第8話
「別に、何ともないさ」
「じゃあ、ほっといてくださいよ。ていうか、人の事あーだこーだ言いますけど、あなたはどうなんですか?」
彼は少しの間口を噤んでから
「僕?僕はね、Nだよ」
そう言った。
聞き間違いじゃないよね?
「N?今ランクNって言ったの?」
「そうだよ、僕はN1」
ありえない…。
N1がここにいるわけが無い。
ここは下層で、かつその中でも高ランクの人にとってはかなり治安が悪い。
下層の低ランクの人はランクの高い人達を嫌っている。もちろん、高ランクの人も低ランクの人を嫌っているし、差別しているようなものだけど。
ランクNというだけで、下手を打てば殺されたりする可能性もあるのだ。
「本当に何故こんな所にいるの?」
この区域は確かに入り組んでいるけど、方向くらいは分かるはずだ。
何故なら、上層部には約200階建ての建物である空の塔がある。空の塔は様々な分野の研究を行う為、最先端の技術を持つ人達が多く勤務している施設である。
もちろん研究者は全員ランクN以上である。
例外は稀にその分野に秀でた、C1がいる程度で全体の1%にも満たない。
空の塔を道標にしたら、かなり危険な下層に入り込むことは確実にないと言えるだろう。
「ここらら辺の人達あんたみたいな高ランクの人間毛嫌いしてるし、不夜街がある訳じゃないじゃん」
不夜街とは昔から残っていた言葉である不夜とついた街で、夜もずっと店等の光で明るい街。
つまり夜の店や賭場が集まる区域である。
下層と上層の間に位置するため、高ランクの人間も低ランクの人間も多くいる街だ。
もちろん、そういう所で働いているのは低ランクの人間だけだけど、トップを覗いて。
KとNとCの輪舞曲 瑙霧 @yurihayate
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