異世界のすぎのこ村はきのこの山とたけのこの里の戦禍に巻き込まれて消滅したのかもしれない。

 異世界生活??日目 場所ウィルヴァルドの森


 怯えるエルフの女性にとりあえず【看破】を使ってみる。何か対話の糸口になりそうなものが見つかるといいんだけど……。


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NAME:リーファ=ティル・ナ・ノーグ AGE:17歳

LEVEL:18 NEXT:1200EXP

HP:369/369

MP:321/321

STR:321

DEX:640

INT:30

CON:210

APP:30

POW:210

LUCK:48


JOB:弓使いアーチャー、魔法師、冒険者


SKILL

【弓術】LEVEL:4

→弓を上手く使えるよ!

【照準】LEVEL:4

→照準を付けるのが上手くなるよ!

【狙撃】LEVEL:4

→狙撃が上手くなるよ!

【風魔法】LEVEL:3

→風属性の魔法を使えるようになるよ!

【木魔法】LEVEL:3

→木属性の魔法を使えるようになるよ!

【エルフ語】LEVEL:60

→エルフ語を習得するよ!

【クライヴァルト語】LEVEL:5

→クライヴァルト語を習得するよ!

【気配察知】LEVEL:4

→気配察知が上手くなるよ!

【魔力察知】LEVEL:3

→魔力察知が上手くなるよ!

【カップリング】LEVEL:62

→カップリングさせた二人のステータスを上昇させるよ! 一度にカップリングできるのは一組までだよ! 男同士、女同士だと効果が上がるよ!


ITEM

・グリーンウッドの弓

→魔獣グリーンウッドの幹を使用して作った弓だよ!

・突風の矢

→突風の加護を受けた矢だよ!

・木の矢×99

→木製の矢だよ!

・麻のワンピース

→麻で作ったワンピースだよ!

・革の袋

→革製の袋だよ!

・本

→本だよ!

・銀貨×49

→万国共通の銀貨だよ! 価値は一枚で百円だよ!


NOTICE

・通知一件

→未使用のポイントが後1600あります。

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 ……対話の糸口を探していたら見てはいけないものを見てしまった。……スルーしよ。


 このリーファというエルフの女性は【エルフ語】と【クライヴァルト語】しか話せないのか。一方、俺の方は【マルドゥーク語】と【マハーシュバラ語】……言語に一致は無いな。


 とりあえず、ボディーランゲージで意思を伝えてみることにした。俺は【異食】と【書誌学】を【虚々実々】で無理矢理繋げることで、食べた書誌の内容を完全理解・完全記憶することができる。その際に書かれた言語に関する知識を得るなど、その理解を不自然なものにしないために付随したスキルを習得した状態にする因果改変が行われるようだ。

 

 つまり、リーファが持っている本を食べさえすればコミュニケーションを取ることが可能になる……客観的だとヤベエ奴だな、俺。

 ボディーランゲージで伝えてみたが、リーファは空中に疑問符を浮かべている……ちっ、ダメか。


 ボディーランゲージは諦めて別の方法を試してみる。皮の袋からルーズリーフとボールペンを出し、本の絵を描いてからジェスチャーでこっちに渡してほしいとやってみた。

 ……まさか、こんなところで【絵画】のスキルが役立つとは思わなかったよ。うん、普通に描くよりも上手く描けた。


 リーファもようやく俺の意図を理解したようだ。……我が意を得たりまで時間掛かったな。

 まあ、この程度の時間で意思を伝えられたのは運が良かったのかもしれない。出●イングリッシュの方が異常なんだ。……まあ、アレは多少英語を知っているのと、相手側に理解しようという強い意思があるから成立する企画なんだけど。


 リーファは皮の袋から本を出してこっちに渡した。素材は雁皮に似た植物……異世界版斐紙というところだろうか。うん、間違いない。これ、絶対に美味だ。

 本を口に運ぶ。リーファは衝撃を受けたのか青褪め、次にアワアワだし、最後は止めようと手を伸ばした……短い間で表情変わりまくりだな。疲れないのかな。

 聖は頭に手を当てて、「はぁ」と溜息を吐いていた。……あの、変態な聖に溜息吐かれると物凄い傷つくんでやめてくれません!!


 食べてすぐに頭に浮かんだのは男同士が絡み合う絵と台詞……ああ、これアレだ。

 なるほど、こいつはエロフだったのか。いや、エロフっていうよりはエル腐か腐女エルフか……要するに腐葉土か。地面に埋めたらきっと大地に恵みを与えてくれるだろう。よし、埋めよう。


「腐女エルフ、なんてもんを食わせてくれたんだよ! 俺の頭の中にBLが刻まれちまったじゃねえか!! なんで異世界言語を知るためにBL本を食べなきゃいけないんだよ!! ……よし、腐っている奴は土に埋めてやろう。きっと汝は自然に還ってこの地を実り豊かにするだろう。森の民森と友達のエルフだし、腐葉土のマブダチみたいだし、きっとすぐに栄養になれるさ」


「なんで、大切な本を差し出して、食べられた挙句怒られないといけないんですかッ! 理不尽です、不条理です! ……あっ、貴方もBLを理解したなら同志じゃないですか。一緒にBL文化を広めましょう。それが世界のためなのです!! ……嫌なら別にいいんですよ、私を埋めるならBLを理解して腐った貴方も土に還るのが道理。さあ、一緒に埋まりましょう!」


