進行、兆し、暗雲

 バイクさんの振動に揺られながら高山地方を進む……はぁ、皆で話し合って決めたとはいえ、よかったのかなぁ。


「どしたのイエイヌー? 溜め息なんか吐いちゃって」

「いえ……乗れなかったからとはいえ、タカさんをサービススペースに残してきちゃって大丈夫だったかなと思ってまして」

「そうッスよねぇ……サイガの事もお願いしちゃったし、ちょっと申し訳ないッス」

「しかし、サービススペースに有事があった際に対処出来て、緊急時に素早く我々の所に連絡しに来れる者となると彼女以上の適任者は居ない。アムールトラ君は現在の最大戦力である以上、向かう先でセルリアンと戦う可能性もあるのだから来てもらった方がいいだろうしね」

「いやぁ、照れるなぁー。ま、皆に何かあれば何処に居ようと全力で走って助けに行くけどねー」


 いやそれは流石に、と思ったけどアムールさんなら本当に来そうな気がする。と、まぁそんなこんなで、現在タカさんを除いたメンバーでロープウェイ乗り場に向かってるところです。タカさんにはサービススペースの様子を見たり、ニホンオオカミさんやサイガちゃんの事もお願いしてきてます。タカさんに任せておけば安心だけど……ちょっと寂しいのが私の本音かな。

 まぁ、向こうの調査をなるべく早く終わらせて戻ればいいんだから、頑張ろう。それにもし何かあったらターミナルの管制室で各所を確認してくれてるガードさんからも私のデバイスに連絡があるだろうし、あまり心配し過ぎても仕方ないか。


「それにしても、これは便利だね。まぁ、乗っているのがセルリアンだという抵抗感は多少ありはするがね」

「あー、やっぱりそうですよねぇ」

「あたしはもう慣れちゃったけどね。バイクのこのすべすべした感じ、嫌いじゃないし」

「アムール姉さんもイエイヌも凄いッス。あたしはまだ直に触れるの怖いッスー……」


 ビーバーさんも、あの大量セルリアンをすり抜ける時に座った筈なんだけどね? まぁ、あの時は必死だったから触れるの怖いなんて考えてる暇が無かったんだろうな。今はいつも通り、アムールさんが抱っこしてる状態です。


「そう言えば……イエイヌ、今向かってるろーぷうぇい? 乗り場ってとこはどんなとこなんスか? なんか知ってるみたいだったッスけど」

「あぁ、はい。そのままロープウェイって言う乗り物がある所で、自分で見た事は無いんですけど高山地方の山の上に向かう為の乗り物で、乗って眺める景色が凄く綺麗だって聞いた事がありますね」

「乗り物……今のこのバイクのような物なのかい?」


 ではなく、表現するなら……ワイヤーに吊るされた小屋、って感じかなぁ? って言ったらビーバーさんとツンさんから、それって大丈夫なのかと聞かれた。いや、これは私の中に良い表現が出来る言葉が無いのが悪いんだけど、それ以上の表現の仕方が無いんだよねぇ……実物を見れば少しは変わるかもだけど。


「そういやろーぷうぇいの話してる時にガードがなんか変な事言ってたよね? 厄介なにんしょー? だっけ? あれって大丈夫なの?」

「あー……それには心当たりがあるんです。で、多分ですけど……」

「うんうん」

「どうにもならないです」

「うん……うぇぇ!? そんなはっきりと!?」


 パークには幾つか、危険だったり扱いが難しくて職員でも操作を制限されてる装置や施設があるって聞いた事がある。そして、それ等にはある特殊な認証装置が付けられているんだって。それが、生体認証装置。指紋と声紋、それと網膜を読み取る事で登録された人を認証して操作を可能にする機械……だったかな? アランさんが詳しく教えてくれたからなんとか覚えてたけど、だからこそ断言出来る。その装置がまだ機能していたら、どうやっても私にはどうにも出来ないって。


「そうなると確か、別のところにペダル式ロープウェイって言うのがあった筈なんで、それを探して山の上を目指す事になりますね」

「ふむ、そんなに山の上に行く方法とはあったものなのだね。飛べるフレンズに運んでもらうか、自力で山を登るかしかないと思っていたよ」


 あ、フレンズさんの登山方法はそうだったんだね。どうやら親切な鳥のフレンズさんが居て、山の上に行きたいってフレンズさんを運んでくれてるんだって。あちこちに行って運んでるみたいだから、待ったり探したりしないとならないらしいけどね。

