第4話 ジルガとの出会い
「・・・・・・君も?」
「ええ、ここだけ花畑なのが気になってね」
青年はヤヨイのそばに座って、下から上目遣いでヤヨイの顔をじーっと見つめた。ヤヨイは青年は見つめ返した。
容姿は完璧と言っても良いほど整っていて、手足もすらりと長くほどよく筋肉がついていて、スタイル抜群だ。
「なにか、出てきた?」
「・・・・・・骨」
「・・・・・・はい?」
爽やかな青年の口から相当ヤバい発言が、漏れ出た。いや漏れ出てはいないか。
『어떤 것이? 보여라』(どれだ?見せろ)
青年が「骨」と答えると、いつもより威圧的な発言とオーラを漏らし始めたイムギは、青年をキツく睨みつけた。
「見せて欲しいって」
通訳すると青年を地面を指差した。そこには白いものが覗いていた。
「気持ち悪っ!」
エイジがまた吐き出した。またリンズに駆け寄っていって薬を飲み出した。ヤヨイは骨を掘り出すように大蛇の一族に言うと、すぐさま掘り出される。
「・・・・・・人骨」
「よね」
頭が急に痛み出して手で強く押さえた。
『そなた、名は?』
「・・・・・・ラズベリー、この状況で聞くことかしら?」
もっと頭が痛くなった。
「・・・・・・ジルガ。君」
まともに答えた青年=ジルガに、さっきよりもより強く頭が痛くなり頭を抱えた。
「・・・・・・私はこの子たちの主、ヤヨイ。こっちはエイジ。この子たちの名前は覚えなくても支障はないわ。でも、一族の長の名前は覚えておくと良いわ」
ヤヨイの隣から黒い影が幾つか進み出た。
『俺はラズベリー。銀狼一族の長だ』
『僕(やつがれ)はルルーガと申します。蛇一族の長です。私のいた国は四季が綺麗だった』
『わっちは菊月。妖精一族の長をしていんす。結構辛いんでありんす、こなたの立場』
『我是中国妖怪的长,檮杌。预先说只这个,我断定!不是好吵架的人因为。预先记只那个!』
「私は中国妖怪の長、檮杌。これだけは言っておく、私は断じて!暴れ者ではないからな。それだけは覚えておけ!・・・・・・だって」
何故か向きになって自己紹介を檮杌はした。
妖怪たちは人間が滅亡させた世界からこの今まで生き延びてきた。地上で苦しむ妖怪や精霊たちを、地上に出ることの出来たヤヨイが地下の自分の家で匿ってきた。
匿われる前に何があったのかは、ヤヨイもそれなりには理解している。檮杌は一番扱いが酷かった。
『앞으로 한국에 있던 드래곤 일족의 길이, 이무기이다. 한국은 잘 번성했다』
「手前は韓国にいた龍一族の長、イムギだ。韓国は良く栄えていた・・・・・・。なんでみんな、自分の地位と自分のいた国を自慢したがるの?」
ヤヨイは呟くと同時に、手に青白い炎を生み出した。
「・・・・・・なに、する?」
「この花畑の一帯を掘り返すのよ。ああ、安心して。掘り返して異常がなければ、すぐに元に戻すわ」
青い炎が暖かな薄い光を発しながら、花畑を優しく包んだ。すると、花々が持ち上がり宙に浮いた。
「・・・・・・詠唱なし」
ジルガが小さく呟いたが、ヤヨイの耳には入っていない。
「ラズベリー、どう?」
『百を超えてる人骨遺体だ』
『しかも綺麗に並べられていんす。どなた がこなことを・・・・・・』
ラズベリーと菊月が顔を青白くして、息を深く吐いた。エイジはリンズにしがみついて肩をブルブルと震わせている。
「・・・・・・僕じゃ、ない」
「ええ、分かっているわ。あなたではない、香水の匂いがするもの。あなたが埋めたのなら匂いで分かる」
銀狼たちが地面を鼻を鳴らして嗅ぎ出した。なるべく邪魔にならないように花々を空高く上げた。ジルガとヤヨイはその間、近くにあった地面から顔を覗かした木の根に腰掛けた。
「ジルガは地上の人間よね」
「・・・・・・うん」
「話すのが苦手なの?」
「・・・・・・人間が怖い」
「私は?」
「・・・・・・分からない」
質問して答えることを繰り返した会話をしていると、するするするーっとルルーガがやって来た。
「っひ!」
引きつった悲鳴を上げたのは、ジルガだった。ヤヨイの後ろに回り込んで、ヤヨイの服を掴んだ。
「蛇が怖いの?」
「・・・・・・それ、ダメ!」
強く拒絶されてしまった、蛇一族たちは肩を落としている。(はいはい!ミールチェです!一応言っておくけど、肩はないからね!)
「ああーっ!ヤヨイに触るな!馴れ馴れしいぞ!」
エイジがジルガに突っかかった。口調に嫉妬の念が隠っているのが感じ取れる。
「ルルーガ、悪いのだけど人の姿になって貰える?」
『畏まりました、では』
ルルーガの一声で蛇一族は人の姿になった。蛇一族ではなく、他の一族も同じようなことが出来る。
ルルーガたちが人の姿になると、ジルガはゆっくりと言うより、恐る恐る前へ出た。
『どうやら、この骨を埋めた者は北に向かったようです』
ルルーガは両手を前に重ねてうやうやしく頭を下げる。まるで王に拝謁するかのようだ。
「・・・・・・北」
「なにか心当たりがあるの?」
「・・・今の北は、危険」
「危険?」
『为什么呢?』
日本語を話さない妖怪や猛獣たちには困る。
「何故だ?って」
「国王諸共、王族が消えている」
ハッキリとエイジは言った。それにはなにかの強い決意が含まれてあった。
「なんですって?」
世界が人類の手で滅亡してから、約二万年は経った。その間にもこの世界をを取り仕切る王が立てられた。その一族を王族とした。
同じ現象が他の場所でも起こっているのか確かめようと、問いかけ詰め寄った。
「・・・・・・これ」
手渡されたのは花粉のついた新聞だった。
「読むわね、【昨夜遅く、国王が突然姿を消した。王妃と王子、王女も姿を消しており、王族関係者も何処かに行った。探し出してくれた者には、王家財産庫に収められる王家の財産から5000億円、報酬として支払われるそうだ】だって」
『5000億円』と聞いて、エイジの目がキラリと光った。菊月がもうなにを買うか悩み始めている。
『探しんしょう!お国のために!そいであちきらのために!』
「簪やら何やら買うつもりでしょう!」
『そんなことありんせん!・・・・・・たぶん』
深くため息をついて肩を落とすと、木の根元に座ったまま肩を抱いているジンガに手を差し伸べて、立ち上がらせた。
「ジンガ、家に戻って。私たちは北に行くわ」
「寒いだろうから暖かくしていかないとね」とラズベリーたちと話しながら、歩き出すとジルガが、瞳の中の赤い血管まではっきり見せながら目の前に立った。
「僕も行く」
「へ?」
『ジンガ様、それは大変危険すぎます。お止めになられた方が良いかと』
ルルーガが恭しく頭を下げた。
「そうよ、危なすぎるわ。骨もすぐに折れそうだし」
ジンガはもやしのようだ。ひょろひょろっとしていて、手足が長い。しかし服の上から見てみるに筋肉は適当についているようだった。
「大丈夫」
意思がハッキリとしていた。ラズベリーたちは顔を見合わせ、小さくため息をついた。
「でも、私たちはいろいろとお金をかけなきゃいけないから、働くわよ?それでも良いの?」
「・・・・・・なら、僕も持ってく。貯金があるし」
そこまでの決意があるのなら、とヤヨイは許可を出した。
「今から行くけど、取りに帰って。検査門で待ってるから」
「・・・・・・分かった」
この世界には東西南北にそれぞれ大きな門があり、その門は危ない物は持ち込もうとしていないか、罪人ではないかなどが調べられる。しかし利用するのは地上の人間ばかりで、地下の人間はほとんど利用しない。
ジンガは左の細い道を行き、ヤヨイたちは大通り(大通りと言っても瓦礫が散乱していて、足の踏み場も無い)に繋がる道を歩き出した。
「あの子、良いとこのお坊ちゃんよね。大丈夫かしら?」
ヤヨイは彼の服と匂いを嗅ぎ取った。ジルガの体臭は全くとはいかないが、ほとんどせず、甘く良い香りを纏っていたからだ。地上の人間だと言っても、皆が裕福なわけでは無い。家業を成功させた者が財産を握り、家業を失敗した者はす財産を一つも握ることはなかった。
『さあな。彼自身が言っているのだろうから、大丈夫だろう』
ラズベリーたちは1㎜も興味を見せない。
『でもあの子、なにか裏を持ってる気がしんす。何なのかは分かりんせんが』
菊月がすっと目を細くして、煙草をくわえて、ふーっと息を吐いた。
「そうよね~」
花より他に知る人もなし~世界の滅亡が率いた事件簿~ @Vuitton
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