迷子はゆくよ、どこまでも。

@mash35

第1話

結は昔からフラフラとすぐ迷子になっては、周りの大人たちを慌てさせているような子供だった。


迷子センターで呼び出しをかけられたことは数しれず。


探しても探してもどこにもいない。


しかし、いつもしばらくすると何事も無かったようにふらっと戻ってくるのだ。


その度、汗のかいた父と泣きそうな母に叱られ、もう勝手にどこかに行かないと約束させられていた。


心配そうに自分を見つめる両親の目が今でも記憶に焼き付いている。


安心させたい一心で大丈夫だよ、気をつける、と何度も頷いた。


血の繋がっていないこの優しい両親のことが大好きで、自分のことであまり心労をかけたくはなかった。


___でも結がどれだけ気をつけても、迷子になるのはいつも突然だった。




地面にしっかり足をつけているはずなのに、フワリと体が落ちる感覚がして、思わず立ち止まった。


___きた。いつものアレだ。


「もー!今からドーナッツ食べるってとこだったのに」


タイミングの悪さに思わず悪態が出る。


持っているビニール袋にはついさっき手に入れた新作のコンビニスイーツが待っているというのに。


どこに連れていかれるのかは知らないが、どちらにせよしばらくスイーツを食べてのんびりしている時間などないだろう。


ご褒美をお預けされてため息をついた結にどんまい、というように街灯が点滅した。


「せめて美味しいものでもいっぱいありますように」


薄暗い道に疎らながらいた通行人も今はいない。


お腹が浮き上がるような気持ち悪い感覚を気を取られている間に視界は霧に覆われていた。




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