 でもそういう事ならペダル式だけでも使えるようにしておいていいかもしれないね。まぁ、自転車みたいに漕いで動かす物だから相当に大変らしいけどね……。

 まぁ、今はロープウェイは二の次だね。ロープウェイ乗り場周辺にも施設や売店があった筈だし、そっちにコクチョウさんが居るかの確認が今の最優先事項だし。


「にしても、イエイヌがどうにもならないって言うのって、ちょっと意外。今までなんだかんだ出来なかった事って無いよね?」

「……言われてみれば確かに。元々教えて貰ってたから出来ただけなんですけど」


 考えてみた事無かったけど確かにそうだ、私は今まで操作した物や扱った物の事を教えて貰ってた。それについて疑問に思った事は無かったけど、思えばなんで皆は私に機械の使い方や難しい事の説明まで丁寧に教えてくれてたんだろう? ……音声データで私が切り札って言われてから引っ掛かってる疑問なんだよね。切り札なんて言われるような事、私は何も出来ない。なのにアランさんは私の事を切り札って呼んでた。それって一体どういう事なんだろ……?


「考えてても仕方ない、か……」

「ん? イエイヌ何か言った?」

「あぁいや、独り言なんで気にしないで下さい」


 一つ何か分かれば、また二つくらい分からない事が出て来る。終わりは、あるのかなぁ……それでも、今は進むしかないか。よし、気持ちを切り替えて頑張ろっと。

 おっと、前方にセルリアンだ。形状は……あぁ、サヤエンドウみたいな奴だ。あ、こっちに気付いた。やるしかないね。


「っとぉ、セルリアンか。いっちょ行きますか」

「あれくらいなら……皆、しっかり掴まってて下さいね」

「おぉ!? イエイヌやるんスか!?」


 相手は一匹だし、石の位置も今まで何度か相手にして把握してるから大丈夫、だと思う。石の位置はずばり、サヤエンドウで言うヘタの先。まぁ、このセルリアンの場合はヘタが無いから普通に体の先なんだけどね。

 バイクさんが加速して、一気に距離を詰める。そのまま狙い澄まして石のある位置に鉄パイプを振り抜くと……よし、撃破。これくらいなら、私も何とか出来るようになったよ。バイクさんの協力が必要って条件はあるけどね。


「お、おっどろいたぁ……あんまり強くない奴ではあるけど、こんなあっさり倒せるとはね」

「この速さは、ちょっとやそっとじゃ真似出来そうにないね……」

「それに、イエイヌが何も言わないのにバイクが勝手に動いてたッスよね? どうやったんスか?」


 あれ? そう言えばそうだ。なんだろう? こう、バイクさんがどうしてくれるって言うのが頭に浮かんできたと言うかなんと言うか? 私がどうすればバイクさんがこうしてくれるって言うのが言わなくても分かるというか……。そうだ、あの象型セルリアンをやっつけた時の感覚だ。それがまだ続いてる?


「言わなくてもバイクが動く……イエイヌ、そんな事出来るようになったの?」

「そー、みたいです。なんでかは分からないですけど」

「ふぅむ……セルリアンと共に居る、というか触れ続けるなんて事がそもそも今まで誰もした事が無いだろうし、イエイヌ君かバイクに何かしらの変化が起こったとしても不思議はないのかもしれないが……」

「イエイヌぅ……体がなんか変とか、何処か痛いとかは無いんスか?」


 あ、見えないけどこれ凄い皆から心配されてるね。とは言え、別に体の調子は悪くないんだよね。慣れた所為か、バイクさんにサンドスターを分けても体がそんなに怠くならなくなったし、多分悪い事は無いんじゃないかな?