 くそ、なんて女に出会ってしまったのだ。

 とうもろこし色に輝くウェイブの掛かったロングヘア、すらっとした長身に出るとこは出て引っ込むところは引っ込んだスタイル。

 肌は雪のように白く白磁のように滑らかで、切れ長の双眸、高い鼻筋、薄い唇が完璧な配置で並んでいる。

 見た目は超絶美人なのに、中身が、中身がダメだ。マイナスポイントだ! 少なくとも俺は受け入れられない。そういうのが得意そうな人に貰ってもらおう。それが一番だ。


 なんで、聖といい見た目は羨ましがられそうな美人なのに中身が壊滅している奴ばかり現れるんだよ! 俺はハーレム主人公の座とか狙ってないからそもそも仲間が増える時点でマイナスポイントなのに、なんでその上ポンコツ属性が全員に付与されるんだよ。

 よし、今すぐ二人をクーリングオフして無かったことにしよう。


「……あの、無かったことにしてどこかに行こうとするのやめてほしいんですが」


『なんで、あたしまで置いて行こうとしているの! そもそも、今はどういう状況なの!!』


 聖とリーファに両腕を引っ張られた。ってか、なんで幽霊なのに普通に俺の身体に触れられるの! 色々おかしくね。

 仕方ないので、逃走を諦めた。いや、完全に諦めた訳じゃない。隙を見てコイツらから逃走する。絶対に逃げる。……あれ、俺ってコイツらから逃げるのが目的だっけ、あれー?

 あっ、目的ってこの世界の情報を得ることだったか。と、その前に。


「えっと、リーファさんでしたっけ? 逃げないんで手を離して下さい。後、言語スキルって共有できたりしませんか?」


 とりあえず、聖がリーファの言葉をリーファが聖の言葉を理解できないのは不便だ。一々翻訳するのは面倒くさい。


「変わり身が早いですね。……私には無理ですが、【生活魔法】に確かそのような魔法があったような」


「よし……〝言霊よ、我と汝を隔てる言葉の壁を壊し給え〟――〝シェア・ラングウィッジ〟」


「なんで私まで!」


 とりあえず、聖とリーファを対象に適当に作った言語知識共有魔法を発動した。これでなんとかなるだろう。


「さて、これで聖さんとリーファさんもお互いの言葉を理解できるだろう」


「……凄い方なんですね。なんというか色々と型破り過ぎる気がします。……というか、今更ですが私の名前知っているんですね」


『草子君は、【看破】スキル持っているから基本的になんでもお見通しだよ。あっ、自己紹介がまだだったね。あたしは、高野聖。高野が苗字で聖が名前だよ。美少女幽霊セイちゃんって呼んでね』


「聖さんは幽霊なんですね……草子さんも含めて色々規格外な方々です。私はリーファ=ティル・ナ・ノーグ、既にご存知だとは思いますがエルフです」


「それで、リーファさんはどうして一人でこの……えっと、ウィルヴァルドの森へ?」


「一人でいることまで……なんでもお見通しなのですね。この竹藪で取れるタケノコや森で取れるいくつかの薬草を取りに来たところです。エルフの集落や人間の町とかで売ると結構な収入になるので。同人漫画描いててもなかなか給料入りませんから」


 異世界で同人漫画描いている漫画家っているんだぁ。これだけ争いが起こっている世界で同人漫画の需要はあんまり無いだろうな。というか、そもそもBLを需要できる人がそもそも少ない気がする。地球でも「寧ろウェルカム」な人と「絶対に無理です」って人にぱっかり分かれるジャンルだし。


「ちなみに、ウィルヴァルドの森の竹藪に生えるタケノコは、ジェルバルト山に生えるというキノコと並んで最高級品とされています。そのまま食べても良し、回復薬の材料にするも良し、天然の回復薬であり、魔法薬であり、能力上昇薬なのです!」


 どうやら、異世界にはきのこの山とたけのこの里があるらしい。すぎのこ村は無いのかな? ネット上でよくきのこたけのこ戦争が起こっているけど、三つ目のすぎのこ村の名前はほとんど聞かないしな。確か、きのこたけのこ戦争の戦禍で跡形もなく消し去られたらしいけど。……まさか、異世界のすぎのこ村もきのことたけのこの戦禍に巻き込まれて。

 ……まあ、別にどうでもいいけど。きのこでもたけのこでも魔獣肉よりは絶対に美味いだろうから。


「それで、草子さんと聖さんはどちらから?」


「よく分からない迷宮に飛ばされて、迷宮突破したら森に飛ばされました。……飛ばされてばっかだな。配置換えが甚だしいよ。……就職もしていないのに? 俺何も悪さしてないよ!!」


「……配置換えとかよくわからないですけど、とりあえずお疲れ様です。……って、迷宮を突破したって言いましたけど、そんな軽く済ませていいことなんですか?」


『草子君はチートだからね。あたしが出会った時は既に化け物だったし……ってか、野生児?』


「失敬な! 俺も最初はレベル一だったよ! クラスメイトの連中はみんなチートスキルとか選べたのに、俺だけ残り物を纏めて押し付けられたんだよ!! それなのに、俺をチート扱いするのっておかしくない!? 俺は善良な一モブだ! ただのモブをチートにして一体誰得なんだよ!! 主人公霞んじゃうよ!! 主人公誰か知らないけど!!」


『……絶対草子はモブじゃないわよ。寧ろ、一体どんな思考をすればモブだって答えに行き着くのよ。……まあ、この世界は物語じゃないんだし、主人公とかモブとか無いけどね。みんながそれぞれの人生の主人公なのです!』


 なんかいいこと言って纏めやがったよ。まあ、これ以上この問題を掘り返すのはやめよう。面倒だ。


 さて、とりあえず互いの状況を把握することはできた。次にすべきことはアレだな。これからの行動方針を決めることと、この世界の情勢を聞くこと……寧ろ、こっちの方が大事じゃん。なんで、導入部分でこんだけ時間を使っちゃったんだろう? まあ、こっちは特に時間制限とか無い訳だし、ゆっくりしても問題無いんだけどね。

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