魔狩人が保護した家出少女。しかし少女はお家に帰りたくない

@hompom

第1話 プロローグ

「待って〜その船待って〜!」




少女が走りながら船に乗り込む。

歳は10歳だろうか?

肩にかかる程の紅い髪をなびかせて。



白いワンピースの裾を両手で掴み

出航したての船にピョンと乗り込んだ



ズザァァ


「良し!間に合った〜!」



「……お嬢ちゃん。船代持っているのかい?」

船員が当たり前の事を聞く

世の中何をするにも金がかかる



「お金なんてないよ?島の向こうまで

ついでに乗せていってよ?」






「お嬢ちゃん……今すぐ船から飛び降りるか

船代の為に売られるか……どっちが良い?」




少女は唇に手を当て考える

「ん〜。あたし帰りたくないからなぁ〜。

良し!売ろう!何を売ればいいの?」






その言葉に船員は口元を歪に釣り上げる

「……大陸に着くまでゆっくりしていな。」






「ありがとう!飲み物ある?喉渇いちゃった」

何も知らない少女は船内へと入り込む。




船で島と大陸を渡す船員は

少女の事を知らなかった。


小さな島とはいえ少女を知らぬ人などいなかった。

何故なら少女は…………



…………



………………



「そろそろ着くぞ。

取り敢えず逃げられないよう……」




手に鉄の錠を持った船員

その部屋の惨状を見た男が固まる






「…………」ゴク ゴク ゴク


「お嬢ちゃん……何をしている?」



グビ グビ クビ


「…………」少女は答えない。ただ飲んでいる



「テメェ……これじゃ赤字じゃねぇか!?」

「だってゴンちゃんが飲みたいって言うから」




部屋には少女と船員と少女二人しかいない。

少女の言う〈ゴンちゃん〉など存在しない。




「……俺が言うのもおかしいが体は平気か?」

男は少女を心配する。

これから売られるであろう少女を




少女はキョトンとした目で

「なんで?あたしは平気!元気!!」

ゴクゴクゴク 最後の1本を飲み干す




船員は溜息を吐きながら

「ハァ〜。もういいや。最後の晩餐って事で……

ほら手出しな。」




少女の手に鉄の錠をつける。

「おぉ〜?手が後ろに回らない?」

少女は楽しそうに、くっつけられた両手を振り回す






…………

……………………




「……でだ。この娘を売りたいんだけど。


大した額にはならねぇだろ?」




大陸に着いた船員が、怪しげな男と話している

怪しげな男が少女の身体を舐め回すように見つめ




「これは……中々……5千ルドンでどうだ?」

船員の目が途端に輝く

「マジかよ!最高だぜあんた!!」








1ルドンは別の世界でいう50円程の価値

と言われている




「お嬢ちゃん!達者でな!

船での事は許してやるよ」


少女に手を振り、船員は町へと消えて行った。





「さぁ行こうか。お嬢ちゃんは今日の目玉だ」


「はぁ〜い!」


何も知らない少女は、縛られたまま両手を上げて

怪しい男に着いていく。


そう……何も知らないのだ。




…………


……………………





「お集まりの皆様。お待たせしました


只今より下位種族オークションを開催致します」




オオオォオォォォ


歓声が湧き上がる。


客は全て男。皆目が血走り。

極上の女を手に入れんと

手に汗と共に、大金を握り締める






一人の女性が連れてこられる。


服こそ着させられているが、

両手を縛られ。

首には輪をかけられ紐で繋がれていた。




目は輝きを失い、

人としての尊厳など有りはしない。

あるのは……これから自身に降りかかる絶望






下卑た男達は次々と女性に値をつける。

女性の権利を買うのだ。人としではなく……

自身の欲望を満たす道具として




…………


………………




「最後は……無銭乗船 並びに無銭飲食で

売られた哀れな娘。アサミと名乗る少女です」



ザワ……ザワ……と会場がざわめき立つ




苗字セカンドネームがない。

訳あって言えないのだろう……つまり親が犯罪者。

それは何をやっても許されるという

身勝手極まりない理論。






「こんにちは〜!」

現状を把握していない少女は縛られた両手で

無邪気に挨拶をしている。それが一層客の

興奮を掻き立てる。






この何も知らない少女に

世間を教え込ませてやりたい。

明るい少女が絶望に泣き叫ぶ所を見てみたい。




「……それでは五千ルドンからスタートです!」


「7千!」「9千!」「1万1千!」「1万5千!!」





あっという間に2万を超え、まだまだ上がる予感に

人売りの男は笑みを浮かべる。


「おぉ〜〜!もっともっと!!」


少女自身も嬉しそうに、その興奮を堪能している。

高ければ高いほど、少女に向けられる絶望は

大きくなるとも知らずに





   「100万!!」





 シン  と会場が静まり返る



「100万ルドンだ。他にいるのか?」



人売の男が大声で

「そちらのお客様!おめでとうございます!

是非ともこの少女を可愛がってあげて下さい!!」




安いローブを身に纏い。

およそこの場には似つかわしくない。

20歳前後の男性


男は壇上に上がり辺りを一瞥する





小さく笑い始め


「ククク……金はない。

お前達を《魔》と判断した。


魔狩人まかりうどの名の元に……

貴様達を……狩る」






島から飛び出した少女アサミと

魔狩人と名乗る男性






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