妖怪奇譚~まったり日常~

食人

プロローグ

小鳥達の小さく甲高い歌声に目を覚ます。

目を擦りながら軽く背伸びをし、ベッドから足を下ろす。

まだ半分、寝惚けながらも手探りで窓際まで行きカーテンを豪快な音と共に開く。

窓を開け、紺色の世界にキラキラと怪しげな金色を浮かばせる星空と三日月をまだ夢心地の覚めない頭で見つめる。

ふわりと自然の香りと共に部屋へと少年の髪や頬を撫でながら微風が入って来る。

それと同時に扉を軽くノックする音が聴こえてくる。

「ん…。なぁに。」


幼く甲高い声を発しながら振り向くと、外側からドアノブを捻られ先程軽快にノックした本人が中へ入って来る。

黒髪に所々に金色も散りばめた変わった髪色の青年がにこやかに微笑む。


「おはよう、マスター。」


「んぁ…?おはよう…冰翔ぁ《ヒョウカ》…」

未だにも目をゴシゴシと擦りながら半目開きの瞳に冰翔と呼ばれるその青年を映す


「うん。…ところでマスター。」

「今何時か…分かる?」

爽やかな笑みと共に少々禍々しいオーラを背後に浮かばせながら軽く首を傾げる。

暫くの沈黙が流れ、少年の部屋にある時計の針が一秒一秒と時を刻む音と外から奏でられる草木のざわめく音だけがこの空間を支配する。

暫くこの時間が続くと痺れを切らした冰翔が溜息を吐く。

「マスター、もう昼だよ?」


「……え?」

「いや、だからね?マスター。もうお昼だってば。」

口を情けなく開きあっけらかんとする少年にコツコツとヒールブーツを鳴らしながら冰翔が近付く。

目の前まで行くと少年の頭を軽く叩き「馬鹿マスターめ」と叱りつけると少年は「あいたッ」と小さく呻き、頭を抑えながらうぅ〜と唸り始める。

「酷いよぉ…冰翔の馬鹿ぁ…!!」


「昼まで爆睡するマスターが悪いね。反省しなさい」

と腕を組みながら仁王立ちでマスターと呼ばれる少年、黒江 吾藍クロエ アランを見下ろす。



こんな風に馬鹿げた日常の幕がまた開き始める。

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妖怪奇譚~まったり日常~ 食人 @syokuginnlarann

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