コスズメ(蛾)はなぜ死んだか ~ウジの生き延び方~

 またしてもです。先日ここに書いた「コスズメ(蛾)はなぜ死んだか」という話の中では、幼虫の姿のまま蛹にならずに死んでしまいましたが、今回は蛹になってから死んでしまいました……アーー!悔しい!

 この子は前回の飼育の時、餌ようにとってきた葉っぱに卵でついてきたので生まれたてから見て来た子です。なおさらくやしい。


 しかし予兆はあったのです。

 かなりでかでかしてきたある日。超~不安になる黒点をお尻に見つけました。体の片側にしかありません。模様だったらたいがい左右対称についているんですが……

 いつからあったんだか、なにかゴミであってくれ、と祈りながらそっと葉や指先でつっ突いてみますが、なにをどうしても「シミ」でした。

 数年前にも飼った際、本当にあと一歩で蛹というときに体に黒点をつけた子が見事ハエに変わっていたなあ。前回書いた子も幼虫時代によく見ておけば体のどこかに黒点を持っていたかもしれません。



……終わった……やっぱ飼育するなら蓋つきのものにしとくんだった。



 数日後、葉っぱをつづって可愛らしいお家を作り(土が浅かったからかな……)その中でコロンと蛹になりました。家の隙間から覗きます。

 さて、ここからいつ何がどう出てくるか。



 最初の2日こそいい色をしていましたが、3~4日くらいで全体的に均一な薄めの茶色になり、その翌日……黒い……ヤな方に黒い……。

 お家を壊させてもらい、意を決して突きます。その反応は



「べこっ」



 ……完全に終わった……中身はない……(涙)

 わかっちゃいるけどギギギ……と悔しくなり、割りばしで執拗につつきます。すると何やら怪しい白い影が中で動きました。左右に動いているのがみえます。


  蛹をとり出しケースの端に避けておきます。「中の人」の正体は予測ついてる。でも一応確認したい。



 さらに翌朝。

 ケースの中を見ると「中の人」=寄生バエのウジが堂々土の上を歩いています。伸びに伸びると15㎜くらいありそうなそのでかさ。こ、コノヤローー!! 時間を置いて覗いたら結果2匹いたようです。


 割りばしでつまみ上げます。蝶や蛾の幼虫、甲虫の幼虫ですら短ーいけど一応「脚」はあるのにこいつには見当たりません。うにうに動くだけ。うじうじしたやつ、というのはここからきているんでしょう(あ、あれ他人事じゃないぞ)。

 そして顔の先端がとがって見える……なんか牙みたいに突き出しているような感じ? これできっとコスズメの体組織やら、蛹のカラやら破って出てきたんでしょう。うじうじしてるわりには強靭なあご持ってるじゃないか……

 トレードマークのお尻の2つの点。これは呼吸器。イモムシの体内やどろどろの蛹の中(うへぇ)でもここを外に出せば呼吸ができます。

 あれ、でも孵化してすぐってどうやって呼吸しているんだろう? イモムシの体の中に入り込んじゃったら呼吸できないよ?


 ネットを色々見て回ったら、あるヤドリバエの寄生に関する研究成果報告書がネットにありました。

 自分の気門と宿主の気官または体外に接続して呼吸するための呼吸管をつくっちゃうんだとか。このハエがどうやったかはわかりませんが、もう凄い世界。生きるためならここまで進化するのね。


 他にも宿主の免疫から守るためのシステムが記述されていました。バリアのような構造物を作って自分を守るなんて、難しいのと想像力が足りなくてちょっと理解が追い付いてない。でも読み返してぼんやり分かってくるとエイリアンもびっくり、なんだこいつ実はすごい能力だなと見なおしました。でも好きにはなれないなぁ。



ご興味あるかたがいたらおススメ。


科学研究費助成事業データベース様より

解剖生理学と行動学を併用した害虫消化管内に寄生するヤドリバエの環境適応機構の解明

26450473 研究成果報告書 - KAKEN

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