【相沢秀吉視点】学年三位の自惚れの強い野心家が現れた! クラスメイト達を支配して王国を建国したいようだ! しかし老害が無意識に仕掛けた罠に引っかかって島流しにされたようだ!!

 僕は自分で言うのもなんだがかなり……というか相当賢い方だと思う。

 学年一位の座こそ白崎から掠め取れなかったものの、学年二位という華々しい結果を維持してきた。

 二学期の中間テストからは能因とかいうクラスでいつもぼっちな奴が圧倒的な追い上げを見せて白崎さんを超えたらしいが、あれはきっとまぐれだろう。そこまで重要視することでもない。


 さて、ある日の昼下がり、教室に魔法陣が出現するというよく分からない事態に陥り、クラス全員が異世界に召喚された。

 うん、小学生の頃から現在の大学模試に至るまで算数も数学も満点以外の数字を出したことにない僕でも流石に計算できなかった。……まあ、降って湧いた天災を計算で解析できる筈もないけど。


 目を開けるとどこまでも真っ白な部屋が広がっていた。

 どうやら教室にいた全員が転移されたようで、その中には他クラスの生徒の顔もあった。


 その後この召喚を行ったらしい自称神の老人が現れたが、とにかく言っていることが支離滅裂で纏まりが全くない。流石の僕でも解析不能だった。

 その内、この現象について知識を有しているらしいオタクの一人(……名前、誰だっけ。まあ下賎な奴の名前を覚えておいても仕方ないし、いいか)がその老人からタブレットらしきものを奪い取って勝手に操作し、その後扉に向かって走り、その後を不良達が追いかけた。


 僕はこの間猛スピードで演算を行っていた。これから行くことになるであろう未知の世界では、今までの常識が通用しない。必要なのは頭脳ではなくスキルや魔法などの超人的な力や魔力。

 僕は不良とオタクが去ったのを確認した後タブレットをこっそり拾い、物凄いスピードで精読した。


 どうやら、オタク達も急いでいたようでしっかり吟味する余裕が無かったようだ。また、不良にオタク達が有するような知識や僕みたいな賢さを求めるのはそれこそ無理がある。

 やはり、ぶっ壊れ性能のスキルがいくつか残されたままだった。


 異世界で生き残るためには強くならなければならない。逆に強くなればどんなことでも思いの儘だ。

 クラスの美女を手篭めにすることも、男達をこき使って王国を建設することも何でも思うが儘。そのためには、より強力でそして応用の効くスキルを選択しなければならない。


 選んだのは【傀儡】と【模倣】、【運率操作】。

 【傀儡】があれば相手を操って仲間割れを起こさせたり、奴隷にしてこき使うことができる。

 【模倣】があればどんなチートスキルを模倣することができる。まあ、制限があるだろうがその対策も検討済みだ。ここには無いが【強奪】などのスキル持ちから【強奪】などを模倣し、【強奪】などの所有者を殺して【強奪】などを奪う。これでスキルについては問題なくなるだろう。

 そして、【運率操作】。これさえあれば、一パーセントの確率も百パーセントに変えるようなことができるだろう。少々トリッキーだが、だからこそ天才的な僕ぐらいにしか扱えない。


 余ったポイントで【這い寄る混沌】を取った。理由はなんとなく強そうだから。オタク達ならどういうものなのか分かっただろうが、僕にはさっぱりだ。


 そもそも、僕は人生で一度もゲームなどの娯楽に興じたことがない。それくらいなら勉強をする。

 純文学こそ読むが、通俗小説や漫画などには決して手をつけない。そんな娯楽に興じる時間があるなら、勉強のような少しは身になることをした方がいい。勉強もせず、漫画やアニメの話ばかりしているオタク達は本当莫迦なのだろうか? まあ、僕より賢い奴などそうそう居ないし、大体が莫迦だけど。


 タブレットをこっそりと元の場所に戻した。こそこそやっていて小者みたいに見えるが、これが最適解なのだから仕方ない。天才は時に小者のように振る舞うこともあるのだ。


「あの、皆さん。ボクもそろそろ行こうと思います。正直、こんな奴らのために・・・・・・・・・何かをしてあげたいとは露ほども思いませんから。志島さん達もこんな奴ら放っておいてスキルを選んだ方がいいですよ。早い者勝ちみたいですし」


 その後、男の娘のような見た目のオタク(こっちも名前を忘れた)を皮切りに猛スピードでクラスが瓦解していった。

 ふふふ、作戦通りだ。寧ろバラバラにする手間が省けた。勝手に仲違いしてバラバラになってくれるなら、やり易くなる。まずは【強奪】持ちを見つけて殺さなければならないが、それが終わったらバラバラになったクラスメイトを少しずつ着実に殺していこう。

 僕のハーレムは目の前だ。僕の王国は目の前だ。


「委員長、貴女がクラスを纏めようと必死なのは分かっている。でも、肝心なクラスメイトが纏まる気がないのなら、纏まれるものも纏まれない。……すまんな、俺達も行くよ。こんな高慢ちきと一緒にはいられない。そんな生活はごめんだ」


「……進藤君」


 進藤が消えたこの機会に便乗し、僕も行動を開始する。


「僕も行くとするよ」


 進藤達が扉に入っていったのを確認し、僕も扉を潜った。



 異世界生活一日目 場所???


 ――計算が狂ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!


 全く意味が分からん。こんなこと演算できる筈がない。もし、この超展開を予想できるならそいつはあの老神以上に神っている。

 扉を潜り辿り着いたのは、よく分からない島の海岸。

 見たことがない海鳥が飛んでいる。周囲にクラスメイトらしき人影はない。


 しばらく考えた末に状況を理解した。理解して苛立ったから海に向かって叫んでみた。


「老神の大莫迦野郎!! なんで転移先がランダムになっているんだよ!!!」


 これじゃあ、【強奪】持ちを見つけることもクラスメイトを支配することもできない。そもそも誰もいないのだから。


 砂浜を少し行った先は完全に密林……これ、完全に無人島だ。未開の地だ。あの老神はこんなところに転移させて一体何をさせたかったのだろう。

 この灰色の脳細胞を持つ天才的な僕にも、あの老神の考えを推理するのは難しそうだ。


 とりあえず、ここにいても何も始まらないので行動を開始する。

 密林に入ったところで巨大な蛇と出くわした。こちらを見るなり飛び掛かってくる。


 よし、計算。このまま回避行動を取った時に蛇の攻撃を回避できる確率、二パーセント。

 二パーセントを【運率操作】で百パーセントに……ふう、なんとか撒けたようだ。

 しかし、密林に入るのは危険だな。あの蛇みたいなのがうじゃうじゃいるとなるとゾッとする。


 仕方ない。当分は密林に近づかないようにして、海岸付近で生活しよう。

 ……ところで、なんで異世界に来て無人島生活始めているんだろう。しかも、インテリの僕が。



 異世界生活一日目 場所:???島(無人島)


 海岸に帰ってきた。海岸が安全だと百パーセント断言できる訳ではないが、少なくとも密林よりは安全な筈だ。

 探索するといっても、今のままでは無理だろう。そもそも、今何ができて何ができないのか分からなければ、インテリの僕といえど対策を立てることはできない。


 あの老神のタブレットでスキルと称号を獲得した。

 さっきの大蛇との戦闘で【運率操作】が使えることが分かった。

 だが、他のことはさっぱりだ。せめて、今持っているスキルを確認できたら。


「スキル確認……なんて言ったところで何も表示される訳な……」


 いくらなんでも簡単過ぎる。適当に言っただけでステータスが表示されてしまった。

 そんなんでいいのか? 何か手順を踏まないと確認できないとかじゃないのか? よく分からんが。


 とりあえず、表示されたステータスを確認する。


-----------------------------------------------

NAME:相沢秀吉 AGE:16歳

LEVEL:1 NEXT:10EXP

HP:28/28

MP:30/30

STR:50

DEX:25

INT:150

CON:15

APP:10

POW:15

LUCK:1


JOB:-


TITLE:【這いよる混沌】


SKILL

【全属性魔法】LEVEL:1

【恐怖耐性】LEVEL:1

【機械作成】LEVEL:1

【報連相】LEVEL:1

【暗躍】LEVEL:1

【変身】LEVEL:1

【冷笑】LEVEL:1

【狂気】LEVEL:1

【叡智(魔法)】LEVEL:1

【叡智(機械)】LEVEL:1

【傀儡】LEVEL:1

【模倣】LEVEL:1

【運率操作】LEVEL:2


ITEM

・学生服


NOTICE

・通知一件

→未使用のポイントが後100あります。

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 【運率操作】のレベルが上がっていた。あの戦闘で使ったからだろう。

 老神のタブレットで選んだ【傀儡】と【模倣】も確かにあった。

 後のスキルには見覚えがない。状況から鑑みて称号の【這いよる混沌】を獲得したことで追加されたものなのだろう。つまり、あの場で称号を選ぶのが一番正しかったのだ。……このインテリをもってしても見抜けなかったとは。


 【全属性魔法】があるのはありがたいな。魔法が使えるならあの大蛇をどうにかできるかもしれない。

 【恐怖耐性】も有用だろう。


 だが、ここからがよく分からない。【機械作成】、何もないのにどうやって機械を作るのか。もし、何も材料無しに機械を作れるスキルならE=mc2の理論を完全に逸脱している。材料の無い今の状況では完全に無駄スキルだ。


 【報連相】、異世界で報告連絡相談を徹底する必要があるのだろうか? 異世界で上司が待っているのだろうか? 僕ほどの男をこき使う上司など居てたまるか! 僕をこき使う上司が居るのならばソイツに身の程を弁えさせてやる!!


 【暗躍】、確かに有用かもしれないが……誰も居ない無人島で暗躍しても仕方ないじゃないか! こういうのは人がいるところで使うスキルだ!!


 【変身】、一体何に変身するのだろうか? 身体の構造を変えるスキルなのか? とにかく分からない今は迂闊に使わない方がいいだろう。戻れなくなると嫌だし。


 【冷笑】と【狂気】、この二つのスキルは全く有用性を感じない。冷笑を浮かべながら狂気を撒き散らすのか? 異世界の無人島で? 人間がいるところでやってもマズい、人間がいない無人島でやっても虚しい……このスキルの有用性、あるのか?


 【叡智(魔法)】と【叡智(機械)】、この二つは一体どのような効果を持つのか? 魔法と機械に関する知識を得るスキルなのだろうか? 名前だけではよく分からないが、そういうことだと仮定しよう。


 とにかくスキルの会得状況は分かった。【全属性魔法】はあるがこれを過信し過ぎると最悪死ぬ。

 インテリの僕に限ってそんなつまらない死に様を晒すことは無いだろうが、それでも万が一ということがある。もう少し色々試行錯誤してみるか。

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