「それはつまり、イエイヌ君の体になんと言うか……サンドスターをスムーズに出し入れする力、のような物が出来たって事なんだろうか?」

「いやそんな、イエイヌはサンドスターのポーチじゃないんだから」

「ふむ、これは私の仮説でしかないんだがね? 確かイエイヌ君は野生開放が出来ないと言っていたね?」

「はい、それは間違い無く」

「うむ。でだ、我々フレンズは皆、野生開放というサンドスターを消費して力に変える能力がある。が、イエイヌ君にはそれが無かった……つまり、サンドスターを用いた能力が無かった。そこにセルリアンにとは言え、サンドスターを譲渡するという予期せぬ事態が起こった。能力の無かった体がその事態に対応する為に新しい力を作り出した、という可能性は無いかと思ったんだが……まぁ、これは聞いて分かる物でもないかな?」


 ふむ、ツンさんの説明通りの事が起こっていたとしたら、野生開放で使われないサンドスターを特定の物に譲渡する……サンドスター放出、とでも言うのかな? そんな力が私に備わったのかもって事だよね。自覚としてそう言うのは無いけど、その力は使い道あるのかなぁ? そりゃあ私はバイクさんにサンドスターを分けるって事があるから使い道はあるんだろうけど、野生開放の代わりにしてはちょっと……な力な気がする。


「今のはあくまで私が所見で推察してみただけだから、事実は分からないがね」

「そりゃそうか。ツンがあんまりそれっぽく言うからそうかもとかちょっと思っちゃったよ」

「けど、野生開放出来ない代わりにッスか……なんか自然に出来てたから、出来ない時はどうなるかなんて考えた事無かったッスね」

「私も、出来ないって言われてからそれなら代わりに何か出来るか、なんて考えた事無かったです。サンドスターで出来る事、か」


 ツンさんは私が思いもしなかった考えを聞かせてくれるなぁ。うん、何か考えたりするのに私一人で考えるのよりずっと助かる。これからも何か迷ったり困ったりしたら相談してみようかな。

 それからは雑談なんかをしながら、セルリアンと遭遇したら単体なら私だけで、複数なら皆で対処しながら進んでます。多少セルリアンと戦うのに慣れてきたからか、割とセルリアンの形状を冷静に確認出来るようになってきたかな。多いのは虫の形状に似たセルリアンかな? 次点で多いのが、ボルトとかナットとか、機械型ではないけど無機物の形状をしたセルリアンかな。面白いのは、工事現場なんかに置いてあるカラーコーンがくっついたような形状のセルリアンも居るんだよね。そう言うのって、多分シンプルに形状だけをコピーしたって事なのかな? そう考えると、あのバルーンの姿をしたセルリアンは機械型じゃなくてこっちに近いセルリアンだったのかもだね。


「注視してみると、セルリアン毎に形状も行動もかなり違うものだね」

「確かにね。イエイヌに逢う前なんかそんなの気にしないで、相手が動き出す前に石をズドンが殆どだったもんなー」

「ハンターでも、セルリアンを見て気にするのは石の位置だけ、後の事はどうせ倒しちゃうんだから見る必要無し! って言われてるッス。時間を掛けるだけ、危なくなるかもしれないッスし」

「うーん、けど相手が何をしてくるか分からないのに近付いてやっつけるって危なくないですか? 予想外の動きをされるかもしれないですし」

「それも予測せずに、倒さねばならないと思う意識が先行してしまっていた。と、今は考えられるね。恐らくその原因は」

「食べられたって経験だねぇ。記憶は持って行くのにそういう面倒な気持ちは残してくんだから、改めて厄介だねあんた達セルリアンって」


 申し訳無さそうにバイクさんの排気口が鳴るのが聞こえる。潜在的な恐怖心、か。それも私には分からないんだよね。いや、セルリアンに食べられた事無いから当たり前なんだけどさ、それもどういう感覚なんだろ? 私の場合不気味で危なそうだから近寄らないようにしようって言うのがセルリアンを始めてみた時の感想なんだよね。皆に聞いてみようか。


「皆さん、セルリアンを見た時に感じる怖い感じってどんな感じなんですか? 私は不気味だなぁって感じなんですけど」

「んー、あたしは言葉にすると……負けたら取り返しのつかない事になるって感じって言えばいいのかなぁ? 今は殆ど感じないけど、フレンズなり立ての時はそれで焦っちゃったり怖がったりってしてたかも」

「おや、そうなのかい? 私はそうだな……茫然としてしまう、と言えばいいのかな? セルリアンと相対すると、大切だった物を失ってしまったと感じるというか……うぅむ、改めて言おうとすると難しいね」

「え、皆はそうなんスか? あたしはただただ怖いッス……ジリジリ近付かれたりすると震えて動けなくなっちゃうって言うッスか? とにかくそんな感じッスね。ゆっくり近付かれるくらいなら、いきなりガバーっと来られた方が動けるッス!」


 あれ、なんだか予想外に多種多様だね。個人差があるのは予想してなかったなぁ……何が原因なんだろ? うーん……食べられた時の状況、とか? あ、それはありそうかも。食べられたって事実は同じでも、同じ食べられ方をしたとは言えないもんね。となると、皆が感じてるセルリアンへの恐怖心って、断片的に残った食べられた時の記憶がトラウマとして心の隅に残った物って解釈で良さそうかな? そうなると、それを帳消しにするのはかなり難しいだろうなぁ……アムールさんもツンさんも大部分は克服してるみたいだけど。

 

「しかし、イエイヌ君は変わっている……と言うより、見所や思考する点が面白いね。セルリアンに対しての感じ方の違いなんて、今までこうして深く考えた事なんて無かったよ」

「ホントそれだよねー。改めて考えるとなんでだろって思う事、イエイヌに聞かれたりして結構あるもん」

「そもそもあたしはあんまり一つの事を考えるってした事無かったッス……セルリアンをやっつける時も、皆で突撃すればなんとかなるくらいしか思った事無いッス」

「私も、物珍しい物を見聞するにはするが、したら満足してしまっていたね。それがどういう物なのかというのは、あまり深く考えた事は無かったよ」

「考えるって、実は凄い大変な事だってイエイヌ見てて思い知ったからねぇ……」


 私の場合少し難しく考え過ぎてる事もあるとは思うけどね。まぁ、私が今一番役に立つだろう事は頭脳労働だろうし、考えたり分かり易く伝えられるようにするのはこれからも頑張ろう。

 さて、山も近付いて来てそろそろロープウェイ乗り場も見えて来る頃かな? こういう時いつも目的地を真っ先に見つけてくれてたのはタカさんだったから、捜索の点でタカさんが居ないのって厄介だね……せめて双眼鏡だけでも借りてくれば良かったかなぁ?


「しっかし……改めて見ると高いねぇ。鳥のフレンズに上まで連れて行ってもらってるのも納得だわ」

「まぁ、これを自力で登ってしまう強靭なフレンズも居るんだがね。そうだ、この山について面白い逸話があるんだが、聞いてみるかい?」

「いつわ? どんな話なんスか?」

「うむ。この山を脚で、腕で、まるで山肌ギリギリを飛ぶように凄い速さで登っていくフレンズが一度見掛けられたそうだよ。とはいえ、そんな事が出来るフレンズがこの辺りに居ないし、その一度以外現れないから幻の強力なフレンズ、守護フレンズだったのではないかと言われているね」

「守護フレンズ……あぁ! 普通の動物じゃなくて、神様って呼ばれてる動物がフレンズになったのだって言う話、聞いた事あるッス!」

「へぇー、そんなフレンズさんが……」

「う、うーん? た、多分……違うんじゃ、ないかなぁー?」


 ん? なんかアムールさんの歯切れが悪いような? あ、もしかして?


「あの、アムールさん? ひょっとして……ひょっとしたりします?」

「ん!? あーその……うん、そうなんだよねー。どんくらいの速さで登れるかなーと思って、ね?」

「……まさか、アムールトラ君が?」

「うぇぇ!? アムール姉さんが守護フレンズだったんスかぁ!?」

「いやビーバーさん、そうではなくてですね?」


 アムールさんの自白により、ツンさんの逸話に出てくる山肌を飛ぶフレンズは全力力試し中のアムールさんで確定しました。止まらず全力で登り続ける様子から、何のフレンズか判別出来なくて、更にアムールさんはその後旅を続けてたからそれ以降現れなかったって事みたいだね。アムールさん、この調子だと色んな所で逸話とか伝説になってそうな気がするね……。なっててもおかしくない力がアムールさんにはある、あっちゃうもんなぁ。

 どうやらツンさんの興味センサーにアムールさんも触れちゃったらしく、どんな所に行ったとか、どんな事をしたかなんかの聴取が始まってる。アムールさんの困惑顔が、見なくても想像出来ちゃうね。

 あ、見えて来た、ロープウェイ乗り場……だと思う。知ってても来た事無いのが私の難点だね。けど、山の上に伸びていくワイヤーとそれを支える支柱が続いてるのが私の記憶と一致する。それだけは確定かな。


「おぉ、なんかサービススペースみたいに建物が並んでるとこがある。イエイヌ、あそこが?」

「そうだと思います。ロープウェイ乗り場ですね」

「ほぉ、ここの名前がロープウェイ乗り場だったんだね。ここのフレンズの休み場になっているのは知ってたが、まさか山の上に向かう乗り物がある場所だったとは」

「そもそも建物って物を知ったのが最近だから仕方ないッスね。今まではどれも屋根があるとこッスからねぇ」


 そんな認識だよね。まぁ、それのお陰で大きくは荒らされてないからラッキービーストさん達のメンテでほぼ完全な状況にメンテナンスされてるんだと思うけどね。

 よし、とにかくまずはコクチョウさんを探そう。多分危険は無いだろうけど、何かあったら大きな声を出して皆を呼ぶ事にして、分かれて探す事にしたよ。ここ、ざっと見た感じお土産屋さんや食事が出来るお店しか無いみたいだから危ない物は無いと思うけどね。

 それにしても……なんだろう? これまでのサービススペースとは違って外にフレンズさんが居ない。まぁ、外に目立った設備が無いから居ないだけかもしれないけど、こんなに気配が無いものかな? 違和感は感じるけど、調べてみるだけ調べてみちゃおうか。

 ……うーん、調べてみた建物の設備や備品、食材には異常が無さそうかな。けど、やっぱりフレンズさんが居ない。おかしいな、ツンさんの情報ではここもフレンズさんの休み場になってるんだよね? それなのにフレンズさんが居ない……何かあったのかな?

 あ、お店から出たらアムールさんが居た。腕を組んで首を傾げてる辺り、どうやら私と同じ結果かな?


「ん? あぁイエイヌ。どうだった?」

「ダメですね、お店の物はどれも使えそうって言うのは分かりましたけど、フレンズさんが誰も居ないです」

「そっちもかー……こっちもフレンズを見掛けなかったよ。なんか気味悪いよね」


 確かに……それに困ったなぁ。誰も居ないとなると、話を聞けるフレンズさんも居ないって事。情報が集められないとどうにも出来ないんだよね。ツンさんとビーバーさんが誰か見つけてくれてるといいんだけどな。

 あ、ツンさんがお土産屋さんから出て来た。声を掛けてみたけど……やっぱりダメだったみたいだね。


「おかしい、サービススペース程ではないにしろ、ここもそこそこにフレンズが居た筈なんだ。それが、居た形跡も無く居なくなっている。どういう事なんだ?」

「少なくとも、ここで何かが襲われたって事は無いと思います。施設が壊されたり荒らされたような形跡もありませんでしたから」

「このロープウェイ乗り場の傍でも同じかな。何かが暴れたような様子は無かったと思うよ」

「……君達、この短時間でそこまで調べていたのかい?」


 まぁ、ざっくりですけどって言ったら、ツンさんが驚いてた。状況把握は早ければ早い程次の行動に移り易くなるからね。手短に済ませられるなら済ませちゃった方がいいでしょ。


「ただね、妙な跡があったんだよね。イエイヌなら分かるかもと思って見て貰うつもりだったんだけど」

「妙な跡、ですか?」

「うん、こっちこっち」


 アムールさんに連れられて行った先は……特に何も無い開けた所だった。けど、見せて貰ったのは考え得る限りでは、最悪の部類に入るものだったね。

 地面に残された、等間隔の凹み。昔飼育員さんと見た工事現場に残されていた物と一致する。これは、キャタピラを備えた何かが走り去った跡だ。

 咄嗟にデバイスでガードさんに連絡を取った。確認したい事はモニターで確認出来たパワーショベル型がまだそこに居るか。もし山を下りていたとしたら、どんな被害が出るか分からない。けど、もし下りていなかったとしたら、それはそれで問題なんだけどね。


『エ、パワーショベル型? ウン、動カズニカフェ付近ニ陣取ッタママダヨ?』

「……分かりました。その上で確認してもらいたい事があるんです。出来るかは分かりませんけど」

『ドウヤラ、緊急事態ミタイダネ?』

「はい……パワーショベル型以外に重機タイプか……戦車型のセルリアンが存在する可能性があります」


 キャタピラを持つ機械で私が思いつくのがそれだけで、本当はもっと違う物があるかもしれない。それでも、私は私が持ちうる知識の中から答えを見つけるしかない。それが、どんなに最悪の事態だとしても。

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けものフレンズ True Explorer ~高山地方に眠るモノ~ フタキバ @Futakiba

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