモブキャラじゃない伝説の勇者パーティのメンバーたる北岡なら、もっと威力を出せるよ。多分。
まあ、何らかのスキルを使って、まず【恒星光線】を獲得しないといけないんだけど。
そのまま三時間ほど進んだ。ベテンブルゲルの町、エルサリエムの町、パディジィーの町、ソグラデの町……まあ、四つほど町を越えた。
獣人小国ビーストまでは、通常の行程で三日かかる場所にある。魔獣が凶暴になる夜を避けるため、旅は基本一日八時間で行うと仮定して計算するから二十四時間……後は八倍歩かないといけない。
馬車とかを買えばいいと思うかもしれないけど、〝
更にそこから六つの町を越え、ナトゥラフの町に到着したところで今日分の行程は終了になった。
……いや、本当に長い。しかも出てくる魔獣はゴブリン系とかコボルト系ばっか。エンペラーでもそこまで強くないからね。
次の日も似たようなもので、八時間、十一の町に到着したところで終了になったが、戦闘よりも歩くのが大変だった。まあ、気分的に疲れただけで体力的には問題ないんだけど。
三日目にして、ようやく獣人小国ビーストに到着。武装中立小国ドワゴフル帝国とは違い、平野に作った普通の都市だ。技術もこの世界の人間の水準と変わらない中世ヨーロッパレベルか。
「ここは、獣人族の女王レオーネ=バステト様が治める国だ。レオーネ様に認められていない者を入れる訳にはいかない」
今回も門番がいるようだ。虎人族と獅子人族……いかにも強そう。というか、両方ともヌコ科?
しかし、この国は女王が治めているのか。珍しいな。
こっちの世界も結構男尊女卑なところあるんだよ。まあ、ヴァパリア黎明結社は例外的に完全な実力制を採用しているってフィードが言ってたけど。
「残念ながらアポは無いです。能因草子と申します。女王様に謁見し一つお願いしたいことがありまして……こちらに、こちらの要望とその対価……援助費と呼んでおりますが、それを纏めた書状を用意しておりますので、吟味の末、もしお受けしてくださる意思があれば、再度この国を訪れた時に門を通してください。とりあえず、五日後にまた来ます」
一発で入れるとは思っていないから書状を認めておいたんだよね。
獣人って結構人間の奴隷にされているから、関係悪化が甚だしいんだよ。
「……待て、能因草子と言ったな。まさか、近頃噂に聞く【たった一人で殲滅大隊】か?」
「……へえ、こんなところでまで噂になっているんだ。共和国に来てからそんなに日が経ってないけど。まあ、その厨二臭い称号は俺のものだよ。老害な冒険者ギルドのマスターが勝手につけた奴」
「――まさか!! この国を潰しに来たのか!!」
武器を構える虎人族と獅子人族。……マジで穏便に済ませて欲しいんだが。
ほら、ミュナが怯えちゃったよ。両目に涙だよ! ……おい、本当に国際問題になるぞ。獣人小国ビーストと海洋国家ポセイドンとの。
まあ、姫様連れ歩いている俺の責任問題に落ち着きそうだけど……なんか付いてくるんだもん!! そりゃ、仕方ないじゃん。
「能因先生はそんなことしません!! 能因先生は奴隷だった私達を助けてくれました。……確かに、人間にも悪い人はいます。でも、それは他の種族だって同じです。人間だからって、恐ろしい人だって噂があるからって、人となりを見ずに判断しないでください!!」
イオン、いいこと言うな。そうだよ、見かけや噂で人を判断するのは良くない。
俺は小市民のモブキャラなのに、噂が一人歩きして厄災扱いだし。
「……お前は、獣人のようだが」
「イオン=トーカ、能因先生の弟子で金ランク冒険者をしています。……私はかつて人間の奴隷商人に捕らえられ奴隷にされました。しかし、同じ?人間の能因先生に救われました。その後も、色々な人に助けられ、金ランク冒険者になり、仲間にも恵まれました」
「「金ランク冒険者だと!!」」
まあ、人間以外だと冒険者世界で出世しにくいらしいからな。
「……しかし、奴隷解放か。良い人間というのもいるんだな」
「俺は善人じゃないよ。というか、本当に善人なんてものがいると思うか? 自分の利益を度外視して考えられる存在なんて、ほんの一握りしかいない。今回、俺はたまたま目的があって、その過程で二度目の奴隷解放を行うことになったというだけだ。一回目は……同郷出身者から奴隷にされた仲間を助けて欲しいと懇願された。それに応じただけだ。俺は自分の目的を達成することを第一に考え、その過程で助けられる命があるんなら、助けても構わないと考えている。流石に万人は助けられないよ。それこそ、白崎さんみたいな勇者様じゃなければな」
「……草子君。草子君にできないなら、私には無理だよ」
……またまた、ご謙遜を。白崎さんは産まれながらの
「……分かった。とりあえず、この件をレオーネ様にお伝えしよう。返事はどうなるか分からないが、三日後、もう一度ここに来てくれれば結果を伝えることができるだろう。担当が違うかもしれないから、その時は名前を名乗ってくれ」
三日間のアポ待ちか。とりあえず、一旦屋敷に戻って、その間に仕事を進めるか。
俺は〝
◆
俺は非常勤講師や客員教授の立場を利用し、自身の担当する講義は全て集中講義にしてきた。
旅の都合上、毎日エリシェラ学園には通えない。
そういう意味で、この立場はいいものだと思う……エリシェラ学園の正職員にとっては目の上のたんこぶだと思うけど。
最終的には俺がいなくても講義が成立するように、担当する【魔法学入門】、【魔法学応用】、【魔法実践基礎】、【書誌学入門】、【文学基礎研究】、【文学演習】、【冒険者course(剣士)】、【冒険者course(魔法師)】、【冒険者course(魔法剣士)】、【冒険者course(治癒師)】の教員用教科書を完成させるべく、毎日一時間くらいだけど机に向かっている。
既に【魔法学入門】、【魔法学応用】、【魔法実践基礎】、【書誌学入門】の教科書は完成しているから、今からでも他の教員に講義を任せられる。しかも、十二×二回分のテスト付きだから考査まで完璧だ。
さて、と。今日はここまでにするか。あんまり根を詰めてやり過ぎてもいいものはでき上がらないだろうし。
エリシェラ学園の俺の研究室に〝
向かう先は、俺が顧問を務める文芸同好会だ……といっても、名前を貸しているだけで顧問として何かをしているって訳ではないけど。実質的には、副顧問のイミリアーナが監督をしている……なんで、俺が顧問なのかさっぱり分かんないな。
メンバーはノエリア、ヴァングレイ、フィード、気弱な文学少女のヴィクティーヌ=アントワーフ。
五人揃えば同好会から部に昇格できるんだけどな。文学系だと、今はBL部とかいう謎の部活が一大勢力を築いていて、大半がそこに入部しているから……。まあ、大体リーファのせい?
ノエリアはロマンス小説、ヴァングレイは推理もの、フィードは歴史小説、ヴィクティーヌはファンタジーが得意だったっけ? 思いっきり異世界ファンタジーな世界でファンタジーを書くって結構面白いよな。まあ、異世界人の俺の主観で、ヴィクティーヌにとってこの世界はファンタジーじゃない、紛うことなき現実なんだけど。
「よ、久しぶり」
「お久しぶりです、草子様」
おっ、全員作業中か。全員、机に向かってペンを走らせている。
「失礼します……って、草子様!」
来て早々お客様だ。しかも、マイアーレだった。
マイアーレは今や所属する演劇部で二大女優の一角に数えられているんだよな。エリシェラ学園美女・美少女ランキングのトップ10入りをし、ファンクラブまであると聞く。
少し前までは傲慢な豚貴族だったとは到底思えないような大変貌だ。
「時間が空いたから久々に活動を見に来ただけだから、別に気にせずどうぞどうぞ」
うん、こんなモブキャラ背景だと思って放置しておけばいいんだよ。
「草子様、私達演劇部は文芸同好会に毎回台本の作成を依頼していますわ。今回も、二ヶ月後の舞台用の台本を依頼しに来ましたの」
なるほど。舞台用の台本も文芸同好会が書いていたのか。
華々しい演劇部の影に文芸同好会あり……多分、知らない人も多いんじゃないか?
「舞台用の台本は、いつも部員全員で思い思いのものを作成していますわ。そして、その中で一番いいものを全員で話し合って決めた後に、演劇部に提出。そのまま採用されるか、修正案を頂くかした後、修正案を頂いた場合は、その部分について今度は全員で話し合って修正するという形を取っていますわ。ちなみに、採用されたのが私は三本、ヴァングレイが……」
「確か二本だ」
「それから、フィードお兄様が」
「……未だ採用されず」
「……フィードお兄様。お兄様の作品が単に舞台に向かないだけですわ! 落ち込まないでくださいませ。……それから、ヴィクティーヌ様が」
「二本ですわ」
つまり、得意分野から考えてラブロマンス三本、ミステリー二本、ファンタジー二本ってことか。
まあ、歴史ものって難しいからさ。……時代劇も忠実に再現し過ぎると面白味が薄れていくし。フィードはその辺りきっちり書いちゃうタイプだから。ロゼッタと同じで。
「折角なので草子さんも参加されてみてはいかがでしょうか?」
そう提案したのは、イミリアーナ。そして、ここにいるメンバーからも異論は上がらない。
「……いや、俺顧問だよ? 部員じゃないけど大丈夫?」
「何か問題があるのですか? イミリアーナ先生も一度お誘いしましたわよ? ……断られてしまいましたが」
まあ、文学研究者が必ずしも台本を書けるという訳ではないけど……って、そういう話!!
「その辺り、演劇部としてはいいの? 俺、小説と台本に関しては素人だよ? 他人の作品を評論することはできても、自分では書かないタイプの人だよ? まあ、一度はチャレンジしてみたいとは思っていたけど」
「なら、丁度いいですわよね?」
丁度いいそうだ……マジか。
「分かりました。お引き受けしましょう。後で演劇部の方にも寄らせてください。インスピレーションを得たいので」
「今からでも大丈夫ですわよ」
大丈夫、だそうだ。……いや、普通飛び入りの見学ってお断りするよね?
マイアーレと共に演劇部が練習している学内劇場へ。
おっ、活動している。台詞合わせかな? 全員普段着のドレスだし……うん、日本だとジャージとかでやるから違和感ありまくりだな。
見学者も多数いるようだ。だから、事前予約無しで見学して良かったのか。納得。
推しの役者がいるのかな? 演劇部といえば、男装の麗人シャンテル=パトリヴォールと、麗しの姫君マイアーレ=ノルマンディーの二人だけど。
この二人は格が違うからな。ファンクラブの会員が三桁に達しているらしいし。
令嬢達の敵意の篭った視線がこっちに向き、そのまま石化した……何! 邪魔なら邪魔だって言ってくれよ!!
「……えっと、出したい人数とかってありますか?」
「演劇部の部員の中で役者は六十人ほどいますわ。ですが、その全員を無理に出す必要はありませんわよ。毎回オーディションをしていますし」
なるほど、全員出せるように調整しないといけないのかと思っていたけど、その必要はないのか。
本当に実力主義の世界だな。まあ、その中で選ばれるんだから、当然実力が高い人ばかりになるんだけど。
お家の権力に頼っていい役を得るとか、そういう悪い風習は無さそうだ。
さて、どうしよう? 全員がカメレオンの域に達さないにしても、相当レベルが高いから別に役者に合わせて作る必要は無さそうなんだよね。
それが分かった以上、ここにはもう用事はない。後は紙と向かい合って決めていくことだ。
「マイアーレ様、ありがとうございました」
「えっ! 本当にこれだけでいいんですか?」
「これだけレベルが高いなら、役者からキャラを決める必要はありませんからね。あっ、ちゃんと文芸同好会と渡り合える台本を書けるように努力はしてみるんで、その辺りは大丈夫です。……まあ、本当は俺よりもレーゲン君の得意分野なんだけどな」
こっちは文学研究者、レーゲン君は著者。向こうの方が本職だし。
「それじゃあ、俺は失礼します。何かありましたら、研究室に手紙でもメモでもなんでもいいんで置いといてください」
演劇部を後にし、次の目的地に向かう。元々は、文芸同好会の後に行く予定だったんだけど、途中で予想外の仕事が増えたからね。勿論、楽しくやらせて頂きますよ!!
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