あるく8の字

 ある日帰宅した玄関で、ふと壁にくっつく黒っぽいものが目に入りました。


 な、なんだこれ?


 数字の「8」といえばいいのか、ひょうたん型と言えばいいのか、とにかくちょっとくびれた形のものがくっついています。大きさは1㎝ちょっと超えるくらいでしょうか。

 しかも……



 こ、こいつ……動くぞ!



 もぞぞとちょっとぎこちない動きで進み始めました。8の字の先端から小さな頭が出ていて、それがこの8の字をしょっているようです。

 虫だ! 誰だ!



 こうなると興味爆発。ちょっと突つくとぽろっと掌に落ちました。自室でよーーく見てみます。



 8の字のものは家のようですが、出入口が特に定まっていないらしくあっちこっちから顔を出します。

 家というよりおふとんに入って歩いてる、みたいな。中で方向転換自由自在のようです。

 

 虫は体の一部しか外に出しません。こげ茶と白の縞があり、一見レッサーパンダやラスカルのようなシマシマしっぽが8の字からでているように見えます。

 かわいそうなのでおふとんをはがしたり、全部引き出すことはしませんでした。 



 体の外に出している部分は、どの虫にもある6本の脚の部分でしょう。歩行はこの足のみで(だからぎこちなかったのかな)、幼虫でいう腹脚はおふとんが置いていかれることの無いよう、しっかりホールドする役目をしているんでしょうか。

 なんか危険を感じたらぴゅっと中に引っ込みます。羨ましい……



 次に「こいつは誰なのか」。こんな特徴的な虫、簡単に検索で見つかりました。

「マダラマルハヒロズコガ」


 成虫はその名の通り「斑」模様があり「丸」っこい「羽(翅)」を持っています。ヒロズは「広頭」という漢字が当てられているのですが、頭がひろい?? うーん写真を見ると何となく頭が平たい気もしなくはない……。「小」さい「蛾」で、「マダラマルハヒロズコガ」

 これの幼虫だったようです。



 毎回覚えられません。いつもマダラが先か、マルハが先か分からなくなり、その度調べています。面倒くさいから「MMHK」と呼んでいます。長いし。

 じみーーーーーーな蛾です。部屋の電器のカサに入り込んでるタイプだこれ。


 

 ツヅミミノムシなんて呼び名もあるみたいです。なるほど、ツヅミか!

 くびれたところだけがつながっていて、材質はたぶん木の皮とか落ち葉とかなのかなあ。ハチの巣材に似たようなところがあるんでしょうね。成長につれて自分で大きくするので、年輪みたいな模様が現れることもあります。

 蛹になるのももちろんこの中。成虫になって晴れてお外へ出るのですね。



 庭の柿の木の根元の、落ち葉も積もるところにいっぱいいました。枝が折れて落ちたんでしょう、ぐずぐずになった朽ち木もあります。

 この子は木の皮とか朽ち木を食べるというので、なるほどここはいい環境。

 そのほか「蟻」も食べるそう。蛾の幼虫なのに肉食とはまた珍しい。そういえば柿の木の根元に蟻、いっぱいいたな……。

 クヌギの樹液の出る所にもいたことがあります。そこに来る蟻を狙ってたのか、木の皮を食べていたのか、樹液目当てだったのか謎です。虫採りに行ったらみつけて見てください。

 

 

 日の当たりづらい木の根元で蟻がいっぱいる環境だったら、もしかしたらこんな小さな8の字が動いているかもしれませんよ。